家入レオが語る「コードギアス 復活のルルーシュ」|削ぎ落とされた“核”で表現した「コードギアス」の世界

「こういうふうに曲を感じてほしい」と思っている時点で出しちゃいけない

──互いに引き合って、いいタイミングで家入さんに合った作品からオファーが舞い込んだのかもしれませんね。「コードギアス 復活のルルーシュ」の登場人物は、各々が自分の正義のもとに行動していて、その過程で生じる悲痛な感情の中には「自分たちはなぜこんな戦いに身を投じているのか」という思いがあって。それは家入さんが歌の中で問いかけている「Why」に通じるところがあるような気がします。

そう思います。この作品を観て、戦争をやりたくてやっている人なんてたぶんほんの少数で多くの人々は、自分にとっての平和を求めて戦争をしているんだろうなと感じたんです。「この世界で」はそうした人間の矛盾を包み込むような曲になってくれた気がします。歌入れのときも、そんな部分を心にずしっと感じながら歌えたんです。今回、初めて尾崎さんはボーカルディレクションにも参加してくださったんですよ。尾崎さんは北海道在住なのでこれまでのやりとりは遠隔操作が多かったんですが、今回は念願が叶って。

──尾崎さんのボーカルディレクションはどのようなものでしたか?

家入レオ

今までの歌い方とは違うものでしたね。私は新しい楽曲を歌う前に、まず自分の中でその曲のバックボーンを作るんです。説得力がないとみんなに伝えられないし、嘘になっちゃうから。歌詞を立体的に表現するために、歌の中の人物がどういう生まれで、どういう日常を送っているのかと、深く潜って探りに行くんです。あとはこのメロディや音階だったら、ここはあえて引いた方がいいかなとか、リズム通りじゃなくてワンテンポだけ遅らせてみようといった技術面の補足をレコーディングまでにやっておいて、レコーディングではその全部を横に置いて無心で歌う。それが自分の1つの流れだったんですが、今回、尾崎さんから「じゃあ次はただ寒いということだけを感じながら歌ってください」と言われた場面があって、それにかなりグッときました。さっきの話に戻っちゃいますけど、「自分がこれこれこういうふうに曲を感じてほしい」と考えている時点で、それはまだ外に出しちゃいけないものなんだなと思いました。もちろん、こう自分を見せたいという自覚的な思考回路でちゃんと成立するタイプのアーティストさんもいらっしゃるし、それは1つの素晴らしい才能なんですけど、私は多分そっちのタイプではない気がして。歌って、常に自分を磨いていないと全部出ちゃうんだなって。面白い発見の多いレコーディングでしたね。

───今、家入さんはアーティストとして、とても興味深く、大事な時期を迎えているのかもしれませんね。

自分でもそう感じています。

私、スザクが全然ダメなんですよ(笑)

──ところで「コードギアス」シリーズではさまざまなタイプのギアスが登場しますが、もし家入さんがギアスを1つ授かることができるとしたら、どんな能力のギアスがいいですか?

えー!? それって魔法が使えるのと同じですよね……じゃあ、常に自分が幸せな気分でいられるようなギアスが欲しい。

──人じゃなくて自分にかけるんですか?

「コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道」より、ルルーシュ。

そうそう(笑)。それこそ「何かを持ってるやつはいつか失くすんじゃないかとビクついてるし、何も持ってないやつは永遠に何も持てないんじゃないんじゃないかと心配してる」という村上春樹さんの言葉があるんですけど、人って何も持っていなくてもこれだけ孤独なのに、自分の言うことを全部聞いてくれるようなギアスなんて持ったらもっと孤独を増やすことになるような気がしちゃうから。人を思いのままに操る力なんて、賢くなきゃ扱えないから。そんなギアスを私が持っていても、悲劇を生む気しかしないので辞退します。人の考えていることは目に表れるなんてよく聞きますけど、それがアニメでしっかりと表現されているあたりも、この映画のすごいところだと思います。

──ちなみに「コードギアス」シリーズの中で印象的なキャラクターは?

「コードギアス 復活のルルーシュ」よりスザク。

これ、あんまり言うとファンの方に怒られちゃいますけど、私、スザクが全然ダメなんですよ(笑)。それこそテレビシリーズで、せっかくルルーシュが命を懸けて助けたのに「僕は裁かれるべきだ」と言って、自分からブリタニア側に戻るじゃないですか。それにびっくりして。私の中にも嘘はつきたくないという心理はあるけれど、すべてにおいて正直な人というのも、なんだか私は共感ができなくて……なので、私はダントツでルルーシュが好きです(笑)。

──では「コードギアス 復活のルルーシュ」の主題歌担当アーティストとして、劇場へ足を運んでくれる皆さんへメッセージをお願いします。

情熱を持って作品を制作されている方々がいらして、それを待ち望んでいる方々がいらっしゃる。この絶大な支持を得ている「コードギアス」シリーズに、今回の映画で初めて参加させていただくにあたって、私なりにどうすれば今までの「コードギアス」ファンの方々の思いに応えられるのかと考えました。でも結果として、私は私の歌を全力でまっとうすることこそが、それにつながるんじゃないかという答えにたどり着きました。シンプルに「本気で歌う」ことだけで勝負しようと決めました。「コードギアス」歴の浅い私が語れることなんてないと思いますが、歴が浅いからこそ、客観的に見えてきた景色もあったので。そうした思いが劇場で届くことを祈っています。

──きっと届くと思いますよ。

そう願います。それにしても声優の方々、皆さんすごいですけど、シャムナ役の戸田恵子さん、素晴らし過ぎました……。

「コードギアス 復活のルルーシュ」よりシャムナ。

──流石の迫力でしたね。

声の説得力がものすごいですよね。私も声優をやってみたいので、いつかそちらのオファーも来たらうれしいです。

──そうなんですか?

はい、やってみたいです。ナレーションは何度かやらせていただいたんですが、声優はまだなくて。女の子じゃなくて少年の声とかやってみたい! 性別を超えてみたいですね!

家入レオ(イエイリレオ)
1994年生まれ、福岡県出身の女性アーティスト。幼い頃から音楽に親しむ。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞。以降もコンスタントにリリースを重ね、2016年7月に4thアルバム「WE」を発表した。デビュー5周年を迎えた2017年4月に初の東京・日本武道館公演を開催し、2018年2月にはアルバム「TIME」をリリースした。2018年8月にフジテレビ系月9ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」の主題歌「もし君を許せたら」を収録した同名シングルを発表。2019年1月に映画「コードギアス 復活のルルーシュ」の主題歌「この世界で」を収めたシングルをリリースした。

「コードギアス 復活のルルーシュ」特集