OKAMOTO'S|俺たちに手札がなくなったことは一度もない、常に準備はできてる

モッシュピットに飛び込みてえ

──ただ、特定の時期のアメリカンロックじゃなくて、その歴史を縦断したようなサウンドになってるところが興味深いなって。

ハマ・オカモト(B)

ハマ 今の自分たちが聴きたい音楽、やりたい演奏っていうのを具現化していった結果が今回の作品だと思うんですよ。プレイヤーとしては、アプローチの仕方だったり、こういうフレーズを弾きたいだったり、そういうのはもう年々なくなってきていて。実際に、ショウが作ったデモのフレーズを、自分でアレンジするんじゃなくて、そのまま弾くことがすごく増えてきたんです。それはバンド全体についても言えることで。求められているものと、求めているものが一致してきたというか。言葉にするとシンプルになっちゃいますけど、結局のところ「自分たちのやりたいことをやる」っていうのが、リスナーも含めて全員が求めてることなんじゃないかなって。それって当たり前のようで、実は難しいことだと思うんですけど、それがバンドとしてできているのが今のOKAMOTO'Sなんじゃないかなって。

──いやらしい言葉かもしれないですけど、OKAMOTO'Sというブランドが確立されてきたってことなのかな?

ハマ そうですね。自分で言うのは恥ずかしいですけど、唯一無二感っていうのはでてきたかなって。だから何も考えないで演奏しても、それがOKAMOTO'Sの音楽になっていくっていうか。バンドの外で演奏するときは、言っても「よそ行き」なんですよ。自分でも「がんばってるな」って感じがあるんです(笑)。で、そうなってくると、OKAMOTO'Sではナチュラルにやりたいことをやる方向にどんどんなってくるんですよね。僕以外のメンバーもそうだと思う。

──雑念がなくなった?

ハマ 本当にそうです。なんにも考えなくなりましたね。それはある意味、バンドとしての承認欲求的なものが満たされているからかもしれませんね。今回コロナでいろいろ止まったときも、最初にやろうってなったのが、リモートで曲を作ったりすることじゃなくて、4人がしゃべってるだけのZoomをそのまま見せちゃおうっていう。そして、それを観てくれる人がいるっていう、ありがたい状況がある。

──まあ、実際に自分も観ちゃってますしね。

一同 (笑)

──しかも観始めると面白くて、最後まで観ちゃう(笑)。

ハマ きっと何年か前だったら、ああいうことをする自信もなかったと思うんですよ。やっぱり、そこは大きく変わったところかなって。

オカモトレイジ(Dr)

レイジ 今回のコロナで、「バンド最高!」って気持ちが再確認できたんですよね。DJとかいろいろやってきて、全部最高だと思ってやってるんですけど、やっぱりその中でもバンドが最高だなって。もちろん自分でもライブしたいですけど、客としてもライブに行きたいし、モッシュピットに飛び込みてえ、ダイブしてえ、みたいな。そういうバンドを取り巻く空間そのものが最高だなって。最近「サラダデイズ SALAD DAYS」っていう80年代のDCパンクシーンのドキュメンタリー映画を観てても思いましたけど、「ああ、バンドが一番だな」って。

──でも、あの作品で収められているようなステージとフロアが熱狂でグチャグチャになったようなライブハウスの光景って、もはや戻ってくるのかどうかもわからないのが現状ですよね。

レイジ 本当に、もうファンタジーみたいな世界になっちゃいましたよね。でも、だからこそ余計そういう気持ちになるんですよね。

今の俺たちが言う「ヒット曲が欲しい」の意味

──新作「Welcome My Friend」では、ショウくんとコウキくんの作曲、ショウくんの作詞、バンドでの編曲、というソングライティングのやり方がわりと固まったものとして提示されてますよね。

オカモトコウキ(G)

コウキ 実は全曲が共作って、今回がほとんど初めてなんですよ。去年、映画「HELLO WORLD」の劇伴を作るためにショウと一緒に作業をしてきたことが大きかったんですけど(参照:OKAMOTO'S「HELLO WORLD」サウンドトラックインタビュー)、「このやり方でバンドの曲も全然できるね」ってなって。元のアイデアとか全然なくても、ただショウが家に来て、そこで一緒に作っていくっていう。そのやり方が今はすごく面白くて。

