松任谷由実のデビュー45周年を記念した3枚組ベストアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」が4月11日にリリースされる。この作品は、CDセールス100万枚を突破したデビュー40周年記念ベスト「日本の恋と、ユーミンと。」に続く“ベストアルバム2部作”の完結編として発売されるもの。音楽ナタリーではユーミン自身が“今の時代にこそ聴いてほしい45曲”をテーマに選曲した3枚組ベストの魅力を、レビューと本作を聴いた16人のアーティストが選ぶフェイバリットソングから紐解いていく。
文 / 森朋之
「日本の恋と、ユーミンと。」から5年、
ベストアルバム2部作完結
ミリオンセールスを記録した「日本の恋と、ユーミンと。」の発売から5年。松任谷由実から新たなベストアルバムが届けられる。デビュー45周年を記念した「ユーミンからの、恋のうた。」だ。“ベストアルバム2部作”の完結編となる本作では、“今の時代にこそ聴いてほしい45曲”をテーマにユーミン自身が選曲を手がけた。DISC 1「Pure Eyes 純粋さを、捨てない。」、DISC 2「Urban Cowgirl “私”で、生きてゆく。」、DISC 3「Mystic Journey 旅を、やめない。」によって構成され、ユーミンの音楽性と精神性を余すことなく堪能できるアイテムに仕上がっている。
デビュー40周年を記念した「日本の恋と、ユーミンと。」は人気曲、知名度の高い曲を集約したベストだった。ユーミン自身は選曲に参加しておらず、収録曲は歴代のスタッフ、レコード会社の女性社員などの意見を集めながら決定。「やさしさに包まれたなら」「守ってあげたい」「時をかける少女」(DISC 1)、「あの日にかえりたい」「中央フリーウェイ」「翳りゆく部屋」(DISC 2)、「真夏の夜の夢」「春よ、来い」「ひこうき雲」(DISC 3)など、彼女のキャリアを象徴する代表曲、ヒット曲が網羅され、日本を代表するポップスクリエイターとしての存在感を改めて体感することができる作品となった。本作がオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得したことにより、彼女は1970年代から2010年代にかけての史上初となる5つの年代での首位を達成。さらにソロアーティスト / 女性アーティストとして初めてアルバム総売り上げ3000万枚を突破するなど、セールスランキングでも数多くの記録を樹立した。同アルバムは現在もロングセールスを続けていて、若いリスナーにユーミンの音楽が浸透していることも大きな業績だろう。
「ユーミンからの、恋のうた。」へとつながった
自己最長、最多本数ツアー
その後、2016年11月には通算38作目となるオリジナルアルバム「宇宙図書館」がリリースされた。オリコン週間 CDアルバムランキング初登場1位を獲得した本作を携えた全国ツアーは、10カ月にわたり42都市80公演が行われるという自己最長、最多本数の公演となった(参照:松任谷由実、約50名の“共に戦い続けた仲間たち”と旅した自己最多80公演のツアー終幕)。「時間」「普遍性」「ポップ」をテーマに掲げたアルバムの世界観を壮大なエンタテインメントへと昇華したこのツアーは、ユーミンが新たなフェーズに入っていることをはっきりと証明していた。1970年代から2010年代に至る幅広い年代の楽曲を交えながら、時間と空間を超えた音楽の旅を繰り広げ、普遍的なメッセージを伝える。「宇宙図書館」で示されたコンセプトは、45周年を記念したベストアルバム「ユーミンからの、恋のうた。」に確実につながっている。
ユーミンが掲げた
“生きていくために一番大切”な3つのテーマ
「Pure Eyes 純粋さを、捨てない。」「Urban Cowgirl “私”で、生きてゆく。」「Mystic Journey 旅を、やめない。」という3つのテーマに沿ってユーミン自身が厳選した45曲で構成された「ユーミンからの、恋のうた。」。本作のリリースにあたって彼女は、こんなメッセージを発している。
「人は希望がないと、生きる力が衰えていきます。みるみるうちに。だから、こんなアルバムを届けようと思いました。45年の間につくった、600余りの歌のなかから、いま、皆さんに聴いてほしい45曲を選びました。この歌たちは、人の営みの美しさと切なさ、この世の尊さと儚さの“讃美歌”だと思っています」
2000年代に入ってから、世界の様相は大きく変わった。異なる価値観、歴史観がぶつかり合い、憎しみの連鎖は止まることなく、社会は分断されてしまった。そんな状況を踏まえ、ユーミンは“生きていくために一番大切なこと”として、この3つのテーマを掲げたのだ。
「純粋さを捨てないこと」「“私”で生きていくこと」「旅をやめないこと」。
1972年のデビュー以来、常に時代の空気を反映させながら、音楽を通してリスナーの気持ちに寄り添い、鼓舞し、理想のビジョンを描いてきたユーミン。「ユーミンからの、恋の歌。」に収められた45曲は彼女からのメッセージそのものであり、これからの時代を前向きに生きていくためのプレイリストとして捉えることもできる。このベストに収められた楽曲は、時代を超え、多くのリスナーの人生を彩ってくれるはずだ。
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「ユーミンからの、恋のうた。」DISC 1~3レビュー
