ナタリー PowerPush - モーモールルギャバン
J-POPシーンの異端児が放つ 全力投球アルバム「BeVeci Calopueno」
京都発のギターレス3ピースバンド、モーモールルギャバン。メタル、パンク、ハードコア、プログレ、ディスコ、ファンク、ジャズ、歌謡曲──。確かなテクニックをもってあらゆる音楽エッセンスを高純度で昇華したカオティックなサウンド。身悶えるほどの切なさと甘美を兼ね備えた歌。前のめりに転がりながら、偏執的な愛を叫ぶ歌詞。それらすべてが融合して、彼らにしか体現できない特異なポップミュージックが生まれている。そして、彼らはこれを「J-POP」と断言する。
昨年6月にミニアルバム「クロなら結構です」でメジャーデビュー。それから9カ月のスパンを経て、バンドの今を余すところなく凝縮したフルアルバム「BeVeci Calopueno」(ベヴェッチ カロプーノ)を完成させた。
ナタリー初登場となる今回は、メンバー全員にインタビューを敢行。急速にロックシーンを騒がす存在となっているモーモールルギャバンの実体に迫った。
取材・文/三宅正一 インタビュー撮影/中西求
就職前に好きなことをやろうと思って始めた
──ナタリー初登場ということで、いかにしてモーモールルギャバンがこの3ピースになったのかから訊きたいんですけど。バンド自体はゲイリーさん主導で2005年に始動したんですよね?
ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo) はい。24歳のときにドラマーとしての才能の限界にぶち当たって。もう、ドラムやめようと思ったんです。じゃあ、就職する前に自分の好きなことをやろうと思って。で、この2人をはじめ大学を出てもプラプラしていたやつをメンバーに誘って。
──みなさんは大学が一緒だったんですか?
ゲイリー 同じ大学の音楽サークルに所属してました。
ユコ・カティ(Key, Vo) サークルでは一緒にバンドをやっていたりもしたんですけど、卒業してからは絡むこともなくて。
──さっきゲイリーさんは「自分の好きなこと」って言っていましたけど、サークルでドラマーをやりながらも、自分主導でやりたいことがふつふつと溜まっていたんですか?
ゲイリー ドラマーとして一番多いときで5組くらいバンドを掛け持ちしていて。その中でいろんなジャンルの音楽をやってはいたんですけど、どのバンドも似たり寄ったりの状態だったというか……。当時の僕はなんとなく日々精進していれば、25歳くらいでプロになれるだろうというすごく甘い夢を見ていたんですけど……そういう気配もなくて。すごくがんばって練習していたつもりなんですけど、全然納得いく音も鳴らないし。で、最後に自分の好きなことをやろうと思ったときに、今までドラマーとしていろんなバンドで叩いてきた中でどこかで「俺だったらもっとこうするのに」って思っていた部分があったんです。最後にやりたいことをやって、CDを作って、それを友達とかいろんな人にバラまいて、気が済んだら就職しようと思っていたら、気が済まなかった(笑)。
──周りの反応も良かったし?
ゲイリー そうですね。モーモールルギャバンを始めてから、今まで音楽をやってきて経験したことのない反応がすごくあったんです。それまではライブをやっても「すごく良かったです!」って目をキラキラさせながら言ってくる人なんていなかったんですよ。でも、モーモールルギャバンを始めたら、たまにそういう人がいて。「あれ?」って思って。「これ、もしかしたらいけるのかな?」って。そういう欲が働いて、気づけば30歳になってメジャーデビューしていました(笑)。でも、ホントにそういう感じなんです。
最後まで残ったのがこの3人だった
