音楽ナタリー PowerPush -OKAMOTO'S

俺らにしかできない5組コラボと5周年

自分たちはRIP SLYMEに近いタイプの集団

──では順番に聞いていくと、1曲目に収録されるのはRIP SLYMEとのナンバー。リップとは、ハマさんが「SLY」にベースで参加して以降(参照:RIP SLYME、ハマ・オカモト参加の「リーガルハイ」主題歌)、交流が密になりましたね。

ハマ そうですね。

──ナタリーで企画したPES&SU×ハマ&レイジ対談では(参照:RIP SLYME「GOLDEN TIME」特集 - RIP SLYME×OKAMOTO'S対談)、レイジさんが「リップみたいな立ち位置になりたい」と話していました。学生時代からファンだったリップと、今回オリジナル曲を制作してみてどうでしたか?

レイジ 普通にめっちゃうれしいっすよ。俺からしたら普通にいるのが信じられないくらいですもん。

ショウ 中学生のハートに戻っちゃってね。

レイジ マジめっちゃ聴いてたから。レコーディングのときも、ILMARIのレコーディングが目の前で行われている……って感じでしたね。

コウキショウハマ ふふふ(笑)。

ショウ 今、超オタクしゃべりでよかった。

レイジ 「行われている」。

ショウ そうそうそうそう(笑)。

──コラボ曲「Wanna?」は、7月21日に東京・新木場STUDIO COASTでのリップ主催イベントで初披露されて(参照:RIP SLYME先輩後輩競演で魅了“真夏のWOW”)。現場で観ていたんですが、リップのファンがものすごくいい反応を示してましたね。

ショウ よかったですよね!

レイジ この曲は、本当に好きだからこそRIP SLYMEのいいところを引き出せたっていうのもあると思うし、なおかつRIP SLYMEに乗っかりすぎてる感じもない。五分五分な割合でお互いの要素が出てるので、めっちゃ気に入ってますね。

ショウ 簡単に言うと、AerosmithとRun-D.M.C.がやった「Walk This Way」みたいなロック×ヒップホップの王道なものを一緒に作りたいなと思っていたんですよ。

──ああ、「Walk This Way」のような雰囲気はありますね。

ショウ RIP SLYMEは1人ひとりキャラがすごく濃くて違うのに、それが集まって集団としてすごいパワーを発揮してるじゃないですか。それにライブにしてもインタビューにしてもRIP SLYMEのエンタテインメントみたいなものがちゃんとある。偉そうな意味じゃなくて、自分たちもそれにすごく近いタイプの集団だなって思うんですよね。だからより近付きたいなと思ったし、そういう人たちとこうして楽曲制作ができてよかったなって思います。

──なるほど。あと、このアルバムの中ではもっともファンク色が強い曲なので、私はベースに注目しながら聴いたりもしました。

ハマ・オカモト(B)

ハマ でも全然難しくないんですよ。たぶんメジャーに来てから一番音数の少ない楽曲になりました。だからライブでもラフに笑ってられる感じで楽しいですね。まあ学校の文化祭などでバンドにコピーしてもらいたいですよ。同じ学年のラップ好きな子とかにRIP SLYMEの役をやってもらって。

コウキ 文化祭でやってほしいね!

ハマ 実はそういう感じを意識したんです。前々から「難しすぎてコピーできない」っていう謎のクレームが僕のTwitterにめちゃくちゃ来ててですね……。

──そうなんですね(笑)。

ハマ 「スコアブックを出してほしい」と。自力でがんばれよっていう話なんですけど(笑)。

「ああ、だからカッコいいんだ、スカパラって」

──東京スカパラダイスオーケストラとの「Heart On Fire」は谷中敦さんが作詞を担当しています。

ハマ ああいう色男じゃないと書けないですよね、こういう世界観。谷中さんの説得力を持ってして成立する文章というか。谷中さんの歌詞は昔から好きで、頼んでみたいと思ってお願いしたんです。

──エネルギッシュでみなぎってる感じが谷中さんらしいなと感じつつ、OKAMOTO'Sにもよく合ってると思いました。内容について何か注文はしたんですか?

