ナタリー PowerPush - THE BACK HORN

4人が歌う希望

山田将司だから出る統一感

──同じテーマを描くにしても、4人それぞれの作風が本当に違うので面白いですね。しかもそれがちゃんとTHE BACK HORNのアルバムとして、まとまったものになってる。

松田 そうなんですよね。俺は今回、相手が何を言ってるかよりも、表現の仕方にグッときたんですよ。栄純だったら「シンメトリー」の「光の絵筆」とか「ノーミスよりも濃密な人生を」とか。光舟の「飛行機雲」だったら「飛行機雲がはにかんだ」とか、俺だったら1年悩んでも出てこないようなフレーズだし、将司もリズムと歌詞の関係性は歌ってる人にしか出てこない表現だと思う。自分にない感性を持った作家なんだなって今回改めて思いました。

──なるほど。

松田晋二(Dr)

松田 曲とのバランスはあると思うんです。歌詞と曲の混ざり具合。たとえば「月光」は、光舟が作ったコード進行に栄純がメロディと歌詞をつけたんですけど、光舟が作ったコード進行の中で読み取った景色や世界観が言葉に反映されることで、漠然としたイメージがTHE BACK HORNという形になったと思うんですね。「ホログラフ」に関しては、将司の弾き語りの歌が出てきた時点で最初に俺が書いた歌詞も変わったんですよ。最初はゴツゴツしたイメージだったんだけど、もっとメロディに寄り添うような言葉になってきた。将司の歌ってる声に溶け込むような言い回しにすることで、THE BACK HORNの歌として成立したんだと思います。

──お互いの感性が混ざり合うことで完成している。だから作曲者クレジットは「THE BACK HORN」になっている。

松田 そうそう。

──あとはやはり山田くんのボーカルでしょうね。これだけ多様な表現の歌詞をよく歌いこなすなと。決して器用なタイプの歌手じゃないと思うけど。

松田 器用な人だったらまた違ってくるんですかね。

──歌謡曲のうまい人が歌っても、こういう統一感は出ない気がしますね。

松田 うんうん、なるほど。

菅波 将司は思いきり入り込んで、一回イタコみたいになるまで歌い込むらしいんですよ。それで本番は、そういう突き抜けたところで歌うらしいんですよね。自分の言葉なんだか他人の言葉なんだかわからなくなるぐらいのところまで。

松田 かなり自分の中で揉んだうえで歌ってますね。

──一方で岡峰さんは実に叙情的な、美しい歌詞を書きますね。

菅波 うん、すごく面白かった。

松田 もともとそういう面は感じてました。メロディも含め。そういうふんわりした部分とか、情景が思い浮かぶような歌詞を好きなのかなって。それが今回は肝を据えて、俺はこうなんだって確信を持って向かってた感じがします。

──そう考えると最初にコンペ形式で曲を書いてきてもらったのはよかったかもしれないですね。

菅波 お互いをわかるという意味でもよかったかもしれない。

音楽に出てくるところを信じたい

──アルバム作りってバランスを考えることもあるじゃないですか。全体をみて、こういう部分が欠けてるから、こういう曲を書こうとか……。

松田 それやってましたねえ、昔は。

──でも4人が同時に曲を出すことで、そういうバランスを考えることよりも、自分の書きたいものを書いてくるようになる。そうすることでそれぞれの個性が出やすくなったのかもしれない。

菅波栄純(G)

菅波 うん。光舟の中でそういう叙情的な映像みたいなものが広がってるんだなっていうのが、今回かなりわかりましたね。「飛行機雲がはにかんだ」っていうのはぐっときた。

松田 あと「タソカゲ」の「時のいたずらをなぞる」って言い回しが、そんなこと言うようなやつと思ってなかったからさ(笑)。そんな例え方、今までしたことないじゃん!て(笑)。こんな美しいフレーズを書けるんだなって。自分では自覚ないみたいですけど。

菅波 (笑)。でも歌詞ってそういうもんだよね。

──ツアーで何カ月も一緒にいても気付かなかったことが、歌詞の一節でふとわかったりする。それも音楽の面白さかもしれませんね。

松田 うん。普段わからなかった部分が集約されてるのかも。

──THE BACK HORNは違うとは思いますが、例えば人間関係がうまくいってなくても続いてるバンドってそうなんじゃないですか。普段の生活では虫の好かないやつでも、いざ音楽を書いてくるとこんな美しい曲を作ってくるんだ、とか。

松田 どっちかといえば、音楽に出てくるところを信じたいっていうか。

菅波 それはあるよね。

松田 そこで尊敬できれば。

──山田くんは山田くんですごく禍々しい歌詞を書く。

菅波 そうそう。面白いですよねえ。

松田 リズムと言葉の使い方の関係をちゃんと意識してるから生まれてくる歌詞ですよね。やられたなあ、と思いました。自分なりにそこは「リヴスコール」で見えてきた部分だったんですけど、将司に先を越されましたね。

菅波 (笑)。面白いなあ……。

──でもこれを聴く10代がうらやましいですね。10代のうちにこれを聴いて、きっちり影響されてほしいなあ。

菅波 あ、そうですか。

──俺はもうさすがに影響されないけど(笑)。

松田 あははは!(笑)

菅波 でも、めちゃめちゃうれしいなあ、それ……。

左から松田晋二(Dr)、菅波栄純(G)。

ニューアルバム「暁のファンファーレ」 / 2014年4月9日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / VIZL-657
THE BACK HORN「暁のファンファーレ」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / VIZL-657
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64147
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64147
CD収録曲
  1. 月光
  2. ビリーバーズ
  3. シェイク
  4. バトルイマ
  5. ブランクページ
  6. 飛行機雲
  7. サナギ
  8. コワレモノ
  9. エンドレスイマジン
  10. 幻日
  11. タソカゲ
  12. シンメトリー
  13. ホログラフ
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「バトルイマ」Music Video
  • 「暁のファンファーレ」Making Video
THE BACK HORN(ばっくほーん)

1998年に結成された4人組バンド。2001年にシングル「サニー」をメジャーリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』~リヴスコール~」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」およびシングル「バトルイマ」を発表。2014年4月に通算10枚目のアルバム「暁のファンファーレ」をリリースした。