OKAMOTO'Sとファンの“幸福な共犯関係”
──今回の企画はオファーするゲストの人選はいろんなアイデアがあったと思うし、劇の設定を鑑みながら相当パズルをしたんだろうなと想像に難くないです。
ハマ 本当にそうでした。ある程度のたたき台ができた段階で人選はメンバーの3人にも相談して。もちろん、僕からは出ない人選のアイデアがメンバーにもあるので、今回のラインナップの何倍もの声かけリストがありました。その中でさっきお話したような公演全体のゴールに向かうにあたって人選させてもらったという感じです。ぜいたくを言えば、もちろんもっと一緒にやってみたい人はたくさんいるので。
──それこそ「Dancing Boy」のMVのように人選の候補は無尽蔵にいますよね。
ハマ なんなら「Dancing Boy」だけを2時間くらいやり続けてゲストがずっと出てくるというライブをやってもいいかもしれない(笑)。
──ハードコアすぎる(笑)。
ハマ それくらい一緒にやりたい人はいますから。今日、別のインタビュー中にレイジも言っていたんですけど、呼びたい人を全員呼んだらマジで何時間になってたんだという(笑)。
ショウ 恐ろしい。
──こういう音楽喜劇を、ストレートに言えばスベらずにできるバンドは本当に稀有だと思いますが、なぜOKAMOTO'Sはこれができると思いますか?
ハマ どうなんでしょう? やっぱり自分たちのお客さんを相手にするという時点で、その状態はマリオでスターを取ったときと同じような感覚なんですよね。その状況と状態があれば基本的には何をやっても大丈夫だと思っていて。いや、もちろん、スベるという言葉を使うのなら、スベってしまう怖さもあるんだけど──やっぱりOKAMOTO'Sのライブに来てくれるお客さんたちを信頼してるからこういうことができるんだと思うんです。
──ああ、なるほど。幸福な共犯関係というかね。
ショウ それはあるかもなあ。
ハマ OKAMOTO'Sのお客さんに僕らが求めるリテラシーがなかったら、やっぱり今回のようなライブはできないですよね。
コウキ 確かにOKAMOTO'Sはファンとのコミュニケーションがイメージ通りできているというのはあると思いますね。
──それはある種の啓蒙でもあり。
ハマ そう、啓蒙でもあり、お互いの教育というか。我々もファンから教育されてると思うし、その逆も然りで。
ショウ お互い学んでる感じはあるよね。
ハマ だから「OKAMOTO'Sがこういうことをやれるのはマジですごい」と言ってもらえるのはうれしいんですけど、そこにある本質は「理解のあるファンがいてうらやましい」という言葉に置き換えられると思うんです。それは、きれい事ではなくて。お客さんのリアクションが想像できなかったら、学生服でステージに出てきてオリジナルの校歌を歌うことなんてできないです(笑)。
メンバーそれぞれの個人的ハイライトは?
──では、今回の公演におけるメンバーそれぞれの個人的ハイライトを教えてください。
コウキ やっぱり僕は「STAY TUNE」のときにTAIKINGに自分のギターを渡して弾いてもらったシーン。
──あのシーンはかなり印象的でした。あのとき、TAIKING氏のギターにはどんなトラブルが起こっていたんですか? 弦が切れたとか?
コウキ いや、実は最初からTAIKINGのギターの音が出てなかったんです。
ショウ 客席で観ていてわからなかったですよね?
──わからなかったです。
コウキ 僕はすぐにそれに気付いて直るかなと思って少し待ったんですけど、やっぱり音が出なくて。あそこでギタリストでありボーカリストでもあるTAIKINGが出てきて最後までギターの音が出ないまま終わるというのは、いくらなんでもよくないなと思って僕のギターを渡しました。あの瞬間、脳をフル回転させてギターを渡せて本当によかったです。
ショウ 俺はやっぱり最後の「Dancing Boy」をみんなでやれたことに大きな喜びがあったのと、個人的にはマハラージャンとのツインボーカルで自分たちの「Dance to Moonlight」という曲を演奏できたのが印象的でした。「こんなに曲がパワーアップするんだ!」という驚きがすごくあったし、ゲストの中でもマハラージャンは、ハマくん以外はほぼ初対面だったんですけど、こんなにハードルの高い音楽喜劇と向き合ってくれて。リハーサルで交流を重ね、本番もうまくいったのは個人的ハイライトでしたね。
レイジ 俺もマハラージャンの話になっちゃうんですけど、ライブ後に「ありがとうございました」って挨拶したら、「あの……本番中に『レイジ』って呼び捨てにして本当に申し訳なかったです」と言われて(笑)。
ハマ マハラージャンは数年前までOKAMOTO'Sのライブを普通に観に来てくれてたらしいからね。この1年半くらいで一気にミュージシャンとしての状況が大きく変わったと思うし、いろいろ感慨深いところがあるんじゃないですかね。そして、あの見た目で一番フレッシュな存在感を放っているのが面白い(笑)。僕のハイライトを言うなら、本当に各ゲストごとにあるんですが、劇の中でうちのスタイリストも登場しまして。
──TEPPEIさんですね。
ハマ はい。1部から2部への転換タイミングのひとネタで登場してもらったんですけど、あんなにも人前で堂々と立ち回れると思ってなくて(笑)。
──本当に堂々としてましたね。
ハマ そのことにすごくビックリしたし面白かったんですけど、あのとき本人が目の前にあるプロンプターに表示されている台本を読み出して(笑)。そこで僕と森本さんがまったく同じタイミング、まったく同じ挙動で「いや、読まなくていいわ!」と言ったんですよ。そのことに僕も「ヤバ!」って素に戻っちゃって(笑)。
レイジ 「ハモったね」と言わないくらいまったく同じタイミングだったよね。
ハマ そうそう。全然音楽的な話じゃないですけど(笑)、あの気持ちよさは個人的ハイライトでした。あとはもう、三原勇希が林家パー子ばりに登場するところとか、映像を観返したら細かいポイントがいっぱいあるので、そこは今回の放送で会場に来てくれた人たちにはもう一度楽しんでもらいたいし、初見で視聴する方がこの公演に対してどんな感想を持ってくれるのかすごく楽しみです。
次回は「私立オカモト高校」で校内抗争勃発か
──ハマくん、今後の「OKAMOTO'S 90'S TOKYO BOYS IN HALL」シリーズの展望として何か言えることはありますか?
