NICO Touches the Walls「QUIZMASTER」 PR

NICO Touches the Walls|答えはなんだ? 全新曲構成の意欲作が示す4人の現状

NICO Touches the Wallsが約3年ぶりとなるアルバム「QUIZMASTER」を6月5日にリリースした。

「OYSTER -EP-」「TWISTER -EP-」を経て作られた本作は、収録曲すべてが新曲というNICOにとっては前例のないアルバムだ。さらに全収録曲のアコースティック音源を収めた“ACO Touches the Walls盤”も付き、1作で2度おいしいボリュームのある内容に仕上がっている。

さまざまなサウンドアプローチを取り入れた「QUIZMASTER」はどのような過程を経て完成したのか。“ACO Touches the Walls盤”を含む全曲解説を交えてメンバー4人に語ってもらった。

取材・文 / 中野明子 撮影 / 佐藤早苗

NICOの本分=歌モノ

──2016年3月にリリースされたアルバム「勇気も愛もないなんて」のリリース時のインタビューで、「次は3年も空けずにアルバムを出せるようにします」と宣言していた気がするのですが……(参照:「Listen with」特集 Vol. 2 NICO Touches the Walls)。

光村龍哉(Vo, G)

光村龍哉(Vo, G) 3年以内に出すつもりだったのに、気付いたら3年強も経っちゃった。俺らの中では「マシ・マシ」(2016年11月リリースのシングル)までが前のアルバムの「勇気も愛もないなんて」から続く1つのストーリーだったんです。そのあと、新しいアルバムに向けての筋道を考える際に、「シングルではなくてEPを作ってからアルバムにつなげたい」「普通のバンド編成で作ったNICO盤とアコースティックアレンジのACO盤を同時にパッケージして二面性を出そう」というコンセプトを早めに立ててはいたんです。2枚のEPを作ったことによって、アルバムに関しては完成に至るまで思いのほか大変でした。収録曲が全曲新曲だったことと、第1弾の「OYSTER -EP-」(2017年12月リリース)がよくできちゃったのが原因です。

古村大介(G) 作品を出すたびに次のハードルが上がってしまった。

坂倉心悟(B) そこで計算が狂ってしまい。

光村 「OYSTER -EP-」も「TWISTER -EP-」(2018年7月リリース)も自分たちのネクストレベルを提示したくて、「NICOはこんなもんじゃねえぞ」と思いっきりタガを外していったんです。ただ、「OYSTER -EP-」と「TWISTER -EP-」でハメを外しても、アルバムでちゃんとNICOの本筋というか本分に戻ろうということはメンバーに伝えていたので、その“ストーリー”は全員が理解して進んでいたんです。

──そのNICOの本分というのは?

光村 歌モノで勝負すること。俺らはいろんな音楽から影響を受けて曲を作っているし、好きな音楽のジャンルも多岐にわたっていて、それぞれの要素を取り入れたい気持ちがあるんです。ただそうやって作っていた曲に対して「これがNICO印の付いた曲ですよ」と太鼓判が押せるのは、歌をちゃんと主人公にできたものなんです。そういうことをリスナーに理解してもらうためには、どんなにハメを外しても、歌モノが本分であることを伝える必要があった。

坂倉 そのために、「OYSTER -EP-」と「TWISTER -EP-」では“課外活動”としてアコースティック盤を作ったりして。

光村 今作のどの曲を作ってるときも、自分たちの音楽性を構成する要素を点と点でつなげて線にするようなことは意識しました。いろんなアプローチや要素を取り入れてるけど、歌を軸にしてることと、歌がなんの上に成り立ってるかを証明した感じです。

坂倉心悟(B)

──確かに今回のアルバムに収録されている曲の音やアプローチは多岐にわたっていますよね。ただ、おっしゃる通り「OYSTER -EP-」と「TWISTER -EP-」の曲が振り切ったものばかりだったのであまり意外性はなかったんです。むしろアルバムはポップで、NICO盤にしてもACO盤にしてもアレンジが今まで以上にとても多彩で洗練された印象がある。

光村 だと思います。

──なるほど。実はツアー初日に新曲を聴いたときは、情報量の多い曲で構成されたアルバムになるのかなと感じていたんです。ライブで披露したのを機にブラッシュアップしたんでしょうか?

