ツヤツヤで味わい深い「CANDY」
──アルバムのラストを飾る10曲目は、通常盤が「迷夢」、初回限定盤Aが「Heartbeats」、初回限定盤Bが「Nocturne」となっています。形態によってエンディングが異なるという演出ですね。
これまであまりなかった形式だし、この提案をスタッフさんからいただいたときは面白いなと思いました。その中でも残り続ける通常盤に僕が作詞作曲した「迷夢」を入れることで、アルバムのエンディングをしっかり表現したいという気持ちがありましたね。「迷夢」に関しては、移動の飛行機の中でメロディが急に浮かんだんですよ。「そこに言葉を付随させるとしたら?」と考えていく中で、霧や幻、何かを求めてさまよい続けるような幻想的な世界観を表したいなと。別れの歌にしたいとも思ったんですが、途中で「別れは次の出会いでもあるな」と気付いて。“出会いと別れ”という言い方はよくあるけど、「迷夢」に関しては“別れと出会い”をベースにして制作しました。時間軸でいうと、森や霧、夢の中で迷い、新たな出会いを見つけるという順番ですね。起承転結というより序破急なんですが、ちゃんと帰結したときは安心しました。
──“別れと出会い”は、そのときの中島さんの心情とも合致していた?
うーん……そうかもしれないですね。楽曲を制作するうえで、心を揺らすことってすごく大切だなと思ったというか。「途中下車」という言葉も、何も考えずに出てきたんですよ。
──初回限定盤Aのボーナストラックには、「CANDY ~Can U be my BABY~(New Vocal Mix 2024)」(Sexy Zone時代のソロ曲の再録バージョン)も収録されています。
とてつもなくいい喉の状態で歌わせていただいたので、悔いはないです! 10年以上前に初めて「CANDY」を録音したときは、「BAD BOYS J」という不良モノのドラマをやっていて、毎日ケンカのシーンばかり撮影していたんですよ(笑)。なので声がガラガラの状態で、当時の「CANDY」の音源をよく聴くと声がガラついているんです。本領発揮できなかったという悔しさが19歳の僕にはあって、そのリベンジを「N / bias」でさせていただきました。ツヤツヤで味わい深い「CANDY」をクリスマスにお届けできることに感謝してます。次に録るのは40歳かな。自分の経年変化を「CANDY」という曲でたどるのも面白そうですよね。
──中島さん自身のリアルな感情、音楽的なスタイルを明確に示したアルバムになりましたね。「N / bias」を作り上げたことで、次の展開も見えてきたのでは?
そうですね。今回のアルバム制作は本当に楽しかったし、いい環境、いいチームでやらせてもらっているなと心から思っていて。今後はチーム全体でさらに刺激的でビッグなチャレンジをしてきたいですね。まずは日本の方々の心の奥底までしっかり届けられるジャパンポップスを中島健人式で作っていきたくて。そのうえで次の目標を考えていきたい。そういう意味で「N / bias」は“エピソード1”なんだと思います。
──中島さんが考えるジャパンポップスは、どのようなイメージなんですか?
いわゆるJ-POPとは違っているかもしれません。ニューミュージックなどの日本独自の文化やエンタメを下敷きにした新しい表現を目指しています。その中で、僕はより言葉を大事にしたいし、そうすることで詩的な表現を深めることができるんじゃないかなと。そしてアニメカルチャー。やぱりアニメの存在はとてつもなく大きいし、中島健人としての寄り添い方を表していけたらなと思ってますね。
前例がないからこそ、新しいものを描けるチャンス
──2025年1月にはソロライブ「KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 “N / bias”」が東京・有明アリーナで開催されます。
一体感のあるライブにしたいと思ってます。アーティストとして、アイドルとしてこちらから一方通行で伝えるライブではなく、相互にしっかりと奏で合える、お客さんがお腹の底から声を出して歌えるステージを作っていきたくて。僕はSTARTO ENTERTAINMENTの中でもかなり変わった道を歩んでる人間だと自分で思ってるし、その道の先にこんなに刺激的で面白い世界があるんだよというのを、ライブを通してファンの皆さんや後輩たちにも伝えられたら理想的ですね。前例がないからこそ新しいものを描けるチャンスだし、ワクワクしかないです。
──2025年の中島健人のビジョンについては?
ヤバいですよ(笑)。ありがたいことにスケジュールはギッチギチだし、どこでどういうふうに次の音楽を作ろうかなって。来年はより多くの人やモノと掛け算していきたいし、日本文化にしっかり着目した表現をしたいんですよね。「コンコルディア / Concordia」という海外ドラマの撮影でローマに行ったとき、共演者の人たちにSexy Zoneの「RIGHT NEXT TO YOU」を聴いてもらったんですよ。すごく盛り上がったし、「今の日本の音楽ってクールだね」と言ってくれて。自分自身もしっかりレベルアップして、海外の現場で流せるような曲を作っていきたいですね。
──期待しています。創造にはインプットも必要だと思いますが、意識して取り入れている情報などはありますか?
旅が好きなんですよね。国外にも友達がいるし、彼らと会って話をしている中で生まれるものもあって。仕事で海外に行かせてもらう機会もけっこうあるので、それぞれの現場が自分の音楽の役作りにつながったらいいなと思っています。数カ月前にニューヨークに行ったんですけど、僕が日本に帰った1週間後に、GEMNの「ファタール」をプレイリストカバーにしたSpotify「Gacha Pop」の広告がタイムズスクエアで放送されたんです。それはすごく大きい経験だったし、中島健人の音楽もそういう大きな場所で展開できるようになりたいですね。
番組情報
スペースシャワーTV「『N / bias』エクスクルーシブ・インタビュー」
2025年1月7日(火)23:30~24:00
スペースシャワーTV 「MVセレクション セルフライナーノーツ」
2025年2月3日(月)22:00~22:30
公演情報
KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 “N / bias”
- 2025年1月17日(金)東京都 有明アリーナ
- 2025年1月18日(土)東京都 有明アリーナ
- 2025年1月19日(日)東京都 有明アリーナ
プロフィール
中島健人(ナカジマケント)
1994年3月13日生まれ、東京都出身。2011年11月にSexy Zoneのメンバーとしてデビュー。2024年3月にグループを卒業。その後キタニタツヤとのユニットGEMNを結成し、7月にテレビアニメ「【推しの子】」第2期のオープニング主題歌「ファタール」を配信リリース。8月にはGEMNとして「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に初出演した。さらに音楽プロジェクト・HITOGOTOを始動し、自身が主演を務めるテレビ東京系ドラマ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の主題歌の歌唱と作詞を担当。10月に主題歌を収録したCDシングル「ヒトゴト feat. Kento Nakajima」をリリースした。12月に中島健人ソロデビューアルバム「N / bias(ノンバイアス)」をソニーミュージックから発表。2025年1月に東京・有明アリーナでコンサート「KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 “N / bias”」を3日間にわたって行う。2月には中島が主演を務め、miletがヒロインを演じる映画「知らないカノジョ」の公開が予定されている。