家入レオが語る「コードギアス 復活のルルーシュ」|削ぎ落とされた“核”で表現した「コードギアス」の世界

2006年のテレビアニメ放送開始から、幅広い層の熱狂的な支持を集める「コードギアス」シリーズ。マンガ、ゲーム、小説とさまざまなメディアミックスが展開される同シリーズの完全新作映画「コードギアス 復活のルルーシュ」が2月9日に公開される。

ナタリーでは映画の公開を記念し、音楽、映画、お笑い、コミックとジャンルを横断して特集を展開していく。音楽ナタリーでは映画の主題歌「この世界で」を歌う家入レオにインタビューを行い、「コードギアス」の魅力を語ってもらった。

取材・文 / 内田正樹

「この曲のほうが絶対にハマると思います」

──「コードギアス」シリーズは以前からご存知でしたか?

有名なシリーズなので知っていたんですが、実は今回の主題歌のお話をいただくまで、ちゃんと観たことはなかったんです。ただ、友人や知人との話題にはよく上がっていた作品だったので、それこそ、「今度の映画、主題歌とか誰になるんだろうね?」なんて友達が私に話していたその何週間かあとにお話が来たのでびっくりしました(笑)。

──なんという偶然が。

そうなんですよ。だから、「え? 私?」ってなって。

──主題歌を担当するにあたって、本作「コードギアス 復活のルルーシュ」を観た感想は?

「コードギアス 反逆のルルーシュI 興道」より。

スケール感がすごかったですね。いろいろな兵器を駆使した戦い方があるし、“ギアス”(※能力や発動条件が異なる謎の力。主人公ルルーシュは他人に自分の命令を強制できる力)という行為を通じて、人間として大切にすべきことへのメッセージも詰まっていて。絶妙なバランスで成り立っている作品だと感じました。

──前回、音楽ナタリーでeddaさんと対談された際、映画やドラマはハッピーエンディングよりもバッドエンディング系の物語に惹かれると話されていましたよね(参照:家入レオ×edda対談)。そういう家入さんには、シリアスな物語性を持つ「コードギアス」シリーズは、ある意味、相性のいいシリーズなのかな?と思いましたが。

確かに!

──主題歌の「この世界で」は、作詞、作曲、編曲に尾崎雄貴さん(Bird Bear Hare and Fish、ex. Galileo Galilei)を迎えた楽曲です。制作はどのような流れで進行したのでしょうか?

尾崎さんには前回のアルバム(「TIME」)で楽曲を提供していただいて。そこからお互いのライブに足を運んだり、特にリリースとは関係なくメロディと歌詞の素となるような音や言葉の断片をやりとりするような交流が続いていたんです。そこに今回の主題歌のお話が来て。制作途中の段階の本編映像を観てみたら、物語が持つ静と動の先の空虚さのようなものが、尾崎さんからいただいていた楽曲の断片とリンクすると感じたので、彼にその思いを伝えたんです。ちょうど尾崎さんとは、これからの私がどういう音楽をやっていくと面白いのかといった会話も交わしていたので。

──つまりにこの曲の断片であり原石となるパーツが、オファー以前からすでに存在していた?

はい。でも、この映画がなかったら、多分この完成形にはブラッシュアップされていなかったと思います。実は制作サイドの方々からは、私のこれまでの楽曲を聴いてくださったうえで、「こういう曲が欲しいです」という具体的なご希望をいただいていたんです。でも、「それよりもこの曲のほうが絶対にハマると思います」と言って、「この世界で」を聴いてもらったんです。だから、たぶん、当初に制作サイドの皆さんが想定されていた感じの曲ではなかったはずなんですね。でもいいリアクションをいただけて。「間違っていなかった。よかったな」と思いました。

削ぎ落とせるだけ削ぎ落して核だけで勝負

──楽曲制作にあたって意識したポイントは?

