WOWOWプラス「90'S TOKYO BOYS IN HALL SPECIAL ~アフタースクール~」独占放送記念|OKAMOTO'Sインタビュー

OKAMOTO'Sが7月29日に東京・NHKホールにて開催したライブイベント「90'S TOKYO BOYS IN HALL SPECIAL ~アフタースクール~」の模様が、8月28日(日)にWOWOWプラスにて放送される。

「90'S TOKYO BOYS IN HALL」はOKAMOTO'Sが不定期で行っている企画で、今回はメンバーが“私立オカモト高校”の生徒に扮し、さまざまなゲストとコラボレーションするスタイルで進行。OKAMOTO'Sのサポートメンバーとしてお馴染みのBRIAN SHINSEKAIを筆頭にRei、TAIKING(Suchmos)、マハラージャンといったアーティストに加え、顧問役の森本晋太郎(トンツカタン)や写真部生徒役の三原勇希といった個性豊かな面々が登場し、一夜限りの“音楽喜劇”を繰り広げた(参照:「私立オカモト高校」でOKAMOTO'Sが大奮闘、秋には豪華ゲスト招き対バンツアー)。

オンエアを前に音楽ナタリーでは特集を展開し、OKAMOTO'Sの新たな挑戦が詰まったライブをメンバーとともに振り返る。

取材・文 / 三宅正一撮影 / NORBERTO RUBEN

こんなことできるのすごいね、OKAMOTO'S

──このインタビューを実施しているのは公演の1週間後です。新型コロナウイルスの影響により予定されていた出演者がキャンセルになったり、本番を迎えるまでかなりバタバタしていたと思いますし、本番のトピックも枚挙に暇がないのですが、まずは皆さんの率直な感想と手応えを聞かせてください。総合演出を務めたハマくんからお願いします。

ハマ・オカモト(B) まずは1つ、無事に幕が開いて閉じたということだけでも幸運だったなあと率直に思っています。総合演出として想定していたことや本番の流れというのは細かく気になった点はありますが、結果的には全部想定や想像を飛び越えていったし、奇跡的な瞬間が連続した2時間45分でしたね。自分が考案したことをひとつのショーにできた喜びはもちろんあるんですけど、それを越えるのがライブなんだなということに改めて気付かされた。そういう1日でした。

ハマ・オカモト(B)

ハマ・オカモト(B)

──コロナ感染者が急増している時世も相まって、本当に幕が開くまでハラハラしていたと思います。

ハマ そうですね。ちょっとマイナス思考なことを言えば、世の中の状況を見ていると予定していた出演者が全員無事に本番を迎えるのはちょっと難しいかもしれないなとは思ってました。母体となるOKAMOTO'Sのメンバーが出られなくなるのはさすがにダメですけどね。ただ、ショウさんが出られなくなったら彼の実の弟、コウキさんなら彼の妻、レイジさんなら彼の娘という代替案もなくはないかなと思うんですけど(笑)。

オカモトショウ(Vo) 替えが効きますから(笑)。

ハマ それは冗談として(笑)、想定していた事態だったとはいえ、実際にあっこゴリラが本番数日前に発熱し、古舘佑太郎が前日に発熱で出演キャンセルということになり。特に佑太郎の出演パートは昨日の今日という状況だったので演出面も変更できなかったし、その緊急事態感はお客さんにも伝わったと思うんですけど、逆にその緊急事態を“メガフルタチ”が登場することで逆手に取れた部分もあって(笑)。そういう部分も含めて本番で想像を越えていくライブ感がありましたね。

ショウ 自分でも客観的に「本当にこんなことできるのすごいね、OKAMOTO'S」って思いました(笑)。笑えるし、エモーショナルさもあって、まさに音楽喜劇だったなあと。それはゲストも含めてミュージシャンとしての力量があってこそなせる技だと思うし。それに加えてそれぞれの人間力やOKAMOTO'Sとゲストの関係値、ゲストの器の大きさも含めてすべてがいい方向に作用しましたね。普段やっているOKAMOTO'SとサポートメンバーのBRIAN SHINSEKAIの5人で完結する世界とはまったく別次元の公演を、大勢のスタッフとともに作り上げられて本当によかったと思います。今回の公演が成功したことで自分たちにも自信が付きましたし、総合演出として指揮を執ってくれたハマくんには「お疲れ様、本当にありがとう」という気持ちですね。

