ウエンツ瑛士と甲斐翔真が“ハマる”に導く!「ウエンツ瑛士×甲斐翔真の妄想ミュージカル研究所」番組収録レポート&古田新太コメントも

ウエンツ瑛士と甲斐翔真がメインMCを務め、NHK-FMでオンエアされている「ウエンツ瑛士×甲斐翔真の妄想ミュージカル研究所」は、ミュージカルに関わる俳優や作り手の思いをさまざまな角度から掘り下げるトークバラエティ番組。2024年3月にスタートした同番組は、不定期放送から月に1度のレギュラー放送へと昇格し、2025年4月以降は曜日を変えての継続が決定した。

ステージナタリーでは、古田新太をゲストに迎えるVol.9(2月24日放送回)収録直後のウエンツ、甲斐にインタビュー。1年間走り続けた番組への思いを語った2人は、今後の番組の姿を“妄想”した。特集後半では、古田ゲスト回の番組収録レポートと収録後の古田のコメントを掲載している。

取材・文 / 大滝知里撮影 / 平岩享

ウエンツ瑛士×甲斐翔真インタビュー
左から甲斐翔真、ウエンツ瑛士。

左から甲斐翔真、ウエンツ瑛士。

実はミュージカルを“特別扱い”していない「妄想ミュージカル研究所」

──お二人がMCを務めるラジオ番組「ウエンツ瑛士×甲斐翔真の妄想ミュージカル研究所」(以下「妄想ミュー研」)が、スタートからまもなく1年を迎えます。番組を続けてきてどのような実感がありますか?

ウエンツ瑛士 普段、触れ合うことがないようなゲストとの交流や、自分が歌うことのない楽曲に挑戦することが多く、放送回数の割には自分の中で色濃く残っている番組です。

甲斐翔真 僕は初めてのラジオMCなのですが、だんだんと慣れてきたかなと。その一方で、出演してくださるゲストが豪華で、「本当に!?」と実は毎回思っています(笑)。ゲストの顔ぶれを見ると、聴いてくださっている皆さんのおかげで番組が育っていることを実感しますね。

──「妄想ミュー研」には生演奏でのミュージカルナンバーの歌唱や、教授と研究員の芝居仕立てでミュージカルの知識を深める「ミュージカル・ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」、トークコーナーなどがあり、リスナーを飽きさせない工夫で、ミュージカルの魅力をさまざまな角度から深掘りしていきます。MCとして番組のどのようなところに良さを感じていますか?

ウエンツ ミュージカルをテーマにしたラジオ番組、テレビ番組はたくさんありますが、実はこの番組ではミュージカルをそんなに特別扱いしていないんです。ミュージカルを作品や芝居の延長線上にあるものとして考えているところが、番組の色になっているのかなと。ミュージカルを苦手だと感じている人にも聴きやすいコンテンツだと思います。

ウエンツ瑛士

ウエンツ瑛士

甲斐 僕は「ファースト・ミュージカル」という、ゲストのミュージカルの原点を聞くコーナーがすごく好きで。僕も、ウエンツさんも、ゲストの方々も、今ミュージカルに関わる仕事をしている人でさえ、意外と最初からミュージカルを目指していたわけではないんですよね。何をきっかけにこの道を歩むようになったのかを身近な話として深掘りできるので、「自分にミュージカルなんてできるわけない」と思われている方がいたら、年齢問わず、1つの可能性として出会い方を知ってもらえる良い機会なんじゃないかなと思っています。

共演者の話を聞きたいウエンツ、“好き”を再確認した甲斐

──これまで、藤田俊太郎さん、海宝直人さん、田村芽実さん、マシュー・モリソンさん、濱田めぐみさん、高橋亜子さん、尾上松也さん、昆夏美さん、富貴晴美さん、大竹しのぶさんと、さまざまなゲストがエピソードを披露されましたが、ご自身の中での変化や、活動に還元できたことなどはありますか?

ウエンツ 僕は、テレビドラマやバラエティ番組などで共演する俳優さんがどんなことを考えているんだろう?と思うようになりました。ミュージカルの現場で出会わない人がミュージカルをどう思っているのか、番組に来てくれたらどんなルーツや音楽的趣向を語ってくれるだろうか、と。ミュージカルが、出ている人たちや作っている人たちだけのものではないということを番組を通して学んだからこそ、そう考えるようになったのかもしれません。今、テレビドラマの撮影で共演させてもらっている唐沢寿明さんは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」の初演を海外でご覧になられたそうなんです。過去にはミュージカルに出演されていたこともあって、俳優としてその道を通ってきた方が今何を思っているのか、僕はもう聞いちゃったんですけど(笑)、いろいろな方の“予想外のつながり”を番組で聞いていきたいですね。

甲斐 僕は、皆さんの話を聞きながら、自分はミュージカルが好きなんだ、ということを再確認しました。ゲストの方が語れば語るほど、「わかる!」とか「自分にもそういう意見がある」と共感して、自分の中での“大事にしたいこと”の確認作業ができるんです。それって、自分で思っているだけでは見えてこない、誰かの熱意に触れてこそ感じられる部分なんですよね。見られているという意識がないラジオだからこそ、心の言葉が出てくるんだと思います。

甲斐翔真

甲斐翔真

──甲斐さんは先ほど、MCに慣れてきたとおっしゃっていましたが、MCとしてのご自身の変化をどのようなところに感じますか?

