ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

「Shout to the Walls!」全曲解説 メンバーソロインタビュー

アルバム全曲解説

だてにアルバム4枚作ってこなかった

──今回はアルバムの1曲1曲がとにかく個性が強いので、ぜひ各曲について掘り下げたいなと思って全曲解説を企画しました。前回のインタビューで光村さんが言ってた「ラーメン二郎系アルバム」っていうのが納得できる濃密で振り幅の大きい内容というか。

左から、光村龍哉(Vo, G)、対馬祥太郎(Dr)、坂倉心悟(B)、古村大介(G)

光村龍哉(Vo, G) 「えっ!? えっ!? えっ!?」って驚いている間に終わっちゃうアルバムだと思います(笑)。

──制作はいつ頃始まったんですか?

光村 本腰入れたのは去年の年末かな。

古村大介(G) そうだね。曲がいっぱいあるしそろそろまとめようよ、みたいな。

──これまでは作品のコンセプトがけっこう明確でしたよね。

光村 ええ。だから今回はこれまでのアルバムとは180度違いますね。「HUMANIA」を作り終えてから、どういう気持ちで新しい作品を作るべきかっていうのを話し合って。そのときにフルくんが「HUMANIA」のような形で作るのは、バンドとしてあまりしっくりこないと。

──え? そうだったんですか。

光村 俺らのよさって、演奏してて楽しい曲や純粋にいい曲をコンセプトもなしに集めたアルバムを作ることで出るんじゃないかって話になって。具体的にはメジャー1stアルバム「Who are you?」が、これまでの中では一番俺らのよさが詰まっていたんですよね。でも「Who are you?」をもう1枚作るんじゃなくて、同じような気持ちを持ちつつ、今の自分たちがグッとくる曲を入れようという話になって。デビュー作をもう1回作るような感じでしたね。

──まとめ始めたのが去年末ということは、実際の制作期間は短いですよね。そのぶん勢いがある作品になった印象があります。

光村 勢いなしには到達できないような作品ですよ(笑)。

古村 俺はこれでいいんだ!って思いましたけどね。1stアルバムができたときの感覚とか思い出したし。

光村 作ってた曲には自信があったんだけど、アルバムにまとめるとなるとどんなものになるのか予想できなくて。1曲ずつマジで作ったものを寄せ集めて、繰り返し聴けるいいアルバムになるのか不安だった。でも最後は必死で作ったものが俺らのすべてなんだって認めようと。

──それが着地点だったと。

光村 で、完成してみたら、今までのアルバムの中では一番カッコいいかもって。ゴールが見えない状態で作ってたけど、やってたことは何1つ間違ってなかったし、「Who are you?」に全然勝ってると思いましたね。だてにアルバム4枚作ってこなかったなって(笑)。

1. 鼓動

──ここからは各曲について聞かせてください。まず「鼓動」から。これは始まりを予感させるドラマチックな1曲ですね。

光村 フロアタムから始まる壮大な曲は、前から作りたいと思ってたんです。だからやっとできたって感じで。自分たちが思う「アルバムのオープニングはかくあるべし」っていうタイプの曲ですね。

坂倉心悟(B) ただ今までの僕らのアルバムでは、どっしりしたタイプの曲が1曲目になったことがないから意表を突かれる人はいるかもしれない。

光村 これはアコギを弾きながら歌詞も一緒にできた曲で、ワンコーラス作るのに10分くらいしかかからなかった。アルバムの中では一番早くできあがったかも。

──歌詞はかなり攻撃的ですよね。

光村 心の叫びを吐き出した感じですね。アコギを弾きながら曲を作ってると、不思議と言葉遊びの感覚がなくなるんです。俺はアコギ持つと素直になるんだなって発見しました(笑)。

2. 夢1号

──「夢1号」についてはシングルリリース時のインタビューでも語ってもらいましたが、その後ライブで披露する中で変化していった部分はありますか?

光村龍哉(Vo, G)

光村 夢の中で作られた曲だけど、だいぶ夢のものではなくなったかもしれない。だんだん現実の世界に降りてきた感じはする。で、アルバムの中に入ることで、ホントにすごい曲だったんだなって改めて感じました。

──どういう部分で?

