ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls

「Shout to the Walls!」全曲解説 メンバーソロインタビュー

9. アルペジオ

──「ランナー」に光村さんの過去が歌われてる一方で、次の「アルペジオ」は古村さんの思い出が刻まれてる曲で。

光村 確かにそうだ。この流れ思い出シリーズじゃん。

古村大介(G)

古村 これは音もシンプルだし、テーマもシンプルで。結婚した友達に向けて作ったんですけど、28歳の今の心境がそのまんま出てますね。ソロインタビューでも話してる年齢とか結婚の「壁」が(笑)。

──「夕立マーチ」のときもそうでしたが、古村さんの歌詞って実体験をもとにすることが多いんですか?

古村 最終的にはそうですね。

光村 メロディがセンチメンタルだから、誰かに手紙を書く気持ちで歌詞を書いたらどうかなって言ったら、ギターを教えてくれた友達が最近結婚したからそういうのを書いてみようって。書き始めたのを横で見てたら、とにかく彼とのエピソードが多くて。

古村 書けない話もあったり(笑)。いろいろ整理した結果がこれですね。

光村 このバンドの中で一番曲のスタイルにこだわってるのはフルくんなんじゃないかと思うんですよね。バラードにおいて響く言葉とか、自分が聴いてきた音楽を参考にしながらメロディも歌詞も作ってる。ギタープレイに関してもそうで、フルくんって意識するとあんまり面白くなかったりして。自由に弾いてるフレーズのほうがいいし、歌詞やメロディも自分の中にあるものを出してもらったほうが伝わるんですよね。

──なるほど。全員が作曲や作詞にも参加してるこのアルバムは、それぞれのキャラクターが今まで以上に出てますよね。

光村 だから「Shout to the Walls!」を作ったことで、今までの殻を破れたのはありますね。俺らはそれぞれありのままを出すべきなんだって。

10. (who) ~ 11. Mr. ECHO

──ありのままを出した曲と言えば、「Mr. ECHO」がその最たるもので。

光村 弱々しさをどれだけ出せるかってことがこの曲のテーマでしたからね。完成させるまでに、すごい悩んだし時間もかかったけどちゃんと書けてよかったなって改めて思います。

──すでにシングルとしてリリースされてますが、リスナーの反応は?

光村 「こういう曲を求めてた」っていう人が多かったですね。俺らとしても「Mr. ECHO」みたいな壮大な曲をリスナーに聴かせたかったし、やっと書けたという感慨はありますね。ただライブではもっとよくなる気がしてるので、そういう意味では未完成ですね。

──曲の前にインタールード「(who)」を加えた理由は?

光村 「(who)」を前に入れることで改めてNICOにとって大事な1曲なんだってことを伝えたかった。インタールードなしだったときは、あまり目立たなかったんですよ。ほかの曲が濃過ぎて(笑)。だから、じっくりみせてあげたいなって思ってレコーディングの最後に加えました。

12. damaged goods~紫煙鎮魂歌~

──そして「Mr. ECHO」の余韻を吹き飛ばすような曲が最後を飾ってます。一発録音によるラフな感触も、ふてぶてしい歌詞も魅力で。

光村 そうですね。アルバムのラストをどうするかギリギリまで迷ったんですけど、どの曲がきてもこのアルバムは締まらないと(笑)。だったらこの先の俺らがワクワクするような曲で終わったほうがいいんじゃないかっていう結論に達して。かつフェードアウトの曲を最後に持ってきて次を予感させる形に仕上げました。

──そういう意図もあるんですね。この曲がラストにくることで、1曲目からリピートしたくなりますね。

光村 アルバム自体のエネルギーがすごいから、キレイに収めるんじゃなくてこれくらいラフに終わるのも新しいかなって。

「Shout to the Walls!」はお待たせアルバム

──さて全曲振り返ってもらいましたが、この「Shout to the Walls!」は自分たちにとってどんな作品になりましたか?

左から、光村龍哉(Vo, G)、対馬祥太郎(Dr)、坂倉心悟(B)、古村大介(G)

坂倉 名刺代わりとも言える気がするんですよね。混沌としたアルバムですけど、今の俺らならではというか。2章の始まりみたいな作品になったかと。

対馬 これを聴いてると「Walls Is Beginning」のジャケットのオオカミが浮かぶんですよね。俺の感覚では野性的な印象というか。自分たちの生命を感じる熱いロックアルバムができたかと。

光村 5枚目にしてやっと「これがNICO Touches the Wallsですよ」って言えるアルバムができたと思ってます。セルフタイトルアルバムにも近い。「お待たせ!」って感じですよ。

坂倉 「お待たせ!」っていいね(笑)。

光村 あとは思う存分リスナーの人に食らってほしいと思います。

対馬 それでそのまま中毒になっていただければ。

古村 くさい言葉になっちゃうけど、完成したときにバンドに夢を見れるアルバムだなと思ったんですよね。キャッチコピーをつけるとしたら、みっちゃんが言ってた「お待たせ」ってのが一番しっくりくる。そんな1枚です。

ニューアルバム「Shout to the Walls!」/ 2013年4月24日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / KSCL-2223~4
通常盤 [CD] 2800円 / KSCL-2225
CD収録曲
  1. 鼓動
  2. 夢1号
  3. 夏の大三角形
  4. アビダルマ
  5. ストロベリーガール
  6. 紅い爪
  7. チェインリアクション
  8. ランナー
  9. アルペジオ
  10. (who)
  11. Mr. ECHO
  12. damaged goods~紫煙鎮魂歌~
初回限定盤DVD 収録内容

NICO Touches the Walls Acoustic Sessions「アコタッチと呼んでみて☆ vol.2~真夜中のスタジオ編~」

  1. Mr. ECHO
  2. April
  3. 夢1号
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月27日にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月24日には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表。


2013年4月24日更新