ステージナタリー Power Push - 上田誠×角田貴志が語る「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」

ゲームを愛するヨーロッパ企画の2人が紐解く“引っ張って離す”モンストの魅力

ただのゲームの映画化じゃない

──「モンスト」はゲーム、YouTube版アニメ、映画とメディアミックスしていることでも話題です。

角田 YouTube版のストーリーも重要なんですよね。それこそ黒木さんは、全部観てるので、「ずっと謎にされてたことが映画で明かされるんやで!」って言ってましたが、確かに「この映画で、いよいよ!」っていうのはありますよね。だからYouTube版までで紡いできたものを、映画でもきちんとやろうとしてるんだなっていうところはよくわかりました。それこそ派手なバトルと思ってたら、それだけにとどまらず、作品の核となる重要な世界観を掘り下げてやってるのが面白い。

「モンスターストライク THE MOVIE  はじまりの場所へ」より。

上田 普通にファンタジーとして観てうれしい場面というか。ドラゴンの翼に包まれて寝る場面とかもうれしいですよね。

──角田さんはミニドラマ「タクシードライバー祗園太郎」などでイラストレーターとしてもご活躍ですが、本作のビジュアル面ついてはどうご覧になりましたか?

角田 オープニングがすごく豪華だなと思いました。しかもゲームのモンストの世界観とはまた違う、きれいな感じだったのが面白かったですね。あとモンスターがかっこよく動くさまもよかったです。ゲームの中だとだいたい“玉”なんで(笑)。「実際はあんな等身が高くて、こんなふうに動くんや」っていう。

──大画面で観るのもまた格別、っていうのはありますよね。

角田 そうですね。それと自然描写が多い気がしました。草が茂る研究所のシーンとか。

「モンスターストライク THE MOVIE  はじまりの場所へ」より。

上田 そうでしたね。自然を描こうとしてるって話で言うと、舞台を作るときは白いキャンバスに世界を作る作業なんです。でも映像は、実際の風景がある中に、物語を足す感じなんですよ。それって“下地”が大事で、例えば「時をかける少女」の大林(宣彦監督)版は、尾道っていうなんか匂いがある場所でSFが行われる、そのズレが観ていてビリビリ来るところだと思うんです。この映画でも島根に行く途中で襲われるっていうのが、なんかいいじゃないですか。あと(劇中で主人公たちが口ずさむ歌)「日曜日よりの使者」とか、実在することがちゃんと出てくるので、現実感の解像度が高い作りになってる。なのにドラゴンも出てくる、ってところが個人的には好きですね。

角田 「日曜日よりの使者」は監督さんなのか脚本家さんなのか、「こういうの入れたい」っていう思いを感じましたね。

上田 ある種この歌を使うことで、損は損ですよね? 時代も限定されてしまうだろうし。

角田 主題歌はナオト・インティライミさんやのに、わざわざ選んでるんで、そこにメッセージがあるんだろうなと思います。あと劇中でおじさんが主人公たちを家に泊めてくれたじゃないですか? 今は問題になりそうだけど、そういうエピソードにメッセージを感じましたね。作り手の思いを感じ取れるのがいいなと。ただのゲームの映画化じゃないという心意気が伝わりました。

写メ撮ってたかもしれないね

──これから映画を観る方たちに、プレイヤー代表として角田さんから、ビギナー代表として上田さんから一言お願いします。

角田 YouTube版をちょっとでも観ておけば、絶対に何倍も楽しめるのでぜひ観てほしい。あとまだゲームをやってない人は、とりあえずやって“引っ張って離す”っていう感覚をちょっとでもつかんでもらえたら、最後のシーンをより楽しめるんじゃないかと思います。

「モンスターストライク THE MOVIE  はじまりの場所へ」より。

上田 少年たちが世界を救う姿を真っ向から描いた物語って、意外とないと思う。少年冒険ファンタジーを観たい方も、楽しめると思います。

角田 大人は自分の子供の頃を思い出したりするかもしれないですね。みんなで遊びに行って集まってゲームしたりとか。そうそう、駅でコンセントを借りるシーンがあるじゃないですか。あのシーン、印象的でした。

上田 あれは独特でしたね。

左から上田誠、角田貴志。

角田 確かに今の子ってそういう思い出ができるんかも知らんな。僕らにはないけど。今の子供たちが未来になって思い出す光景って、「駅でコンセント借りられたー」とか「スマホ充電できたー」ってなるのかもしれないですね。

上田 (みんなで鍋を食べるシーンでは)食べる前に、写メ撮ってたかもしれないし(笑)。

角田 今の子たちがそれを「懐かしいわ」って観てるのを、横から見るのも面白そうですね。

CONTENTS INDEX
特集トップ・作品紹介
ジャングルポケット 斉藤慎二
ヨーロッパ企画 上田誠&角田貴志
スタジオジブリ 鈴木敏夫
超特急 リョウガ&ユーキ
大久保篤
映画「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」2016年12月10日(土)公開
「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」

小学4年生の焔レンは、3人のチームメイトとともにゲーム「モンスト」の開発に協力していた。ある日レンたちは研究所の地下で、現実世界にいるはずのないドラゴンを目撃する。弱っているドラゴンをもとの世界に戻すため、“ゲート”を目指し旅に出ることになった4人。その目的地は、かつてレンの父が失踪した場所でもあった。身勝手なレンはチームの輪を乱し仲間と衝突するが、徐々に自分が1人で生きているわけではないことに気付いていく。

スタッフ

監督:江崎慎平
脚本:岸本卓
ストーリー構成:イシイジロウ、加藤陽一
キャラクターデザイン原案:岩元辰郎
モンスターデザイン原案:近藤雅之
キャラクターデザイン・総作画監督:金子志津枝
美術監督:加藤浩、坂上裕文
色彩設計:大西峰代
チーフCGIディレクター:福島涼太
CG演出:川原智弘
音響監督:明田川仁
音楽:MONACA
撮影監督:野村竜矢
編集:長谷川舞
制作:ライデンフィルム、ウルトラスーパーピクチャーズ、XFLAG PICTURES
製作:XFLAG
配給:ワーナー・ブラザース映画

キャスト

焔レン:坂本真綾(小学生時代)/ 小林裕介(中学生時代)
水澤葵:Lynn
神倶土春馬:村中知
若葉皆実:木村珠莉
影月明:河西健吾
石橋健太郎:北大路欣也
オルタナティブドラゴン:福島潤
アーサー:水樹奈々
ゲノム:山寺宏一
エポカ:水瀬いのり

主題歌

ナオト・インティライミ「夢のありか」

上田誠(ウエダマコト)
上田誠

1979年11月4日生まれ、京都府出身。ヨーロッパ企画の代表であり、すべての本公演の脚本・演出を担当。外部の舞台や、映画・ドラマの脚本、テレビやラジオの企画構成も手がける。2003年以降、OMS戯曲賞にて「冬のユリゲラー」「囲むフォーメーション」「平凡なウェーイ」「Windows5000」がそれぞれ最終候補に。2010年、構成と脚本で参加したテレビアニメ「四畳半神話大系」が、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞受賞した。

角田貴志(スミタタカシ)
角田貴志

1978年3月2日生まれ、大阪府出身。2004年、第16回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほとんどの本公演に出演。ラジオ番組の構成も務める。また、イラストやアートワークを得意とし、書籍の表紙絵や、DVDのジャケットイラストなども手がける。「タクシードライバー祗園太郎」「銀河銭湯パンタくん」では、脚本やキャラクターデザインも担当。「煙どろん」というペンネームで、マンガも発表している。


2016年12月15日更新