音楽の魅力をテキストで伝える音楽ナタリーと、映像で伝えるスペースシャワーTVがタッグを組み、毎回1組のアーティストをフィーチャーする「スペナタ」。この企画では、さまざまなアーティストに合同で取材を行い、音楽ナタリーではインタビューページ、スペシャでは特番という形で紹介している。
第4回に登場するのは、先日10年ぶりとなるオリジナルアルバム「THANK YOU SO MUCH」をリリースしたばかりのサザンオールスターズの桑田佳祐。今回は特別に、アーティストのインタビューや楽曲に込められたメッセージなどを紹介するSpotify「Liner Voice+」とのコラボレーションも展開し、テキスト、映像、音声の3方向から桑田の言葉をお届け。さまざまな角度から「THANK YOU SO MUCH」、そしてサザンオールスターズの魅力を紐解いていく。
取材・文 / 小栁大輔撮影 / 西槇太一
サザンのツアーがリスナーの“旅”に
──先日、開催中のツアー(「サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025『THANK YOU SO MUCH!!』」)のさいたまスーパーアリーナ公演を拝見しまして。本当に素晴らしかったです。新曲のお客さんへの届き方がとにかく印象的で。
そう言っていただけるのが一番うれしいです。
──ご自身の感触として、今回のツアーはいかがですか?
お客さんがすごく好意的で。古くから応援してくださっている方もいますでしょ? 同年代というかね。そういう方も含めて非常に好意的な印象がありますね。
──サザンのライブですから、お越しになる皆さんが思い切り楽しみにしていらっしゃるわけですが、今回はアルバムリリース前に始まったツアーということで。お客さんの間にも独特の集中感というか、緊張感がありますよね。
実を言いますと2024年のうちにツアーを始めるつもりだったんですけども、アルバムの制作スケジュールが延びてしまって。今年の1月スタートになってしまったんですよ。オリジナルアルバム、それも10年ぶりの作品が延びたことで、我々にとっても緊張があったし、その前にツアーが始まるのはすごく新鮮な感じがあった。お客さんにも何か独特の、「いつもと違うじゃん!」みたいな気持ちが芽生えているのかもしれないですね。
──タイトルも「THANK YOU SO MUCH!!」と待っていた方への思いが込められていますし、それぞれが各々考えながら楽しむツアーだなと感じました。
今回は、ツアータイトルもアルバムタイトルもシンプルですから。そこもお客さんにより響いているのかなあと、今話していて思いました。
──アルバムタイトル、ツアータイトルが発表されたときからひとつのコミュニケーションが生まれているような。
そうかもしれない。
──ライブでは誰もが能動的に楽しんでいる、そういう感じがしましたね。
ああ、なるほど。今のお客様はSNSなんかで互いに連絡を取ったりしてて、我々のツアーそのものが“旅”というんですかね。その旅を楽しまれる、絶好の機会になっているんでしょうね。我々の場合、ありがたいことにファンの方の年代層も広いですから。そういう世代間のつながり、やりとりもできているんだろうなと想像しますね。
アルバムの実態が見え始めたのは
──そんなツアーの真っ最中に10年ぶりのオリジナルアルバムがついに完成しました。ざっくりと聞いてしまいますけれど、今の手応えはいかがですか?
アルバムが完成する前に、ツアーのリハーサルに入ったんです。それを経てツアーが始まるわけなんですけど、ツアーが始まってからもまだ踏ん切り悪くやり直したりしていたんですよね。だから、竹を割ったようにポーンと「やったね!」というのはなくて。
──はい(笑)。
でも、ツアーを回らせていただいて、お客さんのリアクションなんかを見て、「ああ、やっとできたんだなあ」と実感しました。
──お客さんのリアクションが、作った作品の本質を教えてくれる。
本当にね、ありがたいことで。それとまた、ライブに向けていろいろ作り込むじゃないですか。ビジョンに映す映像だとか、ライブならではのアレンジとか。それも相まって、ツアーが始まってからようやくアルバムの実態が自分の中で初めて客観的に把握できたような気がして。新鮮ですよね。楽しいです。
──今回のアルバム「THANK YOU SO MUCH」は、メンバーの皆さんがとても楽しく“サザンをやられている”作品になっていて。その楽しさの理由にも触れていきたいと思います。まず、アルバムの制作とツアーに入る前には、2023年夏の茅ヶ崎でのライブがあったり、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」があったり、いろいろな形でサザンを動かしていく機会がありましたよね。そこで得られた実感も影響しているのかなあと思いました。
それももちろんあります。「茅ヶ崎ライブ」が一昨年ですか。4日間だけだったんですが、リハーサルもツアー1本分くらいやりましたし、アルバムに収録されている新曲も当時2曲披露しましたから。そのときから、「THANK YOU SO MUCH」は始まっていましたね。メンバーもね、サザン5人含めて、サポートメンバーもみんな、「茅ヶ崎」「ロッキン」と同じメンバーで。だから、そういう意味では我々の絆がシェイプアップされて、音楽面、アレンジなんかも積み上げることができた。それに「茅ヶ崎」のオーディエンスと「ロッキン」のオーディエンスは違いましたので。いろんなことを経験させてもらったというんですかね。「ロッキン」にはほかの出演者もいらっしゃって、その方々を観にきたお客さんもいらっしゃる。だから、その中で盛り上がったのはすごく楽しかったし、ちょっと自信が生まれましたね。
──なるほど、なるほど。
うん。「茅ヶ崎」だけだったら、もしかすると身内の感覚から抜け出せなかったかもしれないけど、「ロッキン」で自信に変えてもらった。我々もツアーが楽しみになった感じがありましたね。
──今のサザンは、とても安心して躍動していますよね。
あとはやっぱりね、歳というか。図々しくなった。
──ははははは!
我々の年齢になると、お客さんもスタッフも含めて、できないことはできないし。「もうバレてるんだろうなあ」みたいな瞬間があるんです(笑)。それが、いい意味で楽になるのもありますね。気取らず、ぶっちゃけてやれるというかね。
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