- 松任谷由実「松任谷由実45周年記念ベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』」
- 2018年4月11日発売 / EMI RECORDS
-
初回限定盤A
[CD3枚組+Blu-ray Disc]
4860円 / UPCH-29291 -
初回限定盤B
[CD3枚組+DVD]
4320円 / UPCH-29292 -
通常盤
[CD3枚組]
3672円 / UPCH-20479~81
- CD収録曲
-
DISC 1 Pure Eyes
- 瞳を閉じて
- ジャコビニ彗星の日
- スラバヤ通りの妹へ
- 雨の街を
- 緑の町に舞い降りて
- セシルの週末
- September Blue Moon
- まずはどこへ行こう
- ただわけもなく
- 海に来て
- Summer Junction
- きっと言える
- Midnight Scarecrow
- Autumn Park
- 雪だより
DISC 2 Urban Cowgirl
- ふってあげる
- 思い出に間にあいたくて
- ひとつの恋が終るとき
- もう愛は始まらない
- TUXEDO RAIN
- 心ほどいて
- 街角のペシミスト
- NIGHT WALKER
- Nobody Else
- 夕涼み
- 雨のステイション
- 幸せはあなたへの復讐
- Cowgirl Blues
- オールマイティ
- フォーカス
DISC 3 Mystic Journey
- 満月のフォーチュン
- 破れた恋の繕し方教えます
- 砂の惑星
- 朝陽の中で微笑んで
- 輪舞曲
- ツバメのように
- シャンソン
- 霧の中の影
- AVALON
- BABYLON
- きみなき世界
- Man in the Moon
- SATURDAY NIGHT ZOMBIES
- 無限の中の一度
- Joly
- 松任谷由実ベストアルバムツアー
「45年分の、恋のうた。」 -
- 2018年9月22日(土)岩手県 盛岡タカヤアリーナ
- 2018年9月23日(日・祝)岩手県 盛岡タカヤアリーナ
- 2018年10月6日(土)兵庫県 ワールド記念ホール
- 2018年10月7日(日)兵庫県 ワールド記念ホール
- 2018年10月13日(土)大阪府 大阪城ホール
- 2018年10月14日(日)大阪府 大阪城ホール
- 2018年10月18日(木)広島県 広島サンプラザ ホール
- 2018年10月19日(金)広島県 広島サンプラザ ホール
- 2018年11月17日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2018年11月18日(日)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2018年11月23日(金・祝)静岡県 エコパアリーナ
- 2018年11月24日(土)静岡県 エコパアリーナ
- 2018年11月28日(水)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
- 2018年11月29日(木)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
- 2018年12月19日(水)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2018年12月26日(水)愛知県 日本ガイシホール
- 2018年12月27日(木)愛知県 日本ガイシホール
- 2019年3月6日(水)東京都 日本武道館
- 2019年3月7日(木)東京都 日本武道館
- 2019年3月9日(土)東京都 日本武道館
- 2019年3月10日(日)東京都 日本武道館
- 2019年3月12日(火)東京都 日本武道館
- 2019年3月13日(水)東京都 日本武道館
- 2019年3月17日(日)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
- 2019年3月23日(土)福井県 サンドーム福井
- 2019年3月30日(土)福岡県 マリンメッセ福岡
- 2019年3月31日(日)福岡県 マリンメッセ福岡
- 2019年4月6日(土)神奈川県 横浜アリーナ
- 2019年4月7日(日)神奈川県 横浜アリーナ
- 松任谷由実(マツトウヤユミ)
- 1954年生まれ、東京出身の女性シンガーソングライター。1971年に作曲家としてプロデューを果たし、翌1972年に荒井由実として歌手デビューシングル「返事はいらない」をリリースする。1973年に1stアルバム「ひこうき雲」を発表し、翌年から本格的なステージ活動を開始。「あの日へかえりたい」をはじめとする、数々のヒット曲を連発する。1976年にアレンジャーの松任谷正隆と結婚してからは、松任谷由実として活躍。1970年代から2010年代にかけての史上初となる5つの年代でのアルバム売上首位を達成するなど、数多くの記録を樹立する。2016年には38枚目となるオリジナルアルバム「宇宙図書館」をリリースし、翌2017年9月まで自己最長、最多本数となる42都市80公演の全国ツアーを行った。また近年は東京・帝国劇場のコラボレーションによる舞台「ユーミン×帝劇」を上演するなど、さまざまな方面で話題を集めている。