ここではカンパニー・グランデと共に歩んできた講師で、ワーク・イン・プログレスのクリエーション・チームに名を連ねる今井朋彦、内橋和久、川口隆夫、川村亘平斎、島崎麻美、武徹太郎、目黒陽介、森洋久、DJみそしるとMCごはんからのメッセージを紹介する。
今井朋彦(俳優、演出家)
120名のチーム……いまだに自分の想像力が追いつきません。
まだキチンと対面できていない人もいます。
それでもたしかにチームだなあと思わせてくれるのが、このカンパニー・グランデ。
なぜだろう、と考えます。
表現がしたい、というシンプルな動機を胸に、集まってくる皆さん。
それ以外の余計なものを持たず、身体ひとつで集まってくる皆さん。
それだけで、もう十分なのかもしれない、そう考えました。
だったら、表現が見たい、と思ってくれるお客様も、それだけでもうチームの一員。
集まる「場」は作ります。ぜひ一緒に集まりましょう。
内橋和久(ギタリスト、コンポーザー、プロデューサー)
タンポポ! あの強さは長い冬、雪の下で粛々と根を張りながら春を待つから。雪がとけ黄色く咲いたあと、綿帽子から飛び立つ種子は山脈を越えて遥か遠くへ、そしてまた新たな土地で根を張り、花を咲かせる…そんな小さな冒険王みたいな花がチーム名なんだから、豊かな想像力を根に、高い順応性と自由な発想を翼に、いつでもどこへでも飛んで行ける軽やかさを獲得したい。音って、鳴らしてもその場で消えてしまう儚い表現だけど、鳴らさなくても聴こえる、そんな音もある。届いたところで永遠に響き続けたり、何倍にも膨れあがったり。一滴の音が宇宙にだってなり得る。そんな音の魅力をみんなで感じてみたい。
川口隆夫(パフォーマー)
昨年12月のスタジオワークでは、「花はなぜ美しいか」と「もぐる」をキーワードにワーク。「(この人には)華がある」とはどういうことかを考え、「生命力」いう言葉に、「もぐる」は有名な映画『大脱走』(1963年)にヒントを得て、「命を求めて、(この鬱屈した状況から)大脱走を企てる」というキーワードから動きやイメージ、エモーションを探るワークをしました。
さて、年明けて「ヘビ」。ニョロリにょろりと、どう楽しく逃げ出そうか。
花一輪(タンポポ?) 咥えて大空を 駆け(スリ)抜けにけり (ミサイル? 春の夢?)
字余り失礼、にょろにょろり~
川村亘平斎(影絵師、音楽家)
「花」は、昔から扱われているとてもシンプルなテーマですが、よくよく考えてみると、だんだん花ってなんだかよくわからなくなってきて面白い。
皆さんも考えてみてください。どうして僕たちは、花をキレイだと思うのでしょうか?様々な色をした花弁とか、良い香りだとか、人を心地良くさせる力を花は持っていますが、では何故それが美しいのか?
死者に手向けられる花は「生(せい)」の象徴でもあります。誰かを失った喪失感を、花という生命で補完しようとしているのかもしれない。生は性であり、聖でもある。人は、力強く生きることそのものを、花に見出しているのかもしれません。
パフォーマンスの引率パートナー・今井朋彦さんとは、そんなことをつらつら考えながら、パフォーマンスのイメージを膨らましてきました。めちゃくちゃエキサイティングで、こんなに自由な時間があっていのか!と毎回ワクワクしています。カンパニー・グランデのメンバーとどんな「花」が表現できるか、とても楽しみです。
島崎麻美(ダンサー、振付家)
16歳でヨーロッパへダンス留学し、仕事が見つからず1年間帰国した時に近藤良平さんと山崎広太さんの作品で共演しました。
まだコンテンポラリーダンスのコの字もわからなかった当時の私には学びが多いプロセスで、その後の海外でのキャリアに繋がる特別な経験となりました。
12年間コンテンポラリーダンスのバットシェバ舞踊団でたくさん踊った後、デモクラティック教育の学校でダンス講師と担任を兼任し、毎日ダンスを通して子供達が成長する過程を見ているうちに、ダンスは人類にとってとても大切な要素であることを実感し、またどうすればみんなが普通に踊る空間を作れるかを常に試行錯誤しています。
娘が成人し、日本の活動が増えて来ている近年、近藤さんにそんなことを話していたら、ある日突然“ちょうど合いそうな企画がある”と声をかけてくれたのがこのカンパニー・グランデ。
昨年6月から始まったグランデの過程は、本当に豊かで、胸がいっぱいになる瞬間に溢れています。
あれから30年、こういう形で自分が積み重ねてきた知識を伝え、共有する機会を与えてくれた近藤さんと彩の国さいたま芸術劇場に心から感謝します。
武徹太郎(音楽家、美術家)
クラクラしてます。
カンパニーグランデに集まった120人のパフォーマーさん達は年齢もレベルも心身のコンディションも鮮やかにバラバラで、
「こんなんじゃ何にもつくれっこない!」
と思った次の瞬間には
「いや、こうじゃないと何にもつくれない!」
となんだか勝手に何度も救われちゃったりして。
痛みも喜びも120倍、出鱈目で底抜けに大らかで愉快なカンパニー。
一体この舞台ではどんな賑やかで美しい花が咲くのでしょうか?!
目黒陽介(ジャグラー、演出家)
このカンパニー・グランデに関われて大変嬉しく思っています。
参加者の皆さんの真剣に表現に取り組む姿にとても刺激をもらっています。
自分の専門はジャグリングですが、夏からのスタジオワークでは、いわゆる曲芸的なジャグリングというより物を通して自分、他人とどう向き合うかということをメインにワークを行っています。
それは今回のワークインプログレスでも、あまり変わりません。
種から芽が出てつぼみから花になって枯れる。
その経過をずっと観察することは普通に生活していたら見ることは、あまりないかも知れません。
毎日見かける花でも自分たちが見ていない時にずっと動き続けている。
そんな気づかずに過ぎ去っていくような時間を丁寧に扱うワークにしたいなと思っています。
森洋久(情報科学研究、作曲家)
チーム Hana-Towa サウンドスケープ = 音をきくことと、おくりとどけること。
駅の自動的なアナウンスの声、街道を走り去る救急車、排他的な都会の喧騒に花など咲くものか。しかし、ビルの谷間のわずかな土の上に、花を見出すとき、乾ききった心にも花が咲く。いま、劇場から外へ。ハナを射止めに繰り出すHana-Towaのハンターたちは、3月13日にどんな<花>を舞台にもたらすのだろうか。
サウンドスケープのチームは、他のチームと異なり、表現することではなく、音を聴くこと、耳を傾けることが活動の主体となる。自分が音を発し、声をあげるのではなく、音を発している、声をあげている対象に「よりそう」ことから始まる。しかし、それは、あらゆる表現の根底にある出発点かもしれない。
DJみそしるとMCごはん(ラッパー、トラックメイカー)
カンパニー・グランデは予測不能な場所です。わたしが何かひとつ伝えると、想像を超える解釈や違った視点からのアプローチが繰り広げられ、常に発見の連続です。稽古場では一筋縄ではいかないのが当たり前。キャッチボールをしようと思って野球ボールを投げたらみかんが投げ返ってきた。そのみかんを投げたらキリンが走ってきた!みたいなことが毎回起こります。こんな新手&荒手のキャッチボールが楽しめる場所は他にはありません。
現在、武徹太郎さんとチームメンバーでラップと楽器演奏を用いたステージを絶賛模索中です。みんなで花にまつわる考察をしまくって、突破するぞ!