「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」三浦直之×根本宗子|試行錯誤して挑んだ配信演劇、悩みながら駆け抜けた半年の先に見えたものは?

可能性を広げてくれる音楽(根本)

──緊急事態宣言が明け、少しずつ演劇界が動き始めた7月、お二人はシアタークリエから新作オリジナルミュージカルを届ける新プロジェクト「TOHO MUSICAL LAB.」に参加されました。三浦さんはガールズバンドとドローンの出会いを描いた「CALL」、根本さんは“夜を愛し、願いを込めて眠りに入る少女”が登場する「Happily Ever After」という、それぞれカラーの異なる作品を発表しています。

三浦 稽古も別だったのであまりお話する機会がなかったんですが、お互いのキャスト・スタッフしかお客さんがいないみたいな、すごくぜいたくな環境で根本さんの公演を拝見させていただいたんです。「Happily Ever After」は、愛らしいやり取りと、それをちょっと引いた視点から見ている“冷たさ”が両立している作品でしたよね。僕はあまりミュージカルを観ないので、「自分の作品をミュージカルと呼んで良いのかな?」みたいな思いがあったんですけど、根本さんの作品はミュージカルだからこそできる表現方法で、“人と人との感情のキャッチボール”が描かれているなって感じました。

根本宗子

根本 そう言っていただけてうれしいです! 三浦さんの「CALL」もご本人のピュアな心が表れているみたいに、登場人物がすごくイノセントだったし、それを表現できる俳優さんも稀有な存在だなと思って。女の子選びが本当に大変そう。「Happily Ever After」はピアノを使ってギュッとした世界を表現した作品なんですけど、「CALL」はバンドサウンドに乗せて、開けた世界を描いた作品だったので、バランスの良い対照的な2作品になった気がします。

──根本さんは「もっとも大いなる愛へ」の主題歌を手がける大森さんや「Happily Ever After」で共同制作した清竜人さん、三浦さんは「CALL」のナンバーを作曲した元シャムキャッツの夏目知幸さん、サニーデイ・サービスの曽我部恵一さんなど、さまざまなミュージシャンの方とご一緒されています。「TOHO MUSICAL LAB.」に限らず、ミュージシャンの方々とお仕事をされることが多いお二人ですが、演劇における音楽の役割についてどのように考えていらっしゃいますか?

根本 5年くらい前かな? チャラン・ポ・ランタンの小春ちゃんに「根本さんのお芝居はセリフが多いから、歌にすればもっと面白くなると思う。だから一度関わらせてみてほしい」って言われて。それから何人かミュージシャンの方とご一緒して、自分だけじゃできないところまで作品の可能性を広げてもらいました。私の場合、自分だけで歌詞を書くことはしなくて、半々で書くか、もしくは「Happily Ever After」のように全部竜人さんにお任せするかのどちらかなんです。歌詞を書くのが上手な劇作家の方もいるんですけど、私は全部言葉にしちゃうのでどこか説明的になるんですよね。でも歌詞って想像の余地があるほうが面白いし、ミュージシャンの方に歌詞を書いてもらうほうが楽しいですね。

三浦直之

三浦 僕はミュージシャンの方に限らず、クリエーションの場所に演劇以外の方がなるたけ多くいてくれるといいな、と思っていて。違うジャンルの方が参加すると、稽古場の雰囲気がガラッと変わって、楽しいなって感じる瞬間があるんです。だから、音楽を劇中でどう使うかということより、演劇の外側にいる人たちが混ざったときに、どんな新しいものが生まれるかな、っていうのを楽しんでる気がしますね。

──ミュージシャンの方は皆さんすごく良いお芝居をされますよね。

根本 俳優はその都度居方を変えるけど、ミュージシャンの方は“板に乗るバージョンの自分の型”を持ってるんですよね。三浦さんの「ロミオとジュリエットのこどもたち」に出演した後藤まりこさんがまさにそうで、特殊な役ではあったけど、後藤さんだけ明らかに立ち方が違うというか。もちろん、三浦さんといつもご一緒している俳優さんたちが出演しているから成立していると思うんですけど。

悩みながら駆け抜けた半年の先に

──“ウィズコロナ”の新しい生活様式が広まりつつある今、エンタテインメントにも新たな形が求められています。そこでスカパー!は、エンタテインメントを届ける人と受け取る人をつなぐ「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」を立ち上げました。これまで数多くのエンタテインメント作品を発信してきたお二人は、「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」のように、放送プラットフォームを取り扱う企業等が新たに配信プラットフォームを整備し、エンタテインメントを応援する取り組みについてどう思われますか?