甲斐 いえ、ほぼウエンツさんに助けていただいています。ウエンツさんの姿に学びながら、「ミュージカル・ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」に出てくる教授(ウエンツ)と研究員(甲斐)のような感覚で知識を得ている状態で。まだ半分、リスナーです(笑)。

ウエンツ でも、お互いの関係性にも慣れたよね。僕もどう進めたら良いか、どこまで話を引き出すべきか、決められた放送時間の中でのバランスを、1年間かけて一緒に試行錯誤できたと思っています。あと、毎回歌ってからトーク収録をするんですが、それが良いんです。一緒に歌うと、その方の人となりがわかるし、僕らはハモリを担当するので、どれだけ誠実に向き合ってくださっているかというのも感じられる。何より生演奏だから異常なくらい緊張するんです。そのヒリついた瞬間を共有してから話ができると、ゲストの方もリラックスできるんじゃないかなと。

甲斐 吊り橋効果で?(笑) でも確かに、初めましての方でも、いきなり一緒に壁を乗り越えた感じはありますよね。誰かが間違えたら録り直さなくちゃいけないし。初回の海宝さんがゲストのときなんてもう……(編集注:初回放送は歌唱パートに海宝、田村が登場。7曲が披露され、全体の放送時間は100分となった)。みんなが歌ったあと、ウエンツさんのパートが最後に出てくるんですよね。だからウエンツさんが1つでもミスをしたら、全部がパーに。

ウエンツ あれは別格に大変だった。指揮者もいたし、あそこまでやられちゃうと、舞台より緊張するよ。でも、一致団結して達成感が得られたし、歌にはそれくらい大きな力があるんだと思います。

左からウエンツ瑛士、甲斐翔真。
左からウエンツ瑛士、甲斐翔真。

左からウエンツ瑛士、甲斐翔真。

古田新太の歌収録を盗み見て、作戦を練る2人

──2月24日に放送されるVol.9では、古田新太さんをゲストに迎え、お二人は古田さんが主演されたミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」より「タイムワープ」を一緒に歌われました。収録を振り返っていかがでしたか?

ウエンツ 「ロッキー・ホラー・ショー」の曲の面白さを感じました。俳優にはそれぞれタイプがありますし、僕は出演しない限り、こういう曲は歌うことがないと思っていたので、“出会わない作品”としてこの機会をかみ締めるように歌の収録に臨んだら、めっちゃ楽しかった(笑)。古田さんの隣で歌えたのもうれしかったです。

甲斐 古田さんがソロで歌われた「スイート・トランスヴェスタイト」(ミュージカル「ロッキー・ホラー・ショー」より)もめちゃくちゃカッコよかったですよね。

──スタジオを望む副調整室で、古田さんの歌収録中にお二人でヒソヒソお話されていましたが、何を話していたんですか?

ウエンツ メインボーカルの古田さんが、どんな雰囲気で歌われるのかなと観ていたんです。古田さんが「スイート・トランスヴェスタイト」で最初のところを1オクターブ上で歌う可能性があったので、だったら僕らの「タイムワープ」のハモリも1オクターブ上でやろうと、翔真と話していて。あとは、シャウトする感じなのかな?とか。出演したことがない作品の曲をただ歌ってしまうと、ミュージカルでも何でもなくなってしまうので、なるべく最善を尽くしたいと思っています。

ウエンツ瑛士

ウエンツ瑛士

──「ミュージカル・ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」では、ミュージカル「コーラスライン」の振付家マイケル・ベネットのドラマが展開しました。

甲斐 このコーナーに重みが増してきたのでビビっています(笑)。いつも一発録りで、「あ、いただきましたー」で終わっていたんです。ぶっつけ本番の、良い意味で肩の力が抜けた収録で、でもきちんと歴史を学べる素晴らしいコーナーなんですが、今回から演出がより練られたものになって、NHK-FMっぽいラジオドラマ味が出てきました。Vol.10のゲスト候補のお名前を聞いて、なおのことビビっています。

ウエンツ でも、幸せですよ。声だけだとしても、こういった方々と一緒にお芝居ができたと思うと。前回ゲストの大竹しのぶさんがこのコーナーでジュディ・ガーランドを演じられたときもそうですが、この方のお芝居が面白いのは、こういう感覚を持っているからなんだ!という発見がいつもあります。

──トークコーナーでは、古田さんのミュージカルにまつわる背景などが語られました。印象的なエピソードはありましたか?