レイジ ベスト盤に収録された新曲「Dance to Moonlight」もそうでしたけど、ショウとコウキの間でどんどんできてくる曲をセレクトするのが、自分の役割みたいな感じになっていて。リアルタイムのアンダーグラウンドの動きとかも見つつ、今ならこれがハマるんじゃないかって判断したり。そこにはちょっと、DJ感覚みたいなところもあるかもしれない。

──それぞれ個別にも活動していることもあって、OKAMOTO'Sの活動においては、メンバーそれぞれがエゴから解脱して、全員がそれぞれの役割をもってバンドに奉仕しているような感覚なのかもしれないですね。

レイジ うんうん。

──ただそうなってくると、バンドとしてのハングリー精神みたいなものは、今後は何が拠り所になってくるんでしょう?

レイジ いや、それはもちろんありますよ。俺らがどんなバンドなのかとか、メンバーの名前とか、そういうことは浸透してきた実感がありますけど、やっぱり誰もが知ってるようなヒット曲が欲しいとか。それはずっと俺らの目標ですね。あとは、こうしてコロナで身動きがとれない状況が続いているからこそ、オンラインを通じて海外にも進出したいとか。そもそもは、ツアーでもっと海外に行きたかったんですけどね。

ショウ そうだね。去年は北京と上海でやることができて、もし今年こんなことになってなければ、またいろいろ計画を立ててたんですけど。

──今作の表題曲「Welcome My Friend」はアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のテーマ曲ということもあって、実際、海外からのリアクションも多いですよね。

オカモトショウ(Vo)

ショウ そこは本当にうれしいですね。意識して、歌詞での英語の比重とかも増やしてるし。

レイジ 普通に英語しゃべれるのは武器だよね。

ハマ 10年やってきて、音楽を取り巻く状況もいろいろ変わってきて、YouTubeとかTikTokとか音楽を伝える手段も増えてきて、これまで世間ではいろんな曲が盛り上がったりしてきたわけですけど、「こんなことされちゃったら、もう俺ら出す手札ないわ」って思ったことは一度もないんですよね。そういう謎の自信はずっとあって。それがあるから、こうして続けてこれたんだと思うんです。それを「ハングリーさ」というのかわからないですけど、ずっと、いつ火が付いてもいい、その火種みたいなものを抱えている自覚があって。準備は常にできてるという。だからデビューしたばかりのときに言っていた「ヒット曲が欲しい」っていうのと、今の俺たちが言う「ヒット曲が欲しい」っていうのはちょっと意味が違っていて。

──最後のピースとしての「ヒット曲」みたいな?

ハマ そうです、そうです。俺たちはその準備ができてなくて、急にテレビとかに出るようになってサムいことになるようなバンドではないので。そこに関して、俺だけはずっと自信を持ってたんだけど、ここ数年は3人も気持ちが変わって、足並みがすごくそろってきた感じがあるんです。レイジがDJをやったり、コウキやショウがソロをやってるのも、バンドが盤石な状態だからっていうことが、ちゃんとファンに伝わってると思うし。

──そうじゃなかったら、バンド全員で最上もがさんとクマの耳をつけてCMに出たり(参照:最上もが×OKAMOTO'S、ピンクの耳付けてオカモモズに変身)、菅田将暉さんと曲を出したり(参照:菅田将暉×OKAMOTO'SのトヨタCM曲配信スタート、MVはNasty Men$ahが監督)もできないですよね。

レイジ 本当にそうです。コンビニでソフトクリームを売ってるのって、ミニストップだけじゃないですか。あれって、バイトの教育とか、機械の消毒とか、すごく難しいらしくて、ミニストップだけがそのためのシステム作りをめっちゃ集中してやってきたからできるんですよ。(メンバーに向かって)なんか今のOKAMOTO'Sって、それっぽいよね?

ショウコウキハマ …………。

──うーん、その喩え、自分も今ひとつよくわからないんですけど(苦笑)。

一同 (笑)

OKAMOTO'S