日本総狂宴ステージ「KEREN」バーヨーク・リー×HIDEBOH|温故知新で型破り “New One”なエンタテインメントの作り方

「Making Of 『KEREN』」エネルギッシュな稽古場を密着レポート

「KEREN」通し稽古より。

「KEREN」開幕まで1カ月を切った1月下旬、大阪にある大きなホールを貸し切った「KEREN」の稽古場は、通し稽古の前とあって、緊張感と熱気に満ちていた。“クールジャパン”という大きなテーマに挑み、作品を華やかに彩る若手中心のキャストには、オーディション組を含む30名以上の俳優、ダンサーが集結。バーヨーク・リーはキャストを選考する際、ダンススキルの高さよりも、それぞれの持つ個性、そして協調性を重視して採用を決めたと言う。

おもちゃ箱をひっくり返したように多様な要素をちりばめた本作の稽古は、各シーンごとに区分けして進められる。まず舞台上では、HIDEBOHと島口哲朗が共同制作した「剣舞とタップ」のリハーサルが実施された。刀を使った“和”の立ち回りと、軽やかな“洋”のタップダンスが一体となるこのパフォーマンス。中にはタップ未経験だった参加者もいるというが、約半年の特訓の成果が実を結び、稽古の段階で完成度の高いステージを繰り広げた。HIDEBOHと島口は演者に寄り添うように親身な指導を行い、所作を練り直していった。

続いて、バーヨークが振付を担当したセクションの1つ「元禄花見踊り~平成かぶき踊り」の稽古が進行する。着物姿の女性ダンサーによる日本舞踊から、曲調が一転しコンテンポラリーダンスへと変化するこの場面は、観客を「KEREN」の世界へといざなう重要なオープニングシーンとなる。

左から音楽の久米大作、脚本・演出の髙平哲郎、振付のバーヨーク・リー。

2018年に来日公演も行われた「コーラスライン」リバイバル版で演出・振付・再構成を担当し、ダンサー個々人のキャラクターを生かしてきたバーヨークは、「KEREN」のキャストにも1人ひとりに目を配る。直接稽古をつけるためにバーヨークがステージに上がり、ハツラツとした声で挨拶すると、場の雰囲気がパッと明るくなり、現場はさらに活気付いた。バーヨークは身振り手振りを交えながらアドバイスを送り、振付の細かなアクセントを修正していく。来日中の彼女から直接指導を受けられる機会とあって、ダンサーたちは彼女の一言一句を聞き漏らさないよう耳を傾けた。

シーンごとの稽古の間、演出席から静かに舞台上を見つめていたのは脚本・演出の髙平哲郎。髙平は、ステージングと演出助手を務める室町あかねと言葉を交わし、メモを取りながら作品全体の仕上がりをチェックしていた。

「KEREN」通し稽古より。

この日の通し稽古は、約1時間10分、ノンストップで行われた。自分の出番を待つ出演者は、舞台袖で動きの確認に余念がない。キャストたちは本番さながらの集中力で、気迫のこもったパフォーマンスを披露。セリフのないノンバーバルショーだからこそ表情豊かに、「KEREN」の世界をエネルギッシュに立ち上げていった。

通し稽古が終わると、全キャストが舞台に集められる。島口は「イメージは固まってきたので、さらに上を目指しましょう!」と激励し、HIDEBOHは「これから映像が入ると体感も変わってくると思います。柔軟に対応していきましょう」と助言する。そして髙平は「ロングラン公演になるので、くれぐれも身体を大事に、無理な動きはしないように」と労いの言葉を投げかけた。

「KEREN」では、祭や怪談、浪人や忍者の戦い、妖術合戦など、時代劇を意識した場面や、現代のサラリーマンが登場するコミカルなシーン、障子や影絵を使った妖艶なシーンと、情景が刻一刻と変化し、観客の意表を突く。色とりどりの絵巻物から飛び出したようなその“狂宴”を、ぜひ劇場で体感してみてはいかがだろうか?

「KEREN」通し稽古より。
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
オープニング公演「KEREN」
2019年2月25日(月)~ロングラン公演
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
スタッフ

脚本・演出:髙平哲郎

振付:バーヨーク・リー

タップ振付:HIDEBOH

殺陣:島口哲朗

音楽:仙波清彦、久米大作

ステージング・演出助手:室町あかね

ビデオ コンテンツ クリエイター:Moment Factory

宣伝美術:横尾忠則

主催:吉本興業株式会社

企画・制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー