坂東巳之助が思いを込める“最後の”「新春浅草歌舞伎」、尾上松也らの意気込み (2/2)

「新春浅草歌舞伎」出演者が語る、意気込みと思い出

ここでは尾上松也、中村歌昇、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉の8人が2024年の「新春浅草歌舞伎」で自身が演じる役への意気込みと、これまでの「新春浅草歌舞伎」の思い出を振り返る。

尾上松也

尾上松也

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

「魚屋宗五郎」は、徐々に酔っていく様子と、お酒が美味しそうに見えるようにがんばりたいです!

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

初年度は、初めてリーダーとして迎える「新春浅草歌舞伎」で、不安だった僕を後輩たちが一緒にがんばろうと勇気付けてくれたことです。

プロフィール

尾上松也(オノエマツヤ)

1985年生まれ。音羽屋。六世尾上松助の長男。1990年に二代目尾上松也を名乗り初舞台。

中村歌昇

中村歌昇

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

どのお役も全身全霊で挑みますが、なかでも「熊谷陣屋」は、播磨屋にとって大事な大事な演目です。播磨屋のおじさま(二世中村吉右衛門)のようにはできないですが、なんとか少しでも近づけられるようにしなければと思っております。生半可な思いではできないですし、自分ができる最大限を発揮して、勤めさせていただけることに感謝し、強い覚悟を持って勤めます。

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

やはり松也兄さんを筆頭に我々の世代が、この浅草を任せてもらえるようになった年ですね。各々が緊張感に包まれながら、必死に取り組んでいたのを思い出します。

プロフィール

中村歌昇(ナカムラカショウ)

1989年生まれ。播磨屋。中村又五郎の長男。1994年に四代目中村種太郎を名乗り初舞台。2011年に四代目中村歌昇を襲名。

坂東新悟

坂東新悟

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

「新春浅草歌舞伎」では、毎年古典の演目を上演していますが、今回はとりわけ大変な作品が並んでいるように感じます。それだけ年数を重ねてきたということでもありますし、これをいつか歌舞伎座で上演できるよう未来へつなげていくことを求められていると感じます。今回私が演じる役は、どれもほぼ幕開きから幕切れまで出突っ張りで気を遣う役ばかりなので、集中力を切らさないよう全身全霊で勤めたいと思います。

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

以前「寺子屋」の千代を勤めた際に(片岡)仁左衛門のおじさまから「今はまず楷書でやりなさい」と言っていただいたことが心に残っています。楷書で勤めるためにはまずどんな芝居が楷書なのかを知らなくてはいけないとそのときに気づきました。ただ闇雲に先輩方の真似をするだけではなくその奥を見ることを、より必死に意識するきっかけになった出来事です。

プロフィール

坂東新悟(バンドウシンゴ)

1990年生まれ。大和屋。坂東彌十郎の長男。1995年に初代坂東新悟を名乗り初舞台。

中村種之助

中村種之助

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

全ての演目、全てのお役が憧れで、みんなの夢をひっくり返したような演目立てになったと思います。僕自身、4つの演目にに出させていただき、なかでも「流星」は、さまざまな役柄をお面を使って演じ分けるコミカルな舞踊です。僕は普段、立役に女方、荒々しい役や三枚目のお役といろいろなお役を勉強させていただいているので、その集大成となる舞台になればと思っております。

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

初めての主役、憧れのお役、新たな道を示してくれたお役。すべてが僕の人生でかけがえのない思い出です。最初の年に勤めた「猩々」の幕切れ、幕外花道の七三で目をつぶり、一呼吸して目を開いて見た客席の光景は、今も忘れられません。(そのあと、まわりながら引っ込むときに花道から落っこちたときのことも。笑)

プロフィール

中村種之助(ナカムラタネノスケ)

1993年生まれ。播磨屋。中村又五郎の次男。1999年に初代中村種之助を名乗り初舞台。

中村米吉

中村米吉

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

おぼこく純粋で恋に恋しているようなお姫様の代名詞 八重垣姫、湯上がり姿の色っぽく仇な姿のお富、キリッと粋な芸者、礼儀正しく忠義な腰元のおなぎ。女方の多彩な役柄に挑む今回、浅草でのさまざまな経験の総決算をさせていただきたく思っています! その中でも“三姫”の一つである八重垣姫はお姫様オブお姫様! 深窓の令嬢である彼女の、世間知らずだからこその積極的な恋の熱情と、品格を持って、醸し出せるよう精一杯勤めたいと思っています。

歌舞伎らしい何とも言えない色彩美もぜひご堪能いただきたい!