オカモトコウキ(G) 内容がかなりバラエティに富んでいるので、本番中はどういう公演になっているのか実感しづらい部分があったんですけど、収録映像を改めて観たときに相当すごいことをやったんだなと思いました。同時に、OKAMOTO'Sのホール公演の内容として毎回グレードアップしているので、そこは「ドラゴンボール」で強い敵が次々出てくるような感じというか(笑)。内容がどんどんすごいことになっていってるから今後が心配になりますね。インフレが起きてるなと。毎回、自分たちのハードルを上げているなと思うし、そう思えるくらい充実した内容だったと思います。

オカモトコウキ(G)

オカモトコウキ(G)

オカモトレイジ(Dr) 正直、俺も本番がお客さんにどんな見え方がしているのかよくわからなかったんですよ。必要以上に台本を用意したわけじゃないから、コントじみたことをやってるわけでもなく。でも、来てくれた友達の感想をいろいろ聞いていたらみんな口をそろえて「めっちゃエモかった」って言ってくれていて。

──確かに最終的にはすごくエモーショナルな感触が残る内容でした。

レイジ あ、そっち系の印象なんだと思って。それは想定外でもありました。

──このエモーショナルさってOKAMOTO'Sとゲストが持っているミュージシャンシップの賜物だと思うんですよね。

コウキ 確かに普段のライブ以上にエモーショナルだったかもしれない。

ハマ OKAMOTO'Sはこれまで人の曲をバックバンドとして演奏してきた経験が数え切れないほどあって。ほかのアーティストが作った名曲を演奏してみて「すごいなあ」と思うことが多々あったんですよね。でも、意外と自分たちの曲に誰かが乗っかってくれることって、ラッパー以外だと今までほとんどなかったんですよ。自分たちの曲は自分たちで演奏するからいいのであって、ほかのミュージシャンがそこに乗っかってくれたときにどうなるのか正直未知数だったんですね。で、実際にやってみるとアンコールのラストで参加してくれた全ゲストを迎えて演奏した「Dancing Boy」を筆頭に、自分たちの曲に人が参加してくれたときに「こんなに映えるんだ! ここまで相乗効果や耐久性があるんだ!」と実感できたことがすごくうれしかったんです。やっぱりお客さんがOKAMOTO'Sだけで演奏しているバージョンを聴きたいというところに着地しちゃうと本当に今回の公演の意味がなかったし、そうならなかったことを確認できたのはまさに音楽的なエモーショナルさがありましたね。

──ラストの「Dancing Boy」では、3年前に公開されたこの曲のMVを思い出しました。あのMVはBOØWYの「季節が君だけを変える」のMVをオマージュし、同業のミュージシャンからプライベートの友人まで、OKAMOTO'Sの仲間たちが大勢登場するという内容でしたが、今このタイミングで「Dancing Boy」のMVの続きを感じさせるような趣がライブの大ラスにあったなと。

レイジ うん、そうですね。本当にこれも想定外でしたけど、今回のライブに参加してくれたゲストの多くが「Dancing Boy」のMVにも登場してくれていて。登場してないのはマハラージャンと森本(晋太郎)さんくらいかな? TAIKINGもMVには出てないけど、Suchmosのメンバーとして隼太くん(HSU)が参加してくれているし。ただ、意外にもBRIAN SHINSEKAIはあのMVには出てないという(笑)。

ハマ 意外にね(笑)。

レイジ もちろん誘ったんですけど、バイトが入ってたんですよ(笑)。

ショウ バイトかー!(笑)。今やサポートメンバーとして欠かせない存在になっていてよかった。

オカモトショウ(Vo)

オカモトショウ(Vo)

レイジ さっき今回のライブが音楽的にエモーショナルだったという話が出ましたけど、初めて俺の韓国の友達がライブに来てくれて。その人は日本語が全然しゃべれないから楽しめたかなと心配していたんですけど、ライブ後に会ったらめっちゃ楽しそうにしてくれていて。やっぱりちゃんと音楽をアピールできたんだなと思って。友達たちの反応を見てそう思いましたね。

──OKAMOTO'SのライブのMCはいつも思わず笑い声が出てしまうくらい面白いんだけど、今回の公演は絶妙な面白味を音楽喜劇として立体化できていたと思うし、それと同時にその軸には音楽的なエモーショナルさがあるということを証明していたと思います。

レイジ うん、そんな感じがしました。

“影のMVP”トンツカタン森本

──総合演出のハマくんは学園モノという設定も含めて、プロットはどのように進めていったんでしょうか? 例えばハマくんも出演経験のある星野源さんの音楽番組「おげんさんといっしょ」の舞台設定などもヒントになったのかなと。

ハマ 確かに舞台の装いで言うと「おげんさんといっしょ」と近いものはありますよね。でも、今回の学園モノの着想を得たのはもう3年前くらいのことで。学園モノの設定でやりたかったホール公演を2020年5月に中野サンプラザで開催予定だったんですけど、コロナが最初に猛威を振るってる最中で中止になってしまって。それは2020年にやらないと意味がない内容だったんですね。つまり、中身は今回の公演とまったく異なるんですが、ただ学園モノの設定はそのときからあったんです。で、今回はさっき言ってくれた「Dancing Boy」のMVにも通じる横のつながりであったり、いろんなことを集約できるなと思ったんです。なおかつ、ゲストミュージシャンたちに対して必要以上にセリフを覚えてほしいとか、ステージ上でこういうふうに立ち回ってほしいというプレッシャーを与えてしまうことはよくないなと思って。やっぱりそこは尊重したいポイントでした。

──なるほど。

ハマ もちろん、衣装として学生服を着てもらうことは全員に対してオファー段階で打診して快諾してもらっていますけど、「ミュージシャンとしてここまではやりたくない」という線引きはしっかり考えたいなと思いまして。劇の設定としてはOKAMOTO'SがNHKホールでライブを開催する当日なんだけど、バンドの調子が悪いと。そこでゲストのミュージシャンたちにヒントをもらいながら調子を取り戻していくという設定で。そこにある核は、同世代でそれぞれが違う音楽性を持ちながらも、同時代に生きて、同じシーンにいて、互いにリスペクトできる存在だということ。そのことが、自分たちの精神衛生上においてもとてもいい影響を与えてもらってるので。その人たちにOKAMOTO'Sの足りないものを補ってもらうという劇の図式がバランスとしてもちょうどいいかなと思ったんですね。どの部分がOKAMOTO'Sに足りなくて、誰に何を補ってもらうか、という設定はちょっと悩みましたけどね。そのうえで1部の劇と2部のライブのつながりが自然になるように詰めていった感じです。ゲストのミュージシャンとしてのマインドを尊重しながら。

「90'S TOKYO BOYS IN HALL SPECIAL ~アフタースクール~」の様子。(撮影:キセキミチコ)

「90'S TOKYO BOYS IN HALL SPECIAL ~アフタースクール~」の様子。(撮影:キセキミチコ)

──そのバランスを具現化するために、軽音部の顧問の先生役である森本さんという達者な進行役も必要だったし。

ハマ まさにそうです。僕が進行役をやるという発想もなくはないけど、そこは自分も羽根を伸ばしたいなと思いまして(笑)。信頼できる腕のいい進行役を森本さんに担ってもらったのは大正解でしたね。

──森本さんは影のMVPでしたよね。

ハマ もう、全部仕切ってくれましたから。さらには2部でラップまで披露してくれて。

──「NEKO」からのメドレーで森本さんが登場し、エミネムの「Lose Yourself」を披露してて。

ハマ エミネム、完コピでしたよね!?(笑)

──はい(笑)。しかもレイジくんが映画「8 Mile」期のエミネムっぽい衣装を私物から森本さんに提供したんですよね。

レイジ そうそう。最初は1部のジャージの衣装のまま出るという話だったんですけど、「ちゃんとエミネムっぽい格好をしたほうがよくない?」と思って。本当は直前までショウが歌って、「Lose Yourself」のイントロが鳴った瞬間にエミネムの格好をした森本さんがショウを突き飛ばしてマイクを奪うくらいのことをやったほうが「8 Mile」のバトル要素が出ていいなというアイデアも思いついたんですけど、ごちゃごちゃになるなと思ってやめました(笑)。

オカモトレイジ(Dr)

オカモトレイジ(Dr)

ショウ そんなこと考えてたんだ(笑)。

ハマ 森本さん本人の公式Twitterでは何日も前から死ぬほど「Lose Yourself」を練習してる動画が上がっていて(笑)。でも、彼はもともと歌詞を見なくてもあの曲のラップができるんですよ。「当時の日本で僕はそのへんのラッパーよりエミネムを聴いてました!」と言ってるくらいで。

──カラオケの鉄板ネタなんだろうなということは伝わってきましたね(笑)。

ハマ そうそう。でも、いざNHKホールでやるとなったときに緊張感がヤバかったらしい(笑)。