映画を観て、まず今回の主題歌には「説明的な要素は一切いらないな」と思いました。すでに圧倒的な存在感のあるシリーズですし、「コードギアス」というタイトルからも、今回の物語からもちゃんとシリーズの歴史や多くのメッセージが十二分に伝わると感じ取れたので。あの、人って自分に自信がないときほど、たくさんしゃべりがちになることがありますよね。

──確かにそうですね。

自信があると、もうただそこに在るだけで多くが伝わるものがある。今回の「コードギアス 復活のルルーシュ」はそんな作品だと思ったので、アレンジも決して派手にせず、むしろ削ぎ落とせるだけ削ぎ落して、核だけで勝負しようと思いました。あと最近、私から尾崎さんに、「シーアやサム・スミス、アデルといったアーティストが今やっているような音楽を私は日本でやりたいんだ」といった話をしていたので、尾崎さんも叫ぶようなメロディや、私の声の特徴を生かしてくれるような要素を曲に落とし込んでくださって。

「コードギアス 復活のルルーシュ」のワンシーン。

──それは個人的に感じました。実は、「コードギアス 復活のルルーシュ」を観て「この世界で」を聴いたとき、映画「007 スカイフォール」におけるアデルの主題歌「スカイフォール」を思い出したんです。両者は歌詞の内容やベクトルこそ異なりますが、いずれも本編冒頭で流れて、物語の方向性を暗示しつつ、また同時に物語全体を包み込んでいるようなスタンスの曲だったので。

ありがとうございます。自分で言うのもなんですけど、いいですよね?(笑) 本編冒頭で「この世界で」が流れてきたとき、自分でも「わっ」とうれしくなりました。尾崎さんの楽曲にも率直に感動したし、映画制作サイドの方々の熱い思いにも心を打たれたし。必然なのか偶然なのかはわからないけれど、いろいろなタイミングが重なって、今この歌を歌えているんだと思います。私、映画の主題歌って今回が初めてなんですね。そんな大切な歌への思いが、制作を進めるうちに何十倍にも膨らんでいった。私にとってそれはとても幸せなことでした。

──ちょっと話題が映画から離れますが、家入さんは前作シングル「もし君を許せたら」と、今回の「この世界で」という2作のシングル曲において、より新しいアプローチを模索しているように映るのですが、家入さん自身そういった意識はありますか?

「コードギアス 復活のルルーシュ」よりゼロ。

それが自分では逆なんですよ。この2作のシングルは、自分の中では、新しい境地に一歩踏み出しているというよりも、本来の自分の魂の在りどころというか、原点に戻っているような気分なんです。「この世界で」を聴いたときも、「私、もっと自分の『歌いたい』という気持ちを信じてあげてもいいんだな」と思えたんです。なので、どんどん自分がシンプルになってきているという意識ですね。

──「この世界で」だけじゃなく、自分自身も削ぎ落としていくモードにある?

はい。それこそアルバム「20」の頃までは、「10代でデビューした家入レオですが、こういう私も、こんな私もいるんですよ?」というプレゼンみたいな気持ちもあって楽曲をリリースしていた。それによって「楽曲=私の全人格」みたいに見られているように感じたので、「いやいやポップな私もいるんですよ?」と伝えたくて「WE」というアルバムを作ったんですね。あのとき、当時のフラストレーションをある程度まで清算できたことで、「こういう私を届けたい」と思って作っているうちはまだまだ浅いんだなと気付いたんです。歌って出てきたものが、すべて本当の私に見えることが理想で。そこで初めて多くのリスナーの方々に伝わる表現に到達したことになるんじゃないのかなって。で、最近は自分は「Why」を歌うことが似合う人なのかなと思っていて……。

──「Why」ですか?

歌を通してリスナーに「なぜ?」と尋ねて、考えてもらう行為が似合うアーティストというか。「もし君を許せたら」の歌詞もそうですし、尋ねたり叫ぶような行為が似合うのかもしれないと気が付いて。

家入レオ

──「この世界で」もそういう曲だと言えますね。

そうなんです。ここ最近の私はより普遍的なものより、リスナーの皆さんの物語の背景になれるような、多くの方が自分の記憶を託せるような曲をテーマに制作をしてきたんですね。でもこれからは、“家入レオ劇場”じゃないけれど、より私だから求められている、私にしか歌えないことを歌っていきたいと思って。「この世界で」は、そうした思いを尾崎さんに伝えたことで生まれた1曲だったんです。