光村 そうなんです……ライブにおいて表現することが間に合ってなかった。

対馬祥太郎(Dr) だね。

──そういう意味で、すでにライブで新曲を聴いているファンの方でも新鮮に聴ける作品かもしれませんね。

坂倉 はい。

NICO Touches the Walls

世の中はわからないことがありすぎる

──今回は先行シングルなどがなく、ゼロから制作を始めたわけですよね。大変な面も多かったと思いますが、実際にいかがでしたか?

光村 まあ、大変ではあったかな。まず「人生は謎だらけ」というテーマを掲げて。そのテーマを一貫して感じられるようなものにしたくて、曲を選んだり、歌詞を書いていきました。

坂倉 うん、そうだったね。

古村大介(G)

光村 「OYSTER -EP-」と「TWISTER -EP-」の制作時から自分たちの内側にフォーカスしていくような曲を段階を踏んで作るという目標を掲げて。アルバムでは自分たちの内面をちゃんと出せるようにしたいとは思っていました。最終的にはジャケットにもある通り、俺のエクトプラズムが出てるような作品になった(笑)。

──タイトルも3つとも韻を踏んでますよね。「OYSTER」「TWISTER」「QUIZMASTER」と末尾がすべて「STER」で締まってる。

光村 最終的にそうなりました。そもそもアルバムのタイトルは韻を踏まなくてもいいかという話だったし、2枚のEPを作ってる段階で別のタイトルにするつもりだったんです。でも二転三転して「QUIZMASTER」になった。

──ただ韻を踏んだタイトルであることで、一連の流れのある作品群なんだというのがすぐわかりますよね。

坂倉 そうですね。

──ところで「人生は謎だらけ」というテーマはどこから?

光村 しみじみ人生は謎だらけだなあと思って。アルバム曲の歌詞を書いていた時期に、「最近は結論がはっきりした、いいことを歌っているロックバンドが多い」とみんなで話してたんです。それを考えたときに、自分たちを含めてそんなこと歌える人間か?と。俺らがありのまま身を削って曲を作っても、結論なんて出ないことが多くて。そもそも世の中はわからないことがありすぎると。曲の中で起承転結をつけてスッキリしていくより、自分たちの中にある「?」を投げかけることが今のNICOにできる100%のことなんじゃないかと。

──確かに歌詞を読んでも、結論めいたものはないですよね。疑問を投げかけるものが多いし、聴き終えたあとにモヤッとした感情を残すようなものもある。それがバンドの現状だし、それを素直に形にしたと。

光村 そうです。

──また今作はどの曲も録音がしっかりしていて音がいいですね。それぞれの楽器の音、歌やコーラスが美しく聞こえました。

対馬祥太郎(Dr)

光村 その感想はうれしいです。

古村 めちゃくちゃレコーディングでこだわったよね。

光村 「OYSTER -EP-」と「TWISTER -EP-」のレコーディングを経て、今回はアレンジの段階から目指したい音をイメージして作ってたんです。徹底的に音数を減らして、同時に出ている音も削って。例えばドラムだったら「前作比50%くらいのシンバルの音でお願いします」とか対馬くんにリクエストしました。

対馬 音を削る作業というのは、自分たちに染み付いてしまったものを見直す機会になるんですよね。それによって改めて聞こえてくる音や見えてくるものがありました。

光村 あとみんなが100%の仕事をしちゃうと、歌録りのときに歌の居場所がないんですよ。歌モノの作品なのに(笑)。だから今回はあえて楽器の音数を減らして、歌とオケが有機的に作用するように試行錯誤しました。

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「QUIZMASTER」全曲解説