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

一番に思い出すことは、「幡随院長兵衛」の子分で出たとき、客席を駆け抜けて舞台に上がり込むときに階段を踏み外して盛大に転んだこと……。いまだにその傷痕が残っていますし、本当にお恥ずかしい限りでした。

その他にも今は亡き先輩方の教えや、数多の先輩方のご指導、同年輩の仲間たちと共に過ごした時間はどの思い出も煌めきを持って私の今を作ってくれています。

おしゃべりな私を作ったのも“お年玉挨拶”のせいなんですよ……(笑)。

プロフィール

中村米吉(ナカムラヨネキチ)

1993年生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に五代目中村米吉の名を襲名して初舞台。

中村隼人

中村隼人

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

与三郎はずっと勤めてみたかったお役なので、夢が叶いとてもうれしいです。
仁左衛門のおじ様にご指導いただきます。
元は小間物問屋の若旦那であったことを忘れずに勤めます。

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

2012年、高校3年生のときに初めて「新春浅草歌舞伎」に出させていただいてもう12年。10年連続で出演させていただきました。大雪で電車が止まったり、コロナで公演が中止になったり、いろいろなことがありましたが、間の時間で浅草の美味しいご飯を食べたり、大役をいただいたときに諸先輩方に浅草までお越しいただいてご指導くださったことがとても忘れがたいです。

プロフィール

中村隼人(ナカムラハヤト)

1993年生まれ。萬屋。中村錦之助の長男。2002年に初代中村隼人を名乗り初舞台。

中村橋之助

中村橋之助

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

僕の2024年は、米吉のお兄さんからの求愛で幕を開けます!

自分を世界一のイケメンだと信じ込ませて(笑)。勝頼として無理なく納得のいく存在でいられるように勤めたいと思います!

コロナ禍では叶わなかった全員そろっての幕も第1部、第2部共に上演いたします!「新春浅草歌舞伎」一丸となってのチーム力をお楽しみに!

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

だいぶ前のことですが、巳之助のお兄さんが楽屋で筋トレをされていて、日に日にメンバーがそろっていき、最終的に巳之助のお兄さんの楽屋でみんなで筋トレをしていたんです! その時に、松竹の偉い方がご挨拶に来られて。なぜか座り直さずに全員筋トレの体勢のまま「おはようございます」って言ったのをすごく覚えてます(笑)。

プロフィール

中村橋之助(ナカムラハシノスケ)

1995年生まれ。成駒屋。中村芝翫の長男。2016年に四代目中村橋之助を襲名。

中村莟玉

中村莟玉

──今回ご出演される演目に対する意気込み、あるいはお客様に「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。

すべて初役で勤めさせていただきます。「どんつく」の子守は華やかな雰囲気の中に溶け込めるように可愛らしく勤めたいと思います。「魚屋宗五郎」の菊茶屋娘おしげはストーリーが動き出す前の、宗五郎の家の中の空気感を作る大切なお役だと思います。お客様がストーリーに自然に入り込めるように丁寧に勤めたいと思います。「熊谷陣屋」の藤の方は私の叔父、(中村)魁春がたびたび勤めているお役で、叔父は吉右衛門のおじ様の熊谷では相模も藤の方もどちらも勤めております。歌昇兄さんの初役の熊谷で藤の方を叔父に習って勤められますこと、とてもありがたくうれしく思っております。義太夫狂言の名作中の名作。心して勤めたいと思います。

──これまでご出演された「新春浅草歌舞伎」において、忘れ難いエピソードがあれば教えてください。

すべて大切な思い出です。緊張しているのかどうかすらよくわからず大役を勤めさせていただいたころが懐かしいです。先輩方、特に隼人兄さんにはお昼ご飯をたびたびご馳走になりました。ありがとうございました。浅草ランチ、最高です。

プロフィール

中村莟玉(ナカムラカンギョク)

1996年生まれ。高砂屋。2006年に中村梅玉の部屋子となり、中村梅丸を名乗る。2019年に梅玉の養子となり初代中村莟玉に改名。