ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
「Shout to the Walls!」全曲解説 メンバーソロインタビュー
NICO Touches the Wallsソロインタビュー【坂倉心悟(B)編】
ベーシストとしてだけでなく、最近はソングライターとしても頭角を現している坂倉心悟。ソロインタビューでは自身の岐路になった出来事をはじめ、NICO Touches the Wallsの制作現場の実情、そしてデビュー6年目を迎えての変化など、多岐にわたる話題について率直に語ってくれた。
毎日違う課題が出てくる
──今回は1人ひとりの「壁」について聞いてるんですが、坂倉さんが壁を感じたエピソードってどんなものがありますか?
今考えるとたいしたことではないんですけど、高校のときに芸大を志望してた時期があったんですよね。当時からバンドもやってたんですけど、音楽よりも美術に興味があったりして。そういうこともあって普通に大学に行って、普通に就職するのはつまんないかなって思って進路を考えた時期がありましたね。結局諦めたんですけど。
──それはどうして?
芸大の試験を受けるには専門的な勉強をしなきゃいけなくて、自分が通ってる高校のカリキュラムでは合わないことが発覚した。そのときに諦めてなかったらどうなってたんだろうなって思うこともあります。
──音楽で生きていこうと思ったタイミングってあるんですか?
高校のときからみっちゃんとバンドやってて、彼の歌や作る曲が好きだったから、一緒にこのままずっとバンドやってたいなっていう思いはずっとあったんですよね。だから大学進学するときもあんまりレポートとか多くない学部を選んだりして(笑)。19歳の頃は自分の将来を保留にしてたなあ。でもそのあとに今の事務所のスタッフに出会ってるんで、しばらく将来のことを考える暇がなかったな。
──今現在抱えてる葛藤ってありますか?
うーん。やっぱりバンドの話になっちゃうなあ。バンドやってると毎日違う課題が出てくるし、それをクリアしてしていかなきゃ先に進めない。大きな何かに向かっているというよりは目の前に出てくるものに対峙していくのが、NICOにとっての壁な気がしてる。俺の場合は特に、目の前にある壁を乗り越えるなり壊していくことに必死な毎日で。ただそうやって着実にやってきたことが身になってるし、単純に新しい技術を手に入れることにつながってる。あ! そういえば年齢の壁は感じるかも。そろそろやべえなって。
──どういう部分が?
発言がオッサンになってきた(笑)。まあ、それは年齢的なものだし、悪いことだとは思ってないんだけど。
──こうやって話を聞いてると坂倉さんつくづく真面目ですよね。
自分で理想を思い浮かべて、勝手に悩んで思い詰める性格だからそう見えるのかも。自分ではそれがイヤなんですけど。でもね、出たとこ勝負なところもあるんですよ。だから自分の性格っていうのがまったくわかんなくて。自分に対する壁もあるかも(笑)。
俺ら歩幅が狭いなあ
──今後自分やバンドに立ちはだかっていきそうな壁って?
うーん、口に出すのが怖いですけどね。例えばそれは音楽が続けられなくなることだとか……。それは予想しうる壁の1つではあるけど、今はやりたいことがあるし、それを考える時期ではないとは思ってます。
──NICOは今年デビュー6年目ですが、振り返ってみていかがですか?
もうそんな経っちゃったかって気がしますね。来年は結成10年だし。でも歩幅が狭いなあという気がしてます。それぞれペースが違うから、全員で一緒に前に進むには時間がかかるんですよね。他のバンドとのキャリアを考えると、ウチのバンドらしい歩みだとは思うけど。
──音楽との向き合い方って変化しました?
前より理系的に考えるようになったかな。構成とかキーとか計算して曲を書いたり、アレンジを考えるのが楽しくなりましたね。直感で作ったりしたほうがいい場合もあるんでしょうけど、バンドのことになると慎重にならざるを得なくて。プロである以上、好きとか楽しいだけじゃなくて、音1つにも裏付けがなくちゃいけないと思ってて。そうしないとメンバーに理解されないし。
──メンバーでのぶつかり合いってあるんですか?
ありますね。曲を作ってるときとか、ほかのメンバーは意見が合致してるけど、自分だけ納得できないこともしょっちゅうだし。そういうことが起きるたびに、「ああ、また壁出てきた」って頭抱えます(笑)。でものちのちできあがった曲を聴くと、必要なぶつかり合いだったんだなって思うことが多い。思いもしないところで壁が現れて、一波乱あってできあがったもののほうがいいってことは多々ありますね。
──例えば?
歌詞で「ここは自信がある」って思って出した部分に対してツッコミを受けて、「ここは突っ込まれるかもしれないし、変わってもいいかな」ってところをスルーされたり。でもそこで相手の考えを理解して変えていかないと、バンドが成り立たなくなるし。俺も頑固なんで譲らない部分もありますけど(笑)。まあそういうのって4人で曲を作っていく上では避けては通れない部分ですよね。それを含めてバンドの面白さかなって。
- ニューアルバム「Shout to the Walls!」/ 2013年4月24日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / KSCL-2223~4
- 通常盤 [CD] 2800円 / KSCL-2225
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CD収録曲
- 鼓動
- 夢1号
- 夏の大三角形
- アビダルマ
- ストロベリーガール
- 紅い爪
- チェインリアクション
- ランナー
- アルペジオ
- (who)
- Mr. ECHO
- damaged goods~紫煙鎮魂歌~
初回限定盤DVD 収録内容
NICO Touches the Walls Acoustic Sessions「アコタッチと呼んでみて☆ vol.2~真夜中のスタジオ編~」
- Mr. ECHO
- April
- 夢1号
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月27日にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月24日には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表。
2013年4月24日更新