ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
「Shout to the Walls!」全曲解説 メンバーソロインタビュー
NICO Touches the Wallsソロインタビュー【対馬祥太郎(Dr)編】
ニューアルバムに収録されている新曲「紅い爪」で初めて作詞曲を披露し、意外な才能を開花させた対馬祥太郎。ソロインタビューではデビュー6年目を迎えた彼が、今何を考えているのかを知るべく、さまざまな質問を投げかけてみた。バンドの屋台骨として活躍している彼が、音楽やメンバーとどう向き合っているのか。その考えを読み取ってほしい。
壁はステップアップのためにある
──今回は音楽に限らず、対馬さんの「壁」について聞きたいなと思ってるんですが……。
なんだと思います?(笑)
──ぜひご本人の口からお聞きしたいんですが。
まあ壁って、自分と違う人種だったり世界との共通点がないことが壁って言う場合もあるし人によっていろいろあるけど、俺の場合はステップアップのために必要なものっていう認識ですね。
──なるほど。
ただ俺の場合、昔から音楽でもなんでもがんばるってことをしなくて(笑)。みんなが大変そうにしててもけっこう楽観的で、失敗することもなく思い通りになってしまう。あと一般的に失敗と見なされることでも、自分ではそうは思ってないし。ずぼらだし努力が全然できないし、唯一続いてるのが音楽だけなんですよね。かといって音楽を始めたのも、何か大きなきっかけがあったわけじゃなかったんだよなあ。
──そもそもなんでドラムを始めたんですか?
小学校のときにブラスバンド部で、パーカッションを担当してたんですよね。そのあと中学のときに個人的にドラムを習ってて、中学2年のときに友達に誘われてバンドを始めたりして。そこからはバンドマン人生でしたね。でも音楽をやっててプレイ面での壁はあるけど、特に悩みを感じたことがないんですよね。性格的に流れを身を任せるタイプなんで。まあ、そのことを「壁」と感じていた時期もありましたけど。
──それにはどう折り合いをつけたんですか?
そういう性格なんだって自分を納得させた。自己主張が少ないし、俺はこうしたいんだっていうメッセージもあまりなくて。音楽は好きだけど、純粋に楽しむものとして考えてる。
──音楽の中にアイデンティティは見出してない?
そうですね。その場その場で感じるものだったり、フィーリングで反応しますね。具体的に「音楽を通して何がしたいの?」って難しいこと聞かれたら「何もない」って答えるし、音楽を通して自分という存在を残したいというのはないんですよね。だから俺という人間と音楽をやるんだったら、俺という人間を認めてくれないと始まらない。対馬祥太郎という人間を知っていないと、一緒に音楽を作ることはできないと思ってますね。
──プレイヤー気質なんでしょうか?
でしょうね。みっちゃんとかBase Ball Bearの小出(祐介)くんとか、サカナクションの(山口)一郎くんとかは、音楽を通して表現したいことが明確じゃないですか。それに納得はするけど、俺特にないんです。
──メンバー間で考え方が違うんですね。
ですね。こういう性格だから周りには「何考えてるかわからない」ってよく言われるし。一時期はドラムを叩く上で、自分なりのメッセージだったり主張が必要なのかなってすごい悩んで。でも音楽をやる上で、そんなに理由やメッセージが必要なの?って。
──考え方の違いでメンバーとぶつかりませんか?
流れに身を任せる性格は変えられないんですよね。それが自分だと思ってるし、そこをメンバーにも受け入れてもらってる。
「祥ちゃんは優しくなった」
──対馬さんが音楽やってて楽しい瞬間ってどんなときですか?
ライブをやってるときだったり、聴いてくれてる人がいることを実感したときかな。あとセッション。根っからのバンドマンなんで、みんなで音を合わせているときが一番楽しいですね。全員が全身全霊のプレイをすると盛り上がるし、その瞬間にバンドやっててよかったなと思う。
──バンド内の自分の役割って考えることはありますか?
俺の役割は……ほかのメンバーがやりたいということに「やってみたらいいじゃない」って賛同して、行き過ぎてるかなと思ったら戻して。そういうポジションかな。
──NICOは今年デビュー6年目を迎えますが、当時と比べて変わったところって?
今年入ってからフルと坂倉に「祥ちゃんは優しくなった」って言われたんですよね(笑)。これまでずっと「何をもって周りに認められるのか」とか考えてて、トゲトゲしていた部分があったんだと思う。自分の殻に閉じこもって、外から来るものをシャットアウトしたり。ツアー中、ライブ以外ずっとホテルにこもってたりしたこともあったし(笑)。でも最近、みんなにはみんなのやり方があるし、それぞれ違うんだなって。やっとそのことを受け入れられるようになったのかもしれない。
──「Shout to the Walls!」というアルバムを作ったことで見えたことはありますか?
今回のアルバムって、コンセプトを決めないで作り始めて、全員がいいと感じる曲を詰め込んだんですよね。その感覚って俺からしたら普通なんですけど、そういう作り方にたどり着くまでいろいろ試さないといけなかった。改めて俺らって時間がかかってしまうバンドなんだなって思いましたね(笑)。
- ニューアルバム「Shout to the Walls!」/ 2013年4月24日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / KSCL-2223~4
- 通常盤 [CD] 2800円 / KSCL-2225
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CD収録曲
- 鼓動
- 夢1号
- 夏の大三角形
- アビダルマ
- ストロベリーガール
- 紅い爪
- チェインリアクション
- ランナー
- アルペジオ
- (who)
- Mr. ECHO
- damaged goods~紫煙鎮魂歌~
初回限定盤DVD 収録内容
NICO Touches the Walls Acoustic Sessions「アコタッチと呼んでみて☆ vol.2~真夜中のスタジオ編~」
- Mr. ECHO
- April
- 夢1号
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月27日にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月24日には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表。
2013年4月24日更新