中村歌昇
師匠・中村吉右衛門への恩返し
「新春浅草歌舞伎」の上演が決まってから慌ただしくも楽しい日々がさっそく始まっていて、「『新春浅草歌舞伎』があった頃は、毎年こんな感じだったなあ」と懐かしい気持ちでいっぱいです。「吃又」の又平は、弟(種之助)との自主公演「双蝶会」で、吉右衛門のおじさまから直接教えていただきました。播磨屋として大事にしていかなければならない作品の1つですし、結果を出すことがおじさまへの恩返しだと思って、しっかりと勤めていきたいです。「吃又」は、古典ではあるのですが、ファンタジーの要素が強くて、僕自身すごく好きな作品。又平とおとくの愛も、見どころの1つです。困難を乗り越えて奇跡を生み、新たな又平夫婦の門出が描かれている素敵な作品だと思います。
「連獅子」では、間狂言の宗論で、浄土の僧遍念を演じます。これまで親獅子は種之助と一緒に、仔獅子は襲名興行で父(中村又五郎)とさせていただきましたが、宗論は初めてです。獅子を勤めるお二人が「吃又」に出てくださるので、感謝の気持ちも込めて、しっかりと華を添えたいです。
坂東巳之助
明るい気持ちで浅草の町に繰り出して
まさに「いよいよ『新春浅草歌舞伎』が戻って来た!」という気持ちですね。この3年間、メンバー全員がそれぞれの場所で経験を積み重ねてきました。その成果を舞台上でしっかりと発揮したいです。また「新春浅草歌舞伎」は、公演期間中に限らず、浅草の皆さんに支えていただいている公演。コロナ禍で、地域の皆さんにお会いできなかったのが寂しかったですし、またお会いできることにワクワクしています。この公演が、少しでも浅草の活気を取り戻す力になればと思っています。
僕が出演する「男女道成寺」は、正月にふさわしい華やかな演目。新悟くんとは、これまでもさまざまな舞踊作品でご一緒しましたが、道成寺ものでは初めてなので、共演が楽しみです。(第1部の)もう1演目が「引窓」とどっしりとしたお芝居なので、バランスが良いかと。第1部を観終わったあと、明るい気持ちで浅草の町に繰り出していただきたいですね。もちろんコロナ以前のようとはいきませんが、お客様には、日常が少しずつ戻ってきていることを感じていただけるような公演にしたいです。
坂東新悟
憧れの道成寺ものに挑む
「引窓」では、お早を勤めます。お早は、この場面では女房役として登場しますが、もともとは遊女。そこがお早の魅力であり、難しいところで、女房役らしさだけではなく、どこか遊女だった頃の雰囲気が感じられるよう勤めたいです。「男女道成寺」では、巳之助兄さんとがっぷり四つで踊ります。道成寺ものでは、歌舞伎座で拝見した(坂東)三津五郎のおじさまの「娘道成寺」が強く印象に残っています。もちろんそのままを目指すことはできませんが、「おじさまのように踊れるようになりたい」というのが僕の最終的な目標。憧れの道成寺ものを、おじさまのご子息である巳之助兄さんと踊らせていただける……熱い気持ちになりますね。
お客様には、ご無理のない範囲でたくさん来ていただきたいです(笑)。僕たちももちろん、集客につながっていくような評判の舞台になるように勤めますので、面白いと思ったらぜひ広めていただけるとうれしいです。コロナ禍だけではなく、日常のつらいことも公演の間は忘れていただけるような公演にしたいと思います。
中村種之助
この3年間の成長を観てほしい
「新春浅草歌舞伎」は、若手が古典の大役に挑める貴重な機会。ですので復活はすごくうれしいですし、お客様には、ぜひ僕たちの成長を観ていただきたいです。僕自身、最初の頃は技術的に足りない部分を、若さの勢いでどうにかしていましたが、僕も来年で30歳。今まで学んだものを形にしていきつつ、今の自分を観ていただければと思っています。
「吃又」のおとくは、2017年に兄との自主公演で演じました。自主公演で勉強した作品を本興行でやらせていただくのは初めてなので、うれしく思います。僕が先輩方のおとくを観て感動したときの気持ちを、お客様にも感じていただけるよう、精一杯演じたいです。「連獅子」で、今回兄が演じる浄土の僧遍念は、父と兄の襲名公演で演じたことがありますが、法華の僧蓮念は初役で演じます。目指すのは、先代の又五郎のおじさんと(五世中村)富十郎さんのおじさんによる宗論。かけ合いの中に各々の役の性格が出ていて、「宗論ってこういうものなんだな」と強く印象に残っているんです。お二人の宗論に近づけるように演じたいです。
中村隼人
「新春浅草歌舞伎」は僕を育ててくれた場
「引窓」は、僕が高校生の頃に初めて大人の役をいただいた演目です。今回は南与兵衛を初役で演じます。お役を教えてくださるのは、僕が尊敬してやまない片岡仁左衛門さん! 仁左衛門さんも本当に大切にされているお役なので、たくさん怒られながら、少しでも多くのものを吸収したいです。家族愛や義理人情が描かれている温かい作品なので、お客様にはホロッとしていただきたいですね。また、あとにザ・歌舞伎舞踊で新春らしい「男女道成寺」が続きますので、華やかな気持ちで帰っていただけたら成功かなと。
