舞台ハリポタ2年目突入!新キャスト大貫勇輔が語る「ハリー・ポッター」愛

2023年7月、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」が2年目に突入する。2年目の公演では、藤木直人と大貫勇輔が新たにハリー・ポッター役として起用されるほか、初年度に同役を演じた藤原竜也がカムバック。このたびステージナタリーでは、原作「ハリー・ポッター」シリーズの大ファンだという大貫に、「ハリー・ポッター」の世界に飛び込むにあたって楽しみにしていることや、人々を魅了し続ける舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」が持つ“魔法の力”について話を聞いた。

取材・文 / 興野汐里撮影 / 藤記美帆

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」とは?

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」キービジュアル

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」キービジュアル

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は、イギリスの作家J.K.ローリングの小説「ハリー・ポッター」関連のコンテンツにおける初の舞台作品。原作者のローリングが、演出家のジョン・ティファニー、脚本家のジャック・ソーンと共に創作した本作では、小説の最終巻「ハリー・ポッターと死の秘宝」から19年後の物語が描かれる。

2016年にイギリス・ロンドンで開幕して以降、アメリカ・ニューヨーク、サンフランシスコ、オーストラリア・メルボルン、ドイツ・ハンブルク、カナダ・トロントの6都市で上演され、2022年にはアジア圏初となる東京公演がスタートした。当初は前後編に分かれた2部制として上演されていたが、2021年にブロードウェイにて、2部制の前編を第1幕、後編を第2幕とする新バージョンが誕生。日本公演では新バージョンが採用され、上演時間は休憩を含む約3時間40分となっている。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。

日本公演初年度は、藤原竜也、石丸幹二、向井理がハリー・ポッター役を担当。2年目からは、新キャストの藤木直人と大貫勇輔に加え、藤原がハリー役を務める。なお東京公演は、その功績が評価され、第30回読売演劇大賞で選考委員特別賞を受賞した(参照:読売演劇大賞受賞に劇チョコ日澤&古川が固い握手「“戦争もの”がSFになる未来願って」)。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」より。

大貫勇輔インタビュー

“人間ハリー・ポッター”が描かれた、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」

──大貫さんは子供の頃から「ハリー・ポッター」シリーズに親しまれていたそうですが、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」をご覧になって、どのようなことを感じましたか?

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は小説の19年後を描いた作品ではあるんですけど、「ああ、僕が大好きだった『ハリー・ポッター』の世界に帰ってきたんだ!」という懐かしさで胸がいっぱいになりました。あとは、何と言っても舞台上で繰り広げられる魔法の連続に驚かされましたね! 最初はすごくびっくりしたんですけど、観ているうちに、魔法が存在しているのが当たり前になっていくのが不思議で(笑)。演出はもちろん、ハリーとアルバス親子の愛情や、アルバスとスコーピウスの友情を描いたメッセージ性のあるストーリーにも胸を打たれました。エンタテインメント性があって、ストーリー展開も素晴らしい。バランスの良い、本当によくできた作品だなと感じました。

大貫勇輔

大貫勇輔

──ご自身の出演が決まった際、「当時の自分に自慢したいくらい本当に嬉しいです!」と喜んでいたのが印象的でした(参照:舞台ハリポタの新ハリー・ポッター役2人目は大貫勇輔、舞台観たときの感動明かす)。

「絶対に勝ち取ってやるぞ!」という気持ちでオーディションに臨んでいたし、手応えもあったので、受かったときはもちろんうれしかったんですけど、学生の頃に一生懸命むさぼり読んでいた本の主人公に自分がなる、という想像がつかなくて……「本当に自分が演じるの?」みたいな、まだどこか現実味のない、ふわふわとした気持ちで過ごしています(笑)。

──小説「ハリー・ポッター」シリーズでは、少年時代のハリーの冒険が描かれ、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」では、父になったハリーとその息子アルバスを軸にした物語が展開します。大貫さんには、ハリーとアルバスの姿がどのように映りましたか?

ハリーって、魔法界のスーパースターになりたくてなったわけではないじゃないですか。ヴォルデモートからかけられた呪いも、自分の意志ではなく、たまたまそうなってしまった。その数奇な人生が19年後もずっと続いていて、そのせいでハリー自身も苦しんでいるし、息子のアルバスも苦しんでいる。親や兄弟が有名なほど、比較されてプレッシャーを感じたりすると思うんですけど、ハリーの息子だったらそりゃあ大変ですよね(笑)。また、息子との距離の取り方がわからないハリーの葛藤がうまく描かれていて、「そうだよね。わかるよ」と感情移入できる作品になっていると思います。

──“みんなのヒーロー、ハリー・ポッター”ではない、人間味のある部分が丁寧に描写されていると感じました。

そうですね。まさに、“人間ハリー・ポッター”という感じ。

──そんなハリーを演じるうえで、特に意識しているポイントは?

