ナタリー PowerPush - THE BACK HORN

4人が歌う希望

山田将司(Vo)&岡峰光舟(B)インタビュー

今歌うべきTHE BACK HORNとは?

──菅波さんから、まずはそれぞれ曲を持ち寄ろうという呼び掛けがあったらしいですね。

山田将司(Vo) 次の新シングルをどうしようかって話になって、自分がこれぞTHE BACK HORNだと思う曲を作ってこようと。みんなもスキルアップしてきたし、そういう話になるのは自然な流れでしたね。それぞれが自分のTHE BACK HORN像というのを持っているだろうし。俺は「リヴスコール」がすごく聴き手に寄り添ったアルバムという気がしてたから。そこからどーんと力強く踏み出して、聴き手の背中をバーンと押せるような力強い曲を作りたいと思って「バトルイマ」を作りました。

──それが今歌うべきTHE BACK HORNの曲であると。

左から山田将司(Vo)、岡峰光舟(B)。

山田 俺はそう思いました。

岡峰光舟(B) 俺は「これぞTHE BACK HORN」っていうのをそこまで意識してなくて。なので自分の中のモードで、「聴きたい曲」というのを作ろうと思って。強い、激しいもののほうがTHE BACK HORNらしいけど、自分がやらなくても誰かが持ってくるだろうって思ったし(笑)。そこで今までやってないようなシンプルなんだけど優しいメロディの曲が聴きてえな、作ってみてえなと思って「飛行機雲」を作ったんですけど。

──さっきも菅波くんと松田くんと話してたんですけど、岡峰さんはこういう叙情的な美しい曲を書くんだ、っていう。

岡峰 (笑)。作ってた季節とか時期とかもあると思うんですけけど。3~5月ぐらいの、あったかくなってきて感じた思いとか……そういうのをわりとポロッと自然に曲にできたのが初めてだった感覚はあります。自分としては叙情的な部分を出せるものなら出したかったですけど、なかなか自分からやりたいとは言い出しにくくて。それが今回のタイミングで出せました。

──山田くんは彼の曲を聴いてどうでしたか?

山田 光舟が弾くベースの音とかスタジオで聴いたりしますけど、しっとり系の叙情的なものが好きなのは伝わってきてたから。だから意外ではなかったですね。

──一方で山田くんの書く詞は非常に禍々しいイメージですね。

山田 そのときのモードで……。言いたいことがそれだったり、メロディに歌詞を乗せてるときに出てくるのがそういう言葉だったり。丸裸な気持ちで。でも俺はこれなんだからしょうがねえ!っていう気持ちで歌詞は書きますね。

──人の歌詞を解釈しながら歌うのと、自分の中から絞り出したものを歌うのは違う?

山田 違いますね。自分で歌詞をちゃんと書くようになってから、人の書いた歌詞でも、どういう気持ちで書いたのか、なぜこの言葉を選んだのかとか、そういうことに目が行くようになって。

──どっちが歌いやすいんですか?

山田 うーん(笑)。歌いやすさでいったら、そりゃ自分の書いた歌詞ですけど。テクニカルな部分でも気持ちの部分でも。メロディに歌詞をのっける段階で、自分が歌いやすいように、気持ちを乗せやすいように書いてますからね。ただ歌っててグッとくる部分っていうのは、ただ気持ちいいってだけじゃないから。人が書いた歌詞でも、ちゃんと言いたいことがある歌詞なら気持ちも込められるし。

人が書いた歌詞は自分の言葉ではない

──歌詞に関しては、歌う人が書くことが原則のバンドが多いわけですが、自分の書いた歌詞だけ歌いたいとは思いませんか?

山田 そういう気持ちもありますけどね。人の歌詞を歌って喉枯らしてヘロヘロになってるわけだから、自分がなくなっちゃう感覚は何回もあって。俺はなんのために歌ってるんだと。そういうことはしょっちゅうある……あったわけですよ、ずっと。ツアーになると、1人で自分の身体と向き合いながら、人の言葉で感情すり減らして神経すり減らしていくわけで。楽しいって気持ちがなくなってきた時期もあるし。でも、お客さんをちゃんと見られるようになってから、そういうのが喜びになってきたかもしれない。求めてくれる人がいるから歌いたいと思うし。人の書いた歌詞でも、カラオケのように歌うんじゃなくて、全身全霊を注いで歌ってきてたから。だからこそ伝わったものがあったんだなと。

──人の書いた歌詞でも、長年入り込んで歌っていれば、それはすなわち自分の言葉である、という感覚にはならないですか?

山田将司(Vo)

山田 それはならないですね。自分では生んでないですからね、ゼロから。

──長年一緒にやってきたメンバーの作った言葉であっても距離はある。

山田 うーん、距離はあって当然だと思うし。栄純が作った曲は栄純が作った曲だし、それを俺が歌ってTHE BACK HORNなわけだから。そこで栄純の曲を俺の曲だとは言いたくないですよ。なぜ人の書いた歌詞をこんなにすり減らしながら歌うんだって気持ちと同時に、作った本人もこれだけ書いてきたのになぜ俺が歌うんだって気持ちもあったと思うし。その葛藤の中で各々がTHE BACK HORNとしての役割を全うしてるわけじゃないですか。それでいいなと思ってますけど。

──そうですね。曲を書くときに、山田くんが歌うことを前提として書くわけですよね。何か注意することはあるんですか。

岡峰 技術的なところですよね。この高いところは何回以内に抑えようとか。あとはライブで歌ってるところを想像してますね。音源というよりは、山田が客の前で歌ってる感じを想像して作ってます。

ニューアルバム「暁のファンファーレ」 / 2014年4月9日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / VIZL-657
THE BACK HORN「暁のファンファーレ」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / VIZL-657
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64147
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64147
CD収録曲
  1. 月光
  2. ビリーバーズ
  3. シェイク
  4. バトルイマ
  5. ブランクページ
  6. 飛行機雲
  7. サナギ
  8. コワレモノ
  9. エンドレスイマジン
  10. 幻日
  11. タソカゲ
  12. シンメトリー
  13. ホログラフ
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「バトルイマ」Music Video
  • 「暁のファンファーレ」Making Video
THE BACK HORN(ばっくほーん)

1998年に結成された4人組バンド。2001年にシングル「サニー」をメジャーリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』~リヴスコール~」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」およびシングル「バトルイマ」を発表。2014年4月に通算10枚目のアルバム「暁のファンファーレ」をリリースした。