愛知県芸術劇場「ミニセレ2020」藤井明子×山本麦子プロデューサー対談|ジャンルを越境するからこそ豊かな作品が生まれる

愛知県芸術劇場のプロデューサー陣が“いま観てほしい作品”を選出し、小ホールで上演するミニシアターセレクション、通称「ミニセレ」の2020年度ラインナップ作品が、4月から年間を通じて上演される。2015年にスタートした「ミニセレ」では、これまで、演劇・ダンス・音楽といったジャンルを横断する作品の数々が発表されてきた。ステージナタリーでは、主として音楽公演を担当する藤井明子プロデューサー、主に演劇公演を担当する山本麦子プロデューサーの対談を実施。ジャンルの垣根を越えるからこそ生まれる作品の面白さ、そして2人の「ミニセレ」に込める思いを聞いた。

取材・文 / 川口聡

先鋭的な作品を紹介する“ジャンル横断型”セレクション

──「ミニセレ」は、さまざまなジャンルの作品が披露されるセレクションですが、どのようなビジョンのもとに立ち上げられた企画なのでしょう?

藤井明子 小ホールの劇場としての持ち味と、それまで開催してきた公演ラインナップを踏まえ、当時の丹羽康雄館長がプロデューサーと話し合って、「小ホールで上演するならば、ジャンルを越境した作品を紹介するセレクションにしよう」ということになり、2015年に「ミニセレ」をスタートさせました。以降毎年、複数のプロデューサーが関わり、2020年で6年目になります。

山本麦子 「ミニセレ」では、“ジャンル横断型”の作品をセレクトして、お客さんにもいろいろなものを観てもらいたいと思っています。小ホールはフルフラットになるブラックボックスで、100から200席ほどの客席を自由に組めますし、自在にどのようにも使えるので、その特徴をどうやって最大限生かすかをアーティストさんともよく話します。

藤井 小ホールは、うちの劇場の中で一番小さなホールですが、照明・音響だけでなく、プロジェクターの設備も整っています。小さいけれど劇場の持ち味を生かしながら、照明や音、美術、映像を作り込んでインパクトのある作品を上演できるんです。プロデューサーに限らず、技術スタッフも「面白そう」と積極的に作品に関わってくれるのも魅力ですね。

左から藤井明子、山本麦子。

──「ミニセレ」では、大衆的な作品よりも先鋭的な作品が数多く打ち出されています。ラインナップを組まれる際、特に大切にされていることはありますか?

藤井 演劇・ダンス・音楽と一定のジャンルに限らず、ほかのジャンルにも興味を持っていただけるように、いくつかの切り口を持ち、多様な要素が混ざった先駆的・実験的な作品を取り上げるようにしています。

山本 有名な劇団やダンサーでなくても、「『ミニセレ』に入ってるんだったら観てみようかな」と、お客さんに思ってもらえるようなラインナップを目指しています。ですので、ベテランの方々だけでなく、愛知ではまだあまり上演されたことがない若手アーティストの演目も取り入れているんです。

藤井 そうですね。これまでも、東京で話題になった作品を、愛知でいち早く紹介してきました。

勅使川原三郎さんは「ミニセレ」を体現されているような方

「白痴」より。左から佐東利穂子、勅使川原三郎。 ©︎Akihito Abe

──4月から勅使川原三郎さんが芸術監督に就任されるにあたり(参照:愛知県芸術劇場の芸術監督就任に勅使川原三郎「“やる価値のある仕事”を」)、「ミニセレ」で勅使川原さんの作品が上演されますね。

藤井 「芸術監督就任記念シリーズ」として3作、勅使川原さんのダンス作品をラインナップしています。私は勅使川原さんご自身が、ある意味「ミニセレ」をお一人で体現されているような方だと思っていて。踊ることはもちろんですが、振付、照明を手がけ、絵も描かれますし、チラシデザイン、舞台美術も作ってしまう。芸術監督に就任されて初めての演目が「ミニセレ」なので、勅使川原さんの持つさまざまな面に触れていただける、異なるアプローチの3作となりました。1本目はドストエフスキーの小説「白痴」を題材にした文学作品とのコラボ、2本目は笙の演奏家である宮田まゆみさんをゲストに迎えた雅楽とのコラボ、3本目は新作です。公演に併せて、勅使川原さんのドローイングをギャラリーで展示する関連企画も予定しています。