新たな座組で立ち上げる「嵐になるまで待って」成井豊・多田直人・粟根まこと座談会 (2/2)

再演は7年サイクルがベスト

──2023年版「嵐になるまで待って」を上演するにあたり、演出面でアップデートしたいと考えている部分はありますか?

成井 舞台美術に少し変更を加えようと思っているのですが、特に大きく変わるのは音楽で、使用曲を一新する予定です。

粟根 音楽が変わるのは、お客様にとって大きな変化だと思いますよ。

成井 そうですね。DVDやサウンドトラックが発売されているから、何度も映像を観て音楽を聴き込んでくださっているお客様には「このシーンといえばこの曲」というイメージがついていると思うんです。実は私自身もそうなんですよ。でも今回はあえてこれまでのイメージを捨てて、1から作っていきたい。現段階で100曲以上候補が挙がっていて、今活躍している、もしくはこれから活躍するであろう日本の若いミュージシャンの曲を使用する予定です。脚本に関しては、稽古を進める中でテキストレージをすることが多いので、今回も俳優たちと話し合いながら脚本を練ることになりそうです。

成井豊

成井豊

粟根 私は劇団外の人間ではありますが、今まで何度も劇団公演として上演されてきた「嵐になるまで待って」を、劇団員以外のキャストをメインに据えてプロデュース公演として上演することはとても重要なことだと思うんです。キャストも舞台美術も曲も変わることによって、キャラメルボックス版の延長ではない、新たな作品に仕上がる予感がしています。

多田 僕も粟根さんと似たような感覚ですね。僕は「嵐になるまで待って」を名作だと思っているし、劇団の代表作だと思っているから、面白い作品になることは間違いないはずです。過去の上演をご覧になった方それぞれに思い出深いシーンや好きな楽曲があると思うんですけど、もしかすると今回はまったく別のシーンを面白いと感じるかもしれません。「嵐になるまで待って」の新たな魅力に気付く公演になるんじゃないかと、太鼓判を押します!

多田直人

多田直人

粟根まこと

粟根まこと

成井 今回は7年ぶりの上演になりますが、7年サイクルで再演すると、前回とは違うキャスティングで7年前の上演に勝てる可能性が出てくるんじゃないかと思っているんです。「ナツヤスミ語辞典」を2019年に上演したけれど、中学生たちが出てくるお芝居はもう今のキャラメルボックスではできない。熱心なファンの方からすると、「嵐になるまで待って」もキャラメルボックスで上演してほしいと思うかもしれないけれど、私はこのお芝居をベストの状態で上演したいから、今回は劇団外で上演することを決めました。新たな形に挑戦するのは不安でもありますが、同時に楽しみでもあります。

粟根 7年経つと再演したくなるというお話、すごく合点がいきますね。実は劇団☆新感線の「髑髏城の七人」も7年ごとに上演し続けているんです。ちなみに、前回の公演から7年後は2025年なんですよ。

成井 おっ! 期待しちゃうな!

粟根 ふふふ(笑)。以前、「髑髏城の七人」で数十年ぶりに同じ役を演じたことがあったんですが、自分自身、当時とはまったく違うアプローチで役に臨みましたし、演出も変わったので、まったく違う仕上がりになったんです。再演することによって、改めて作品の面白さに気が付くことがある。観客の皆様にもその違いを楽しんでいただきたいですね。

左から粟根まこと、成井豊、多田直人。

左から粟根まこと、成井豊、多田直人。

プロフィール

成井豊(ナルイユタカ)

1961年、埼玉県生まれ。劇作家・演出家、日本演出者協会理事、成井硝子店顧問。早稲田大学第一文学部卒業後、高校教師を経て、1985年に演劇集団キャラメルボックスを創立した。劇団では、脚本・演出を担当。オリジナル作品のほか、北村薫、東野圭吾、伊坂幸太郎、筒井康隆といった作家の小説の舞台化を手がけている。

多田直人(タダナオト)

1983年、北海道生まれ。俳優。桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻を卒業後、2004年に演劇集団キャラメルボックス、2019年に青年団に入団。近年の出演作に、二兎社のリーディング企画「振り返る人たち」、河田園子演出「僕の庭のLady」、成井豊演出「かがみの孤城」、平田オリザ演出「東京ノート・インターナショナルバージョン」などがある。

粟根まこと(アワネマコト)

1964年、大阪府生まれ。俳優。1985年、劇団☆新感線に参加。近年の出演作に、劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎『神州無頼街』」「新感線☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』」「Shinkansen faces Shakespeare『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』」などがある。2023年秋、劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎『天號星』」に出演予定。