光村 ジャンルでくくれない感じとか、アレンジも構成も独創的な曲だなって。あと神々しい輝きを放ってる。

──確かにアルバムの中でも不思議な印象を残しますよね。この曲をきっかけにNICOはライブでのコーラスワークに重点を置くようになりましたが、その向上具合はいかがですか?

古村 どんどんやりたくなってきてますね。アルバムを作る過程でコーラスパートが増えてきたし、もっと歌に参加したいという思いが強くなってきましたね。ただ……。

──ただ?

古村 みっちゃん(光村)の作るコーラスは難しい!

対馬祥太郎(Dr) 確かに簡単ではない。でもコーラスが増えてからドラムだけ叩いていた頃に比べて、別のステージに立てた気がします。演奏するときの心構えとして、歌が始まってから曲は始まるもんだっていう感覚になったし。

3. 夏の大三角形

──「夏の大三角形」は今やすっかりライブの定番曲ですが。

光村 この曲は去年の夏フェスで本当にお世話になりましたね。おかげで「3秒間のお兄さんたち」になれましたから(笑)。2012年ってリリースは少なかったけど、この曲があったことでバンドの存在感をちゃんと出せたし。そして、この曲はアルバムの3曲目以外はありえないなと。

──あはははは(笑)。

光村 だって「夏の大三角形」で「3秒間~」って歌ってて、アルバムの4曲目に入ってたらおかしいでしょ。

──収録位置を先に決めたことはネックにならなかった?

光村 いや。アルバムの完成図が2月下旬までまったく見えなくて、だったらギャグでもいいから「夏の大三角形」は3曲目に入れるくらいのことを決めないとやってらんなかった(笑)。

坂倉 「アルバム3曲目に入れる」ってみっちゃんから言われて誰も反対しなかったですからね。

光村 そもそも今回のアルバムは曲順云々じゃなかったし。全体のストーリーみたいなものは意識してないし、「この12曲が俺らの真実だ」って言えればいいと思ってたから。

4. アビダルマ

──「アビダルマ」は完全にぶっ壊しモードなわけですが。ここまで激しくて、スピード感のある曲は演奏する面白さがありそうですね。

光村 はい。今までの俺らの曲とは違った踊れる感じを意識して作りましたね。いろんなカッコよかった曲の記憶を頼りに、ギターをギャーンとかひずませたりして。完成したときに笑いましたもん。アレンジとかやり過ぎちゃったって。

坂倉 作ってる最中はもういったれ!みたいな勢い勝負でしたね。

──なるほど。勢いもありますけど、要素も多い曲ですよね。光村さんはラップにも挑戦してますし。

光村 ラップ大変だったんですよ! 軽い気持ちで「やりたい」なんて言ってすいませんでしたって謝りたくなりましたもん。ラップパートだけで40テイク録って。ヒップホップをやっている人たちに敬意を表するために、ノーカットで自分のスキルを磨いた上で歌ってやろうと。一部分だけ間違ったから、そこだけ歌い直して編集しようという気持ちにはならなかったんですよね。

対馬 歌い終わったあとにスタジオで会ったら、みっちゃん魂抜けてて。肉体労働終わったあとみたいな感じなの。

光村 40テイクも録って修練したからライブではバッチリですよ。俺の切れ味抜群のラップを堪能してほしいですね。でもレコーディングではギター持ってなかったからなあ。リハーサルで壁にぶち当たるかも……。

ニューアルバム「Shout to the Walls!」/ 2013年4月24日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / KSCL-2223~4
通常盤 [CD] 2800円 / KSCL-2225
CD収録曲
  1. 鼓動
  2. 夢1号
  3. 夏の大三角形
  4. アビダルマ
  5. ストロベリーガール
  6. 紅い爪
  7. チェインリアクション
  8. ランナー
  9. アルペジオ
  10. (who)
  11. Mr. ECHO
  12. damaged goods~紫煙鎮魂歌~
初回限定盤DVD 収録内容

NICO Touches the Walls Acoustic Sessions「アコタッチと呼んでみて☆ vol.2~真夜中のスタジオ編~」

  1. Mr. ECHO
  2. April
  3. 夢1号
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月27日にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月24日には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表。


2013年4月24日更新