脚本がよくできているので、脚本と誠実に向き合うことができれば、自然とハリーになれるんじゃないかと思うと同時に、ダンサーである自分の肉体を生かすことができたら良いなと。普段から仲良くさせてもらっている(ドラコ・マルフォイ役の)宮尾俊太郎さんが「肉体的にすごくしんどい舞台だよ」とおっしゃっていたので、鍛えてきた身体が役に立つんじゃないかなと思っています(笑)。

どういう仕組みで魔法が繰り出されているのかとか、実際にお稽古が始まってみないとわからない部分が多いですが、今は純粋にお芝居をするのが楽しみですね。ものすごいセリフ量かつスピード感のある作品だから、テンポがとても重要だと思っているので、自分のセリフが埋もれないように演じられたらと考えています。

大貫勇輔

大貫勇輔

大貫勇輔

大貫勇輔

毎公演、自分に課題を出し続ける

──東京公演では、2021年に誕生した新バージョンが上演されます。新バージョンの公演は、以前海外で拝見した2部制の公演より、さらに会話の密度が高くなり、テンポアップしているような印象を受けました。

僕も機会があったらロンドン公演を観たいと思っていたんですが、上演時間が合計8時間くらいだと聞いてびっくりしました(笑)。今回の公演も上演時間が3時間40分ということで、演じるほうも大変だと思うし、お客さんもエネルギーが必要になりますよね。いくらよくできた作品といえども、飽きさせずに、没頭させ続けられるかは役者次第。最後までしっかり演じきりたいです。

──大貫さんはミュージカル「ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~」(参照:吉田鋼太郎、5人のビリー・エリオットを絶賛「とにかくこいつらがすごい」)やミュージカル「メリー・ポピンズ」(参照:濱田めぐみ・笹本玲奈らが歌唱披露!「メリー・ポピンズ」本公演まもなく開幕)など、比較的公演期間の長い作品に出演されています。その際、身体の調子やモチベーションを維持するために気を付けていることはありますか?

身体のケアについては日頃から意識しているので、普段の公演とそこまで変わらない気がするのですが、それよりもいかに“自分自身を飽きさせないか”が大切だと思っていて。毎公演しっかりと自分に課題を出していかないと、観ている人にも伝わると思うんです。新鮮さを失わずに、常に120%の力を出し続けるには、自分の中に太い芯を持って挑まなければならない。その気持ちをキープするのが一番大変だろうし、大事なことなんじゃないかなと思っています。

大貫勇輔

大貫勇輔

楽しみなのは、あのシーン!

──舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」には「ハリー・ポッター」シリーズで登場したキャラクターに加えて、ハリーの息子アルバス、ドラコ・マルフォイの息子スコーピウス・マルフォイ、彼らと行動を共にするデルフィーなど、新たなキャラクターも登場します。舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の登場人物で興味を持ったキャラクターはいますか?

僕は嘆きのマートルですね! 声の感じとか佇まいとか、「うわあ、すごい! 本物のマートルだ!」と思って、「ハリー・ポッター」シリーズのファンとしてすごく感動しました。

──嘆きのマートル役の美山加恋さんが舞台装置に乗ってグルグルと回るシーンでは、まさにゴーストのような浮世離れした身体の使い方をしていて、目を奪われました。

やっぱり役の再現度が高いとテンションが上がりますよね! 舞台「千と千尋の神隠しSpirited Away」を観たときも、リン / 千尋の母役を演じた咲妃みゆさんのお芝居に感動して……咲妃さんのファンになっちゃいましたもん(笑)。今、ミュージカル「マチルダ」(参照:4人のマチルダを筆頭に子供たちが奮闘!ミュージカル「マチルダ」日本初演のプレビュー公演が開幕)の現場でご一緒しているんですが、「あのときのお芝居がもう一度観たい」とお願いしたいぐらい(笑)。

──そんな微笑ましいエピソードが!(笑) さて、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は2023年7月に2年目に突入します。「ハリー・ポッター」の世界に飛び込んだ大貫さんが舞台上で輝く姿を、ファンの方々も楽しみにされているのではないでしょうか。

1幕最後の魔法を使って戦うシーンや、ポリジュース薬を使って変身するシーンはもちろん、2幕のラストシーンも早く演じてみたいですね。3時間40分にわたって、誰かの濃厚な人生を生きられる経験ってなかなかないと思うんですよ。父として苦悩したハリーが、最後のシーンでアルバスと向かい合ったとき、一体どんな気持ちになるのか。考えるだけでワクワクしてきます。

「本当に魔法が存在しているみたい!」という驚きから始まり、最後は親子の成長に心を揺さぶられて、温かい気持ちになれる。「ハリー・ポッター」シリーズのファンでも、初見の方でも楽しめる、驚きと感動に満ちた作品になっていると思います。魔法にかかったような気持ちで劇場をあとにできることは、本当にかけがえのない体験だと思うので、1人でも多くの方に体感していただきたいですね。ありがたいことにチケットがすごく売れているそうですが、お早めにチケットを取っていただいて(笑)、劇場に足を運んでもらえたらうれしいです。

大貫勇輔

大貫勇輔

プロフィール

大貫勇輔(オオヌキユウスケ)

1988年、神奈川県生まれ。7歳よりダンスを始め、バレエ、ジャズ、ストリート、アクロバット、コンテンポラリーなどジャンルを超えて踊りこなすダンサー・俳優。近年の主な出演作に、ミュージカル「ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~」「メリー・ポピンズ」「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」などがある。現在、ミュージカル「マチルダ」に出演中。また、放送中のNHK大河ドラマ「どうする家康」で浅井長政役を務めている。