ナタリー PowerPush - THE BACK HORN

4人が歌う希望

菅波栄純(G)&松田晋二(Dr)インタビュー

「リヴスコール」が出発点だった

──この取材はまだアルバム発売前の段階ですが、反響はいかがですか?(※取材は3月中旬に実施)

菅波栄純(G) なんか映画っぽいって言われますね。アルバムで聴くとストーリーを感じるって。自分たちとしてはアルバム全体をイメージするというより、1曲ごとに作り上げていったんで、そういうふうに言われて「そうなんだ、ああよかった!」と。

──アルバムに向けての制作はいつからスタートしたんですか?

左から松田晋二(Dr)、菅波栄純(G)。

菅波 去年の3月、4月ぐらいからかな。コンセプトを掲げて作り始めたわけじゃなかったんですけど、今までと違う始まり方があったんです。自分の提案だったんですけど、メンバーそれぞれがTHE BACK HORNの新たな挑戦だと思える曲とか、自分の中の挑戦をした曲とか、今聴きたいって思える曲とか、そういうはっきりした思いがある曲を持ち寄ろうと。そのために1カ月間、自分の中を掘り下げる時間を持って、それから集まろうと。そこで出てきたのが将司の「バトルイマ」、俺が作った「シンメトリー」、光舟の「飛行機雲」、マツの「ホログラフ」だったんです。そのときに、いいアルバムができるイメージの曲がそろったと思いましたね。

──歌詞のテーマやサウンドのコンセプトは特に決めないで。

菅波 そう。ただ自分の中でポイントになってたのは、「リヴスコール」は到達点じゃなく出発点なんじゃないかと。「リヴスコール」が東日本大震災を受けて作られたこともあって、かなり無我夢中でギリギリのところで完成して。そこで何かが芽生えてるんじゃないかってことを感じたんです。「リヴスコール」で何かが完結したっていうよりは、「リヴスコール」が「THE BACK HORNとはなんなのか」「なんのためにミュージシャンをやっているのか」とか、そういうことを確認するゼロ地点みたいなものだったと思ったんですよね。なのでツアーが終わっても、これで一区切りなんじゃなくて、ツアーを経てそれぞれの中に芽吹いたものを形にしていこうよ、という意味合いの提案だったんですよ。それでできあがってきたそれぞれの曲が、各人の思いをはっきりと形にしたような内容だったんで、「あ、これはアルバムが見えたな」と思いました。

──なるほど。

菅波 そのとき俺は「シンメトリー」を書いたんですけど、俺が「リヴスコール」のあとに聴きたいものとして「どこを切っても光の金太郎飴」みたいなものを作りたかったんです。将司が書いてきた「バトルイマ」は一歩前進するために背中をパーンと押してくれる頼もしい曲で。自分が先導者になってやっていくんだってぐらいの力強い意思表示だったし、光舟は「飛行機雲」で喪失感に寄り添うような優しい情景描写をした。マツの「ホログラフ」は、もともと自分が持っている希望に日常の中で気付くような視点の歌詞だったんですね。4曲ともすごく前向きな、一歩踏み出すための曲になっていた。これが核になって始まっていくんだろうなって思いました。

1人ひとりが作り手になる

──松田さんはそういう提案を受けてどうだったんですか?

松田晋二(Dr) 4人で集まって作るよりも、1人ひとりが作り手としての気持ちとか意志みたいなものを持って、もう一度やり始めるほうがいいんじゃないかって感じました。俺個人としては、THE BACK HORNのイメージとかTHE BACK HORN像みたいなものは、震災が起きて「リヴスコール」ができて、ある意味で生まれ変わったなと思ってて。今まで築き上げてきたTHE BACK HORNの表現が更新されたと思うんです。「リヴスコール」は周りの人の期待に応えるというよりは、俺たちが何をすべきか、THE BACK HORNはどうあるべきか、なぜ音楽を鳴らすかみたいな使命感だけで作り上げていった作品なんですけど、結果として未来の新しいTHE BACK HORN像を作り上げていくスタート地点になったんじゃないかなと。

──なるほど。

松田晋二(Dr)

松田 ただ聴く人には「すごくTHE BACK HORNらしい」と言われたりしたんだけど(笑)。あくまで自分としては、それまでの自分たちが周りに求められているものに対して応えていく、という形を決めすぎているような気がしてたんですよ。その「求められているもの」が、俺たちが想像してる範囲のもので、狭くて決まりきったものになっていたんじゃないかと。でも「リヴスコール」はそういうこととは関係なく、使命感や自分のやるべきことだけに集中してやりきった実感があった。そういう作り方でも、俺たちは自分自身を新しく更新していけるんだなって手応えがあったところで、さっき出た栄純の提案があったんですよ。なので今回はコンセプトをまとめるとか、歌詞のイメージを決めるとか、そういうことがないほうが絶対いいだろうと思いました。

──でも自分たちがやるべきことをやりきったアルバムが、聴き手と乖離せず「THE BACK HORNらしい」と言われたということは、要は自分たちのやってきたことが間違ってなかったってことですよね。自分たちに正直な活動をやってきて、それがちゃんと受け入れられていると。

松田 うん。だから今回は「THE BACK HORNだったら“絶望の淵から這い上がるような一握りの希望”みたいなドラマチックな曲が必要」とか「みんなで熱くたぎらせていこうぜ、みたいな曲があったほうがいいんじゃないか」ってことは一切考えなかった。昔はそういうこととの戦いみたいなこともあったけど、今回は自分の信じるものをやりきって、それをアルバムとして完成させた、という手応えがありますね。

──うん。でもやっぱり「THE BACK HORNらしい」ですよね(笑)。

松田 ですね(笑)。

菅波 いい意味でね(笑)。

ニューアルバム「暁のファンファーレ」 / 2014年4月9日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / VIZL-657
THE BACK HORN「暁のファンファーレ」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / VIZL-657
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64147
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64147
CD収録曲
  1. 月光
  2. ビリーバーズ
  3. シェイク
  4. バトルイマ
  5. ブランクページ
  6. 飛行機雲
  7. サナギ
  8. コワレモノ
  9. エンドレスイマジン
  10. 幻日
  11. タソカゲ
  12. シンメトリー
  13. ホログラフ
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「バトルイマ」Music Video
  • 「暁のファンファーレ」Making Video
THE BACK HORN(ばっくほーん)

1998年に結成された4人組バンド。2001年にシングル「サニー」をメジャーリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』~リヴスコール~」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」およびシングル「バトルイマ」を発表。2014年4月に通算10枚目のアルバム「暁のファンファーレ」をリリースした。