ショウ 「燃えろ」っていうサビのフレーズはもとからあったんですけど、そこから先は谷中さんが独自に考えてくれました。それがもうバッチリで。ちょうどこういうジュリー(沢田研二)っぽさというか歌謡曲っぽさが入ってるものを歌ってみたいと思ってたんですよ、タイミング的に。まさかこのアルバムでできるとは思ってなかったんですけど。

──へえ。

ショウ 「ショウくんが一番カッコよく見えるように、すごく振り切って書いたよ」と提案してくれたのがこれでした。谷中さん、普段は(他者に)歌詞を書いてもボーカルディレクションまではしないそうなんですけど、今回は最後までついてくれて、ずっと俺を褒めながらやってくれて(笑)。「よくこれを歌いこなせるね」と言ってくれて。

レイジ 濃い男たちの褒め合い。

──プレーヤーのレコーディングは一発で済んだと聞きました。すごいですね、13人もいるのに。

レイジ そう。楽器を仕込んで「とりあえず1回音決めしようか」みたいな感じだったんですけど、ギターの加藤(隆志)さんが「いや、もうこのまま一発でやっちゃおう」って言って、演奏し終わったら「これキタね」「最高です」「はい、終わりました」みたいな感じでバッチリ録れちゃって。

ショウ スタジオ入って、録音して、録ったテイクを聴いて……全部合わせて10分ぐらいで終わったよね。

コウキ それだけ人数がいていきなり合わせられるっていうのはすごいですよね。ミラクルテイクです、これは。

──そんなふうに一緒に音を合わせてみて、スカパラのすごさってどのように感じましたか?

ハマ 音が太い。

レイジ そうだね。あと見ていてわかったのは、バンド隊とホーン隊の考え方もちょっと違って。バンド隊はわりとリズムが気持ちいいか、気持ちよくないかを重視してるというか。アレンジのときも「ここのキメ、ちょっと気持ちよくない気がするんだけど」って加藤さんが言ってたり。

ハマ 肉体的なんですよね。

レイジ そう。でもホーン隊の皆さんは「でも歌と合ってるラインだから、ここはこれでいいんだよ」みたいな、ちょっと理論的に意見してて。そのうまい感じのバランス。そこにスカパラのシステムが1つあるんだろうなあ、それで続いてきてるんだなあって感じましたね。

ショウ あとから4人で「ああ、だからカッコいいんだ、スカパラって」と話してました。肉体的な部分と理論的な部分の両方があって、たぶん曲によって先陣を切る人がいて、全員が本物のミュージシャンですよね。だからこんなに濃い音楽を、日本や世界のシーンでこの形でやれてる上に、コアなこともポップソングもできる由縁なんだろうなって。

ハマ いや、すごすぎるよ存在として。

コウキレイジ うん。

ハマ ほかの国にもいないと思うんですよね。スカやったりレゲエやったり、シンガー呼んで歌モノも出して、海外に行ったら海賊盤が出てて。こんなふうに攻め続けてるのは本当にすごいって、共演して改めて思いましたね。日本が世界に誇るすごい集団だと思います。

ニューアルバム「VXV」/ 2014年8月27日発売 / アリオラジャパン
「VXV」
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / BVCL-603~4
通常盤 [CD] 2376円 / BVCL-605
CD収録曲
  1. Wanna? / OKAMOTO'S × RIP SLYME
  2. Heart On Fire / OKAMOTO'S × 東京スカパラダイスオーケストラ
  3. Never Mind / OKAMOTO'S × ROY(THE BAWDIES)
  4. 答えはMaybe / OKAMOTO'S × 奥田民生
  5. Family Song / OKAMOTO'S × 黒猫チェルシー
通常盤ボーナストラック
  1. SAD SUNDAY / OKAMOTO'S
初回限定盤DVD収録内容
  • SHIBUYA-AX「Let It V」ツアーファイナルLIVE映像&RECドキュメンタリー映像
OKAMOTO'S(オカモトズ)
OKAMOTO'S

オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)の4人からなるロックバンド。バンド名およびメンバー名は、彼らが敬愛する岡本太郎に由来する。抜群の演奏力とアグレッシブなライブパフォーマンスに定評があり、2010年3月にはアメリカのショーケースイベント「SXSW」に出演。続けて行われた全米ツアーでも高い評価を受けた。次世代のロックシーンを担うホープとして注目を集める中、2010年5月に1stアルバム「10'S」でメジャーデビュー。2011年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '11」に初出演を果たし、10月には初のアジアツアーを開催した。2014年はCDデビュー5周年を掲げ8月27日にRIP SLYME、奥田民生らを迎えてコラボレーションアルバム「VXV」をリリースし、秋にはアニバーサリーライブツアーを行う。ファイナル公演は10月25日に日比谷野外大音楽堂で行う予定。