ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
「Shout to the Walls!」全曲解説 メンバーソロインタビュー
NICO Touches the Wallsソロインタビュー【古村大介(G)編】
今回のソロインタビューで、もっとも等身大の答えが続出した古村大介。ライブでは派手なパフォーマンスの印象も強い彼だが、インドア派で人見知りが激しかったり、緻密に物事を考えたりと、ステージ上とは違う一面を持っている。今回のインタビューは彼にとっての「壁」のイメージを皮切りに、そのパーソナリティに接近してみた。
壁は立ちはだかるもの
──ニューアルバムが「壁」をテーマにした作品なので、ソロインタビューではメンバー個々の「壁」に迫っていきたいと思ってます。
自分の壁かあ。壁で思い浮かぶイメージって、立ちはだかるものとか、超えられないものって感じですね。
──身近なところでは何かありますか?
音楽をやっていく上での壁もあるけど、男女の違いとか、色黒な人と色白な人の差とか、筋トレの壁とか、辛いものを食べれる人との味覚の違いとか……。
──けっこうありますね(笑)。
はい。あと今回のアルバムに「アルペジオ」って曲が入ってるんですけど、この曲って10代のときの友達が結婚したんで、彼のために書いたんですよね。っていうのもあって最近は周りが結婚していく壁を感じることが多いかもしれない。やっぱり28くらいになるとみんな結婚していくんですよ。学生生活を一緒に過ごしてきて、同じような感覚で生きてきた仲間が結婚していくのは、置いてきぼりにされた感じがあるんですよ。人として新しいフェーズに入ってる感じがしてて。そういうのを目の当たりにすると、自分がまだ子供な気がする。
──20代前半にはなかった種類の悩みですね。
うん。あと親との壁を感じることも多いかな。昔は100%スネをかじって生きてたし、親も遠慮なく言ってくるじゃないですか。でも1人暮らしを始めて10年くらい経つと、たまにしか会わないからよそよそしくなる(笑)。丁寧な言葉を使ってくるから、自分も丁寧な言葉で返してたりして。ああ、年とってきたなって。
──古村さんにとって壁ってネガティブなものですか?
ものによるかな。例えば俺は辛いものが好きなんだけど、坂倉みたいに際限なく辛いものが食べられるわけじゃなくて、なんか一線があるんですよ。その辛さの壁の向こうにはどんな味が待ってるのか、すごい気になる。自分とは違う世界に触れてみたいというか。特に食べ物でも音楽でも人が好きなものは気になっちゃうし。ただ好奇心から発する壁は乗り越えるのが早いけど、やっぱり苦手意識が芽生えたものにはひるんじゃう傾向がある。
王道なものが苦手
──音楽を作っていく上での壁はどうですか?
もういっぱいありすぎてキリがない(笑)。16分音符で弾くときのBPM160の壁とか。BPMが1変わるだけで弾けなくなるのがあるんですよね……。かと思えば、自分がイメージするギターの表現ができなくて、なす術がないという悩みも常にあるし。
──どうやってその悩みを解決していくんですか?
かわしますね。
──かわす?
自分が出したい音を出せないときは、違う解釈で対応するしかない。例えばもともとポップな素質を持ってる人がヘヴィメタやっても、その人のよさは出ないから。だからギタープレイについては、壁を感じたらひとまずかわして、自分のプレイを認めるしかない。
──具体的にその苦手な音とは?
……意外と王道なものが苦手ですね。レスポールギターにマーシャルアンプつないで、フルテンでジャカジャーンって弾くようなサウンドは自分の中にはない。それがコンプレックスになったりはしないけど、ギターを弾く上では手に入れておきたい音なんですよね。どうやったら手に入れられるか常に考えてるし向き合ってるんだけど、根っこがポップス寄りだから……。
──では自分で自覚している強みは?
繊細でギミックに富んだところかな。性格とギタープレイって似ると思うんですよね。もう俺の場合、普段表に出ないし、人と話したりするのも苦手だし、アグレッシブに動き回るタイプじゃない。王道のロックを鳴らせる人って、勝手なイメージですけどその逆だと思うんですよ。気軽に知らない人とハイタッチとかできたりするような。
──そうですか?(笑)
俺の中では。だからNICOは日本人のバンドだなって(笑)。そういうことができるメンバーがいないし、奥ゆかしさみたいのが音に出てる。
──ところで年齢とともに葛藤することって増えました?
増えましたね。前はなんも考えてなかったですもん。部活とかだったら勝ち負けとかハッキリした性質のものだったけど、年齢とともに白黒つけられないし、単純なものでもなくなってきた。
──なるほど。では古村さんが挫折を感じた瞬間ってありますか?
特に感じたことはないかな。挫折ってでっかいことだし、今まで生きてきた中でそこまで大きな出来事に遭遇してなくて。もしこれから感じることがあるとしたら、バンドが続けられなくなるときなのかも。
──そういうことを考える瞬間もあるんですね。
うん。でもそれはずっとずっと先のことだろうし、今は目の前のものを1つひとつ超えていくだけかなって。
──NICOは今年デビュー6年目ですが、これまでの歩みを振り返ってみてどうですか?
うーん……「三百六十五歩のマーチ」じゃないけど、3歩歩いて2歩下がるみたいな感じですね。5年間やってきたことの経験値が、自分の中では3年分な気がしてて。決してスピードは早くはないと思ってます。だから、バンドとしてはまだまだだなって。
- ニューアルバム「Shout to the Walls!」/ 2013年4月24日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / KSCL-2223~4
- 通常盤 [CD] 2800円 / KSCL-2225
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CD収録曲
- 鼓動
- 夢1号
- 夏の大三角形
- アビダルマ
- ストロベリーガール
- 紅い爪
- チェインリアクション
- ランナー
- アルペジオ
- (who)
- Mr. ECHO
- damaged goods~紫煙鎮魂歌~
初回限定盤DVD 収録内容
NICO Touches the Walls Acoustic Sessions「アコタッチと呼んでみて☆ vol.2~真夜中のスタジオ編~」
- Mr. ECHO
- April
- 夢1号
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月27日にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月24日には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表。
2013年4月24日更新