OKAMOTO'Sが8月26日に新作音源「Welcome My Friend」をリリースした。
4月のベストアルバム「10'S BEST」リリース(参照:OKAMOTO'S「10'S BEST」インタビュー)を経て発表された本作には、アニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のエンディングテーマとして海外でも人気を集める表題曲「Welcome My Friend」や黒木瞳監督の映画「十二単衣を着た悪魔」の主題歌「History」など6曲を収録。全曲をオカモトショウ(Vo)とオカモトコウキ(G)の2人で共作しており、アメリカンロックを彷彿とさせるサウンドで統一された作品となっている。音楽ナタリーではメンバー全員にインタビューを行い、コロナ禍の中で4人が考えたことや今回の作品でバンドが目指したものを聞いた。
取材・文 / 宇野維正 撮影 / 斎藤大嗣
これが去年だったら俺らも武道館に立てなかった
──コロナ禍真っ最中の4月にベスト盤「10'S BEST」をリリースしたあと、間髪入れずに新しい作品をリリースするという。こんなタイミングであっても「OKAMOTO'Sは止まらない」という感じですね。
オカモトコウキ(G) テレビアニメと映画のタイアップの曲を作ってて、それをどうリリースしようかって考えてて。その流れでスタジオに入ったんだよね?
オカモトショウ(Vo) そう。ベスト盤がリリースされる直前、3月の終わりにスタジオに入って。まだプリプロのつもりだったんですけど、みんな盛り上がって、そこで「Riot」「Misty」「THE BEAR」と3曲も録れちゃって。
オカモトレイジ(Dr) ただ、ちょうどその日の夜に自分は京都でDJの仕事が入ってたんですけど、それはキャンセルさせてもらったんですよ。移動も伴うし、家に帰ったら子供もいるし、あまりにも先が読めなかったんで。
ハマ・オカモト(B) そこから3カ月くらいして、1曲録り残していた「MOTEL」のレコーディングと、オンラインライブ(参照:OKAMOTO'Sが初の無観客配信ライブで人気曲や新曲披露、新作リリースも発表)のリハがあって。その間の3カ月は本当にメンバーにも会わなかったです。バンド結成以来、初めての経験でしたね。
──春以降、あらゆる職種の人がこの新しい状況の中で模索をしているわけですけど、ミュージシャンでも特にバンドの場合は、「そもそもメンバーに会えない」という問題があったわけですよね。
コウキ ずっと家にいたので、曲作りには集中できたんですけどね。でも、やっぱりライブやレコーディングを長いことやってないと、時間が経つごとに「そもそも俺、何してた人だっけ?」って思うようにはなりますよね(笑)。
──コウキくんは、ソロツアーもキャンセルになってしまって。
コウキ そう。東京と京都でのレコ発ライブはやれたんですけど、そのあとに組んでた3月からの弾き語りの全国ツアーは全部キャンセルになって。一度は6月に延期したんですけど、やっぱりダメで。5月から予定していたOKAMOTO'Sのホールツアーもなくなって。それはさすがにショックでしたけどね。
ショウ でも、日本だけじゃなくて、全世界がそうなっちゃってるわけだから、もう匙を投げるしかないよね。ヘコんでても仕方ないっていうか。
コウキ メンバーに会わないのは、別にそれでつらいとかはないんですけど(笑)、単純にこんなに一緒に音を出してない時期が続いたことがなかったから、それがちょっと心配ではありましたね。再び会ったときに、勘が鈍ってないかって。
ハマ まあそんなことはなかったけどね(笑)。
レイジ もう親族みたいなもんだから。2、3年だったらわからないけど、3カ月とかだったら大丈夫(笑)。Zoomで公開ミーティングみたいなこともやってたし。
──あ、観ました観ました。何回かやってましたよね。
レイジ ただ、今まで築いてきた絆がコロナで崩れるようなことはないけど、この状況が続いたら、新しい出会いっていうのは確実になくなっていきますよね。それはやっぱり心配ですね。シーンの広がりとかトレンドとかもなくなっていくだろうし、コロナが明けたあとに自分がDJをするときに、何をかけていいのかわからないようなところはありますね。
──OKAMOTO'Sはここまで10年やってきて、ちょうどベスト盤も出したばかりで、新曲を待ってくれているファンベースもあってという、ここまで築いてきたものがあるからいいですけど、世に出たばかりのミュージシャンにとっては、この状況はかなりハードですよね。
ショウ 本当にそれは思いました。「今年が勝負だ」みたいなバンドだったら、今の俺らとは比にならないくらい食らってたと思う。
コウキ これが去年だったら、俺らも武道館ができなかったわけだしね。
レイジ それどころか、状況が何日かズレてたらベスト盤だって延期になってたかもしれない。
今ってバンドでグッとくる音楽があまりないなって
──そこで滞らなかったのも大きいですよね。だからこそ、こうして10周年のベスト盤を経た新しいOKAMOTO'Sの音にもすぐに触れることができたわけで。新作の「Welcome My Friend」は、音楽的にはアメリカンロック──Red Hot Chili PeppersやNirvanaといったオルタナティブロックだけじゃなく、それこそThe Eaglesにまで接近するようなサウンドという意味で、かなり統一感のある作品になっていると思ったんです。ただ、これがOKAMOTO'Sにとって完全に次のフェーズなのかというところがまだわからなくて。
ショウ ここ数年、ストリーミングサービスで新しい作品を追っかけるようになってよく思うのは、今って世界的に見てもバンドの音楽でグッとくる音楽があまりないなってことで。でも、自分が音楽を好きになった最初のきっかけはバンドの音楽だったし、そこでOKAMOTO'Sとしてどんな音楽を鳴らすのがいいのかっていうのを以前よりもよく考えるようになったんですね。1つはっきりしてるのは、古くさい音にはしたくないなってこと。でも、R&Bやヒップホップに接近するのも違う。そんな中で、まだ言語化はうまくできないんですけど、いいところを突けたかなっていうのが今回の作品で。確かにサウンドとしては「何々っぽい」っていうのはあるかもしれないですけど、自分としてはかなりオリジナルなものができたんじゃないって。
──そこに乗っかるという意味でも、あるいはそのカウンターを意識するという意味でも、今や海外だけじゃなくて、国内においてもバンドミュージックのトレンドってなくなってますよね。
ショウ ないですね。本当に。
──そうなると、もう生身でやるしかないって感じですか?
レイジ そう。何の戦略も立てられない。俺ら100%で体当たりするしかない。
ショウ まさに、そんな気持ちですね。何かをフォローしてるわけじゃないし、かといってカウンターでもないし。
──でも、ファンサービス的な作品でもないですよね?
ショウ そう。ただただ音楽として、自分たちにとってフレッシュだと思えることをやるしかないっていう。ただ、言われて気付いたんですけど、それが結果としてアメリカンロック的な作品になったというのは面白いですね。
レイジ 全然気付かなかったけど、確かに全部USだね。
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