甲斐 お話を聞いて、やはり時代の先駆者だと思いました。戯曲や固い物語を崩して、リメイクしていたという話や、マンガ家やプロレスラー、ミュージシャンになりたかった古田さんが、学校の授業で行ったミュージカル鑑賞会で、「ミュージカル俳優になったら舞台上でいろいろな職業になれるから得だ」と思ったという幼少期からの発想力や感受性は、天才だと思いました。

ウエンツ 僕は、古田さんが俳優としてどういうことを考えているのか、というところをフックにミュージカルと絡められたらと思っていたんです。仕事に対して、古田さんの何も断らない姿勢が、逆にいろいろな人の知識や感性を古田さんにくっつけて、今の古田さんを作り上げている。それは技術があるからこそできることだし、お芝居も含め、今後の古田さんにより注目してしまうだろうなと思いました。

目指すはラジオ番組発、大スペクタクルなオーケストラコンサート(甲斐)

──2024年3月にスタートしてから、不定期放送が月1回のレギュラー放送になり、4月以降の継続も決まり……と、番組がステップアップしていく中で、次なる目標はどんなことですか?

甲斐 オーケストラコンサートをしたいです。ラジオの電波でリスナーの方とはつながっていますが、公開収録ができたら、また面白いことが起きるんじゃないかなと。一応ステージに立つ人間なので、ラジオで学んだことや培った感覚を引っ提げて、お客様の前で、大スペクタクルな曲をお届けしつつ、いつもの番組の雰囲気を出せたら、すごく楽しいんじゃないかなと思っています(笑)。

甲斐翔真

甲斐翔真

ウエンツ それは楽しそうだね。僕は今まで番組に来て、歌って、歴史を語ってくださったゲストの方たちが番組を大きくしてくれたと思うので、その方たちと、点だったものを結び付けられるようなことができたら良いなと思っています。番組で歌った、もう歌わないかもしれない曲に対して、どこか寂しい気持ちもありますし、もっとしっかり身体に入れて披露できる機会があったらなと。それには、ラジオもそうですが、自分の歌もグレードアップさせたい。翔真とも、自分たちの中に経験が蓄えられていったときに、いろいろやれそうだよねという話はしていたよね。

甲斐 はい、可能性は無限な感じがします。

双方向でつながるためのリスナーゲスト回、ぜひご準備を(ウエンツ)

──4月以降はオンエアが、毎月最終日曜日の22:40スタートに変わります。気持ちを新たに、リスナーに向けてアピールしたいことを教えてください。

ウエンツ 最近はリスナーの方のメッセージをまったく読んでいないんですよね……。俺は正直、ゲストがいない、リスナーのメッセージだけを読む回が一度あっても良いのかなと思うんですよ。双方向でつながりたいから、リスナーが番組に対して感じていることも知りたいんです。むしろリスナーがゲストになる回があっても良いと思っていて。ミュージカル好きだけが集まるのではなく、ミュージカルが大して好きではない方や、単純にお芝居が好きな方など、多岐にわたるジャンルで、リスナーをゲストにお呼びしたいんです。なので、そういう機会があったら、リスナーの皆さんにはすぐに手を挙げてほしい。ぜひともその準備だけはしておいてほしいです。

左からウエンツ瑛士、甲斐翔真。

左からウエンツ瑛士、甲斐翔真。

甲斐 照明さんとか音響さんも良いですね。

ウエンツ いやいや、照明さんだと「これはこういうふうにやると、こうなるんだよ」ってラジオでは一番、よくわからない説明になる。

甲斐 確かに(笑)。でもそれこそ、照明さんやスタッフさんの「ファースト・ミュージカル」の話は聞いてみたいな。そういう、ミュージカル好きが聴いても面白い、演出家さんや俳優さんの考えを今後も聞き出していきたいですね。「妄想ミュー研」は、ミュージカルの沼に一歩踏み出したくらいの方でも聴きやすい番組だと思うんです。でも、“少し興味がある”から“ハマる”までって、実はすごくふるいにかけられる。時間とお金を使ってもらうためには、確固たる価値が提供されなければいけないから。でも、僕らがハマっている、こんなに素敵な世界があるんだということを、番組でうまく伝えていけたら良いなと思います。“気になっている”という方たちに刺さる番組を、これからも作っていきたいです。