ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

キーワードは「全力感」 話題CM曲に込めた決意

NICO Touches the Wallsがニューシングル「夏の大三角形」をリリースした。2012年第1弾作品となる今作の表題曲は、「カルピスウォーター」のCMソングとしてオンエア中のNICO流サマーラブソング。現在のバンドの勢いに拍車をかけるような、突き抜けていくサウンドが爽快な1曲だ。またシングルのカップリングには、古村大介(G)作詞作曲による「夕立マーチ」と、プログレ風味の笠置シヅ子「ラッパと娘」のカバーを収録。三者三様の際立った個性を感じさせる作品になっている。

ナタリーでは今回、ニューシングルを機に新たなステージに向かおうとするメンバー4人にインタビュー。3月に終わった「HUMANIA」ツアーでつかんだ手応え、新曲に込めた決意、そして今後の野望について語ってもらった。

取材・文 / 中野明子 インタビュー撮影 / 佐藤類

ここが始まりだし、まだまだ通過点

──昨年12月にアルバム「HUMANIA」を完成させた当初は「もう何も出てこない」と言ってたので、こんなに早く新作がリリースされるとは思いませんでした。

光村龍哉(Vo, G) 確かに「HUMANIA」を出した直後は、何も出てこないって感じだったんですけど。アルバムを携えてツアーを回る中でふつふつと生まれるものがあって、その結果という感じですね。

──そのツアーの終盤では幕張メッセで凱旋公演を行いましたが、いかがでしたか?

インタビュー写真

光村 大会場での単独ライブは2010年3月の武道館以来だったんですけど、武道館は終わったあとにやり足りないと思う部分があって。だけど幕張は終わったあとに、自分たちの力でここまで来たんだっていう達成感がありましたね。出来不出来で言うと俺は思ったように歌えなかったので悔しさもあったんですけど、それとは別に一歩一歩地に足をつけて音楽を作っていった結果を、動員でもステージでも出せたから、そういう意味ですっきりしたというか。

──確かに、これまでの集大成的なステージだったと思います。その手応えを得て、次に行けるぞという自信が芽生えた?

光村 そうですね。「HUMANIA」ツアーでは、キーボードを入れたり、演出にも凝ったり、自分たちなりのエンタテインメントを追求できたし、スタッフも含めて気持ちがひとつになれたと感じていて。だから今度はより質を高めたいなと。ツアーが終わったときは、ここが始まりだし、まだまだ通過点だなって思った。

対馬祥太郎(Dr) とにかく自然と課題が出てくるんですよね。幕張のライブはやりきった爽快感みたいのはあったけど、実際はダメな部分もあったし。そこは自分でも悔しいから、クリアしていきたいし。なんだかんだ言って、課題があったほうが面白いんですよね。

「大人な感じ」を目指す

──ツアーを経ての次の一手がこの「夏の大三角形」となるわけですが、バンドのこれまでとは違う一面を出そうとしてる意志が感じられました。

光村 「HUMANIA」で出し尽くした感はあったんですけど、それを踏まえた上で次にバンドでやるべきことを一から洗い直さなきゃと思ってて。本当は時間をかけて新しいステージに進みたかったから、十分に下準備をして、半年くらいしてから曲を書こうとしてたんですけど、ちょうどCMソングのお話をいただいて。そうすると俺らもついつい期待に応えたくなっちゃうもんでね(笑)。予定を10倍早めて書き上げたっていうか。完全に次のステージに上がったとは思ってないですけど、扉を開くような曲にはなったかな。

──確かにここまで突き抜けた曲は、新境地かもしれない。

光村 この曲って、メロディもアレンジも意外と泣きの要素が強いんですよね。それって今までシングルでは出してこなかった一面ではあるけど、自分たちの真骨頂でもあって。泣きのメロディも真っ直ぐ出せて、それがシングルになって、さらにCMで流れるってことがすごくうれしい。激しさや疾走感だけじゃない側面でも認めてもらえるバンドになったんだなって思えた。

インタビュー写真

対馬 この曲のアレンジはみっちゃん(※光村)が引っ張ってくれた部分があって。ドラムで言えば、具体的な叩き方を指示されて、お互い納得できるまで何パターンも出して。一緒に作業する中で、みっちゃんが次にバンドをどうしたいのかっていうことが体で感じられましたね。

──確かにリズムはトライバルな雰囲気もあって、新しい叩き方をしてますよね。あのアイデアは誰が?

対馬 みっちゃんですね。

──珍しいですね。これまではバンドセッションで作っていくことが多かったと聞いてましたが。

坂倉心悟(B) セッションでやったバージョンもあったんだけど、仕上がりがいまいちだったんで、それを完全にぶっ壊して。

光村 セッションで作ってたときは、前回のアルバムのモードであったりとか、手癖で作ってる部分が多くて。それだと今までの路線からは抜け出せないし、やる意味がないなと思ったから。だから自分のイメージをデモに細かく落とし込んだ上で、話し合いを重ねて試していった感じかな。

──具体的にはどういうことを意識したんですか?

光村 とにかく音数を減らしたかったんですよ。少ない音で多くを語る曲を作りたくて。俺らフルアルバムを4枚も出してるし、次は「大人な感じ」を目指すっていうか(笑)。

──音の多さや大きさで圧倒するのではなくて、1音1音を際立たせたいと?

光村 少ない音の中で緩急をつけて、わびさびみたいなものを曲の中で出せるようになりたいなって。で、そのイメージを口で伝えるよりは音にしたほうがいいかと思って、今回はセッションでのアレンジを壊して全く別の曲にしてメンバーに返したっていう。

ニューシングル「夏の大三角形」/ 2012年5月16日発売 / Ki/oon Music

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 1470円(税込)/ KSCL-2023~2024 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1223円(税込)/ KSCL-2025 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. 夏の大三角形
  2. 夕立マーチ
  3. ラッパと娘
  4. 夏の大三角形instrumental
  5. 夕立マーチ instrumental
初回限定盤DVD収録内容
  • 「夏の大三角形」Live ver. (3/20@幕張公演)
  • CM documentary

DVD「Library vol.2」/ 2012年5月16日発売 / 2500円(税込)/ Ki/oon Music / KSBL-6025 / Amazon.co.jpへ

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DVD収録内容
  1. サドンデスゲーム
  2. Diver
  3. 妄想隊員A
  4. マトリョーシカ
  5. 手をたたけ
  6. Endless roll
  7. バイシクル

完全生産限定パッケージ「NICO ニコ パック」/ シングル「夏の大三角形」+DVD「Library vol.2」

  • 2012年5月16日発売 / [CD+2DVD] / 3970円(税込)/Ki/oon Music / KSCL-2020~2022 / Amazon.co.jpへ
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シングル「夏の大三角形」の初回盤と、PV集が収録されるDVDの2つのプロダクツを一つのパッケージにまとめた「NICO ニコ パック」

※5000セット限定

NICO Touches the Walls(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年3月には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めている。2012年5月にシングル「夏の大三角形」をリリース。