左から三浦直之、根本宗子。

根本 今年に入ってから配信プラットフォームが増えたので、どこを使えばいいか迷ってしまうこともあるんですが、スカパー!さんのような企業やプレイガイドが新しい配信サービスを整備してくださるのはすごくありがたいことです。

三浦 そうですね。僕たちも試行錯誤している最中なので、今後配信サービスをどのように利用していくのか改めて考えたいと思いました。

──環境が整備され、配信作品が充実したことにより、作り手と観客の関係性もこれまでと変化しました。三浦さんは無観客公演を経験して観客の“不在”を意識されたそうですが、作り手と受け手の関係性について現在はどのように考えていらっしゃいますか?

三浦 いわきの高校生たちと3月に公演をやったんですけど、直前で無観客上演に変更になってしまって。特に高校演劇って、お客さんのリアクション次第ですごく変わるので、お客さんの声ってすごく大事なんですよ。あの公演のときは僕しか観客がいなかったから「なるたけ笑おう」「俺の笑いよ、届け!」みたいな感じで客席からエールを送ってました(笑)。

根本 やっぱり生で演劇を観るのと映像で観るのって、受け取り方が全然違うんです。例えば、生で体感すると心地良い俳優の熱量も、映像で観ると少し暑苦しいと感じてしまうことがある。その違いを踏まえて、演出の仕方や脚本の書き方がだいぶ変わったかもしれません。自分の性格的に、劇場公演と配信公演のどちらかに徹するしかないと思ったので、「もっとも大いなる愛へ」は配信に特化した作品にしてみようと思って。「本多でやるなよ!(笑)」と思うくらいに小さなセットで上演するので、それをお客さんがどう感じてくれるのか今から楽しみです。あと、「2年前くらいから本多抑えてるから、本多でやらざるを得ないんだよ!!」と大きな声で言いたい(笑)。

──10月には、三浦さんが脚本・演出を手がける「恋を読む vol.3『秒速5センチメートル』」が上演され、スカパー!オンデマンドでも配信されます(参照:入野自由・海宝直人ら出演の朗読劇「秒速5センチメートル」スカパー!オンデマンドで配信)。また11月に上演される「もっとも大いなる愛へ」の公演をもって、月刊「根本宗子」は1年間の活動休止期間に入ります。

根本 1年休もうと思ったのは、コロナの影響があったからということじゃないんですけど、これまでずっと演劇をやってきたので、「演劇という枠組みの外側から見たら、自分はどういう風に見えてるんだろう?」ということが気になって。演劇を好きな気持ちは変わらないんですが、少し考える時間を設けてみるのもいいのかなと思ったんです。その間にいろいろなジャンルの作品に触れたり、外側から演劇界を見てみたりしたいですね。

左から三浦直之、根本宗子。

三浦 今日根本さんのお話を聞いていて、今後のエンタメの可能性を感じたというか、何かヒントになるんじゃないかと思いましたね。まだまだもっと考えられることはあるし、やれることがたくさんある。すごくハッとさせられました。

根本 まだ自分の中で答えは出せていないんですけど……コロナで演劇がストップした時期を経て、エンタメがどれだけ大事なものかということを実感していただけたっていうのは、我々としてもすごく希望があることだと思うので、やれることを、やれるタイミングでやっていきたいですね。

左から三浦直之、根本宗子。

「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」とは?

「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」の仕組み。

演劇や音楽、伝統芸能など、さまざまなステージイベントの主催者を対象としたエンタテインメント業界向けの支援施策。コンテンツの配信手数料や回線費用などをスカパー!が負担し、クレジットカード決済手数料を除く各コンテンツの売り上げをイベント主催者に還元する。

生配信・収録配信どちらも対応可能で、販売価格はコンテンツ提供者が決定できる。スカパー!での放送がないコンテンツも販売可能。視聴者は無料の会員登録をするとコンテンツの購入が可能になり、決済方法はクレジットカードのみとなっている。

対象期間:2020年8月から12月31日受付分まで(配信・放送は2021年3月頃まで)

利用対象:ステージ主催者(音楽、演劇、伝統芸能などのコンテンツ)

配信手数料:0%(別途、クレジットカード決済手数料2%)

回線費用(ネット回線):スカパー!負担