「スペナタ」#02 三浦大知|新曲のみで構成された7年ぶりオリジナルアルバム「OVER」が生まれるまで

音楽の魅力をテキストで伝える音楽ナタリーと、映像で伝えるスペースシャワーTVがタッグを組み、毎回1組のアーティストを特集する「スペナタ」。この企画では、さまざまなアーティストに合同で取材を行い、音楽ナタリーではインタビューページ、スペシャでは特番という形で紹介している。第2回でフィーチャーするのは、実に7年ぶりとなるオリジナルアルバム「OVER」を発表したばかりの三浦大知。コロナ禍を含むこの7年間における変化、全曲新曲で構成された意欲作が完成に至るまでをじっくり語ってもらった。

取材・文 / 森朋之撮影 / 森好弘

スペースシャワーTVで放送された特番は「スペシャオンデマンド」にて見逃し配信中。

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真っ新な今の三浦大知を

──先日、7年ぶりのオリジナル・アルバム「OVER」がリリースされました。2017年に6thアルバム「HIT」をリリースして以降、2018年3月にベストアルバム「BEST」、7月にコンセプトアルバム「球体」を発表。さらにシングル曲も継続的に発表し、ライブも精力的に行ってきましたが、この7年は大知さんにとってはどんな時間でしたか?

「EXCITE」(2017年発表のシングル)をきっかけにいろんな方に三浦大知の音楽を聴いていただけるようになって。そこからタイアップのお話をいただくことが増えたこともあり、アルバムという形にこだわらず、1曲単位でのリリースが続いたんですよね。例えば映画やドラマの主題歌だったり、JAXAの地球観測衛星(「だいち」シリーズ)のイメージソング「ALOS」だったり。いろんなコラボレーションや関わりの中で作品を作らせてもらえた期間でした。

三浦大知

──「OVER」は既発のシングル曲を収録せず、すべて新曲だけで構成されています。この形を選んだ理由は?

アルバムに既発のシングル曲を入れるとしたら、7曲くらいあったんですよ。シングルが7曲入っていて、新曲が3、4曲くらいの作品をアルバムと呼んでいいのかな?という思いがあって。今は音楽の聴き方も以前とは変わって、サブスクで自分が好きなプレイリストを作って聴く時代じゃないですか。そうなったときにシングルが半分以上を占めているアルバムを出しても、皆さんが作るプレイリストと大差ないのかなと思って。だから、以前とはちょっと違う考え方で作らなくちゃいけないだろうなと漠然と思っていました。

──なるほど。

そんな中で、ちょっと前にドキュメンタリー映像を撮って。コロナ禍を挟んで行ったツアー(「DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2022 COLORLESS」)の映像と、その間のインタビューなどを混ぜた企画だったんですが、それをパッケージするときにシングルコレクション(2018年8月~2023年2月までにリリースされたシングルの表題曲とカップリング曲をコンパイルしたアルバム「SINGLE COLLECTION 2018-2023」)もセットにしたんです。それもあってアルバムはゼロから作れました。オリジナルアルバムとしてはすごく間が空いたので、まっさらな状態で「今の三浦大知の音楽です」と提示したほうが意味があるのかなと思ったんです。

「三浦大知で遊んでみたら、どうなるか」

──アルバムの制作にあたって、全体的なテーマやコンセプトなどはあったんですか?

作品性やジャンルみたいなものは決めてなかったんですけど、「踊りたい」というのはすごくあって。2022年は「燦燦」というバラードをはじめ、“歌を届ける”ことが多かったんです。それを経てのニューアルバムの制作だったので、ダンスが見えるというか、踊りたくなるような楽曲がたくさん詰まった作品にしたいなと。あとは「OVER」というテーマもなんとなくあって。今まで一緒にやったことがないクリエイター、映像作家の方たちと制作することで自分のエリアを広げるようなアルバムが作れたらいいなと思ってました。

──“これまでの自分を超えたい”という思いも?

そうですね。ずっとやってきたことでもあるんですけど、新しい可能性や自分自身の興味とか探求心に従っていきたくて。これも常々思っていることで、三浦大知というプラットフォーム、遊び場みたいなものになりたいんですよ。いろんなクリエイターの人たちに「三浦大知で遊んでみたら、どうなるか」という感じで入ってきてほしいし、自分が気になる方にもどんどんアプローチしていく。それが新しい発見につながるだろうし、けっこう意識していることではありますね。

三浦大知
三浦大知

──今回のアルバムに関しては、その中心に「踊りたい」というモチベーションがあったということですね。

はい。ライブとアルバムがリンクしていく感じも作りたかった。「OVER」ツアー(全国ホールツアー「DAICHI MIURA LIVE TOUR 2023 OVER」)をどうするか考えていたときに、KREVAさんのライブを観たんです。「NO REASON」というツアーで、それが本当に素晴らしくて。とにかく出し惜しみしないライブで、聴きたい曲を全部聴けたし、“全KREVAさんが観れた”という感じだったんです。「自分もこういうライブを作りたいな」と思ったし、そのマインドがアルバムに反映されていった感じもありますね。今、僕は36歳ですけど、正直に言うと、30代になって2、3年くらい経った頃はコロナ禍でいろいろ考えることも増えて、歌とダンスの割合、グラデーションを変えていったほうがいいのかなと思ってたんです。でも、そういうことを考えちゃうと、ガンガン踊れるのに「ダンスをちょっと抑えて、歌のボリュームを増やす」ということになりそうだし、それはもったいないのかなと。KREVAさんのライブを観て「今の三浦大知ができることを全部やり切るほうが美しい」と思ったし、そのときにできることを出し惜しみすることなく全力でやろうというところにシフトしていきました。

──先行配信された「能動」も、パフォーマンスではガッツリ踊ってますよね。

「能動」は1つのメッセージというか、「三浦大知が面白いことをやってるぞ」と感じてもらえたらいいなと思いながら制作しました。トラックを作ってもらったTOMOKO IDAとは世代が近くて、20歳になったばかりの頃からの知り合いで。クラブのイベントで一緒になることもけっこうあったんですけど、当時からトラックメイキングがとても素敵で、いつか一緒に仕事をしたいと思ってたんです。特にTOMOKOが自分の名義で出しているインストが好きで、このタイミングでお願いしてみようと。

三浦大知

──ビートがどんどん変化していく攻めたトラックですよね。

最初は歌モノとしてちゃんとしたトラックを作ってくれたんですよ。Aメロ、Bメロ、サビがある展開で、それもカッコよかったんだけど、「三浦大知の楽曲というより、自分の曲として作ってほしい」とお願いしたら、最終的に“最初から最後まで同じ展開が1回もない”みたいな楽曲になって。歌詞はSOULHEADのTSUGUMIさんとやりとりしながら作らせてもらいました。

──クリエイターとのライティングセッションでは刺激を受けたのでは?

楽しかったですね。TOMOKOとは、ただ“飲んでるだけ”みたいな時期もあったので(笑)、一緒に曲を作れてうれしかったです。ちょうどグラミー賞にノミネートされたり(TOMOKO IDAが参加したタイニーのアルバム「DATA」がグラミー賞の最優秀アーバン・ミュージック・アルバム賞にノミネートされた)、活動がグローバルになっていて。「カッコいいな」と思っていたし、このタイミングで一緒にやれたのはよかったのかなと。