「新春浅草歌舞伎」は2012年から9年連続で出させていただき、僕を育ててくれた場です。「スーパー歌舞伎II『ワンピース』」や「スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』」で大きな役を任せていただけるようになったのも、「新春浅草歌舞伎」でたくさん挑戦させていただいたおかげ。非常に思い入れがあるので、2年間立てなかった浅草公会堂に熱量や芝居に対する思いをぶつけて、通常の公演とは違った自分をお客様に届けられるよう、稽古を重ねていきたいです。
中村橋之助
8人の熱い炎が浅草公会堂の客席を包みます
この3年間で大きく変わったのは、役への向き合い方や取り組み方ですね。今回、「引窓」の濡髪という大役を初役で勤めますが、お客様には「まとう空気が変わったな」と感じていただきたいです。濡髪は、父(中村芝翫)から習います。僕の記憶に焼き付いている「引窓」は、2009年に三津五郎のおじさまが与兵衛、父が濡髪を演じた公演。また雑誌「演劇界」で父が濡髪の扮装姿で表紙を飾っていたのですが、それもカッコよくて。僕が今回濡髪をやることに、父も「良かったね」と喜んでくれました。
僕は三兄弟だと長男ですが、浅草メンバーでは末っ子みたいな立ち位置になるので、それもなんだか楽しくて(笑)。今回の「新春浅草歌舞伎」について言い切れるのは、「僕ら8人の熱い炎が浅草公会堂の客席を包みます!」ということ。それはこの3年間、間違いなくなかったものなので、その熱を劇場で味わっていただきたいですね。8人の熱い思いは、うるさいぐらい客席で感じられると思うので(笑)、まずは一度、観に来ていただきたいです。
中村莟玉
立役としても観てほしい!
「吃又」の修理之助は、2017年の「新春浅草歌舞伎」でもやらせていただいたお役です。同じお役を浅草で再び演じることになりますが、自分がどれだけ成長できているか、楽しみでもあり、気が引き締まるところでもあります。「連獅子」は、芝居の世界に入る前から好きな演目でした。ただ僕には縁のない作品だと思っていたので、松也の兄さんとご一緒することができて、とてもうれしいですね。兄さんには公私ともにお世話になっているので、挑戦させていただくからには仔獅子として全力でぶつかっていきたいです。
多くのお客様もそうではないかと思うのですが、このメンバーでやることがわかったとき、僕は女方担当だろうなと思っていました。だからお役が決まったとき、「え、どちらも立役!?」とびっくりしました(笑)。2019年に中村莟玉になってから、自分の中でも「立役としても観てほしい」と思っていたところですし、実は挑戦してみたい立役のお役もあります。なので、今回の配役はとてもうれしいですし、「立役もできるんだ」と認めていただけるようにがんばりたいです。
プロフィール
尾上松也(オノエマツヤ)
1985年生まれ。音羽屋。六世尾上松助の長男。1990年に二代目尾上松也を名乗り初舞台。
尾上松也公式サイト|Onoe Matsuya Official Website
中村歌昇(ナカムラカショウ)
1989年生まれ。播磨屋。中村又五郎の長男。1994年に四代目中村種太郎を名乗り初舞台。2011年に四代目中村歌昇を襲名。
中村歌昇(Nakamura Kasho) FROM FIRST
中村 歌昇 (@kasho_nakamura) | Instagram
燿の会オフィシャルサイト | 歌舞伎役者 中村又五郎/中村歌昇/中村種之助 播磨屋
坂東巳之助(バンドウミノスケ)
1989年生まれ。大和屋。十世坂東三津五郎の長男。1995年に二代目坂東巳之助を襲名し初舞台。
坂東新悟(バンドウシンゴ)
1990年生まれ。大和屋。坂東彌十郎の長男。1995年に初代坂東新悟を名乗り初舞台。
坂東 新悟 (@bandou_shingo_official) | Instagram
中村種之助(ナカムラタネノスケ)
1993年生まれ。播磨屋。中村又五郎の次男。1999年に初代中村種之助を名乗り初舞台。
燿の会オフィシャルサイト | 歌舞伎役者 中村又五郎/中村歌昇/中村種之助 播磨屋
中村隼人(ナカムラハヤト)
1993年生まれ。萬屋。中村錦之助の長男。2002年に初代中村隼人を名乗り初舞台。
中村隼人 (@1130_nakamurahayato) | Instagram
中村橋之助(ナカムラハシノスケ)
1995年生まれ。成駒屋。中村芝翫の長男。2016年に四代目中村橋之助を襲名。
中村橋之助 (@hashinosuke_4) | Instagram
中村莟玉(ナカムラカンギョク)
1997年生まれ。高砂屋。2006年に中村梅玉の部屋子となり、中村梅丸を名乗る。2019年に梅玉の養子となり初代中村莟玉に改名。