ハマ さっきコウキからインフレが起きてるという話がありましたけど、例えば「OKAMOTO'S 90'S TOKYO BOYS IN HALL 身の丈」とか“グレードダウン”だってできるわけですよ(笑)。
コウキ できるって言ってるだけで絶対やらないですよ(笑)。
ハマ まあ、それくらいなんでもできるし、機が熟したときに次に何をやるか考えたいですね。1つ言えるのは、学園フォーマットはイベント事として続けるにはかなりちょうどいいので。ここからまたゲストを変えたりしてもいいし。
──転校生が登場したり。
ハマ そうなんですよ。あとは、今回の演目で思い付いたけど実現できなかったのは、不良の生徒が登場することで。例えばSANABAGUN.のメンバーやODD Foot WorksのPecoriとか、不良をいい感じに演じられる人たちも呼んでみたいし。校内抗争があってもいいと思うんですよ。
レイジ ゆくゆくは「HiGH&LOW」に合流したいよね。
ハマ そうそう。もっと言えば、予算が許せばいつかこの音楽喜劇を2.5次元化もしたいんです。
──真顔で言ってますけども(笑)。でも、リアルな俳優さんで言えば、菅田将暉さんが登場したっておかしくないですしね。
ハマ そうなんですよ。菅田将暉も北村匠海も柄本時生も呼べるんです。
レイジ 仲野太賀も呼べる。
ショウ 渡辺大知も呼べる。
ハマ 二階堂ふみだって呼べるんですよ(笑)。
──末恐ろしい企画ですね。
ハマ そう、末恐ろしい企画なんです(笑)。
──最後に、9月末から10月にかけてオーストラリアのロックバンド、Last Dinosaursとともに各地で日本のアーティストをゲストに招いて回る対バンツアーが開催されます。6月にLast DinosaursのUSツアーにOKAMOTO'Sが同行したのに続くコラボツアーですが、そこに向けた言葉をいただけたら。
ショウ 今回、日本のゲストアクトで言えばDISH//以外は初めての本格的な競演になるんですけど、コロナ禍になってずっとできていなかった対バンツアーを5年ぶりに開催できることは本当にうれしくて。
──そうか。ほかのアーティスト主催の対バンに呼ばれることはけっこうあったけど、OKAMOTO'S主催となるとかなりひさびさの対バンツアーになるんですね。
ショウ そうなんですよ! 海外バンドとこれくらいの規模でツアーを回れる日本のバンドってあまりいないと思うので。音楽好きだったら間違いなく熱くなるラインナップになっていると思うし、Last Dinosaursもめちゃくちゃいいバンドなのでぜひ楽しんでもらえたら、と。
──新作に向けた制作も始まってるんですか?
ショウ 実は今までにないやり方で曲作りをしていて。面白い曲ができる予感がありますね。
レイジ みんな楽器を弾いてなかったり。
ハマ んー、それは初耳でした。ここまで書いてもらって大丈夫です(笑)。
ライブ情報
OKAMOTO'S tourw/ 2022 ~ウェルカム マイ フレンズ~
- 2022年9月27日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
<出演者>
OKAMOTO'S / Last Dinosaurs / DISH// - 2022年9月29日(木)愛知県 Zepp Nagoya
<出演者>
OKAMOTO'S / Last Dinosaurs / iri - 2022年9月30日(金)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
<出演者>
OKAMOTO'S / Last Dinosaurs / 羊文学 - 2022年10月2日(日)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
<出演者>
OKAMOTO'S / Last Dinosaurs / ALI / Age Factory
プロフィール
OKAMOTO'S(オカモトズ)
オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)からなる東京都出身の4人組ロックバンド。2010年、日本人男子最年少の若さでアメリカの音楽フェス「SXSW2010」に出演し、海外での活動も積極的に行う。2010年5月に1stアルバム「10'S」でデビュー。2019年に結成10周年イヤーを迎え、6月には自身初の東京・日本武道館ワンマンライブを成功させる。2021年は9月に9枚目のフルアルバム「KNO WHERE」をリリースし、全国16カ所18公演を回るライブハウスツアー「OKAMOTO'S LIVE TOUR 2021"KNO WHERE"」を開催。2022年、7月に企画ライブ「90'S TOKYO BOYS IN HALL SPECIAL ~アフタースクール~」を行った。2022年9月からは対バンツアー「OKAMOTO'S tourw/ 2022 ~ウェルカム マイ フレンズ~」を開催する。関ジャニ∞や菅田将暉などさまざまなアーティストのプロデュースや楽曲制作、映画やドラマの劇伴制作も行い、メンバー個々でプロデュースワークやDJ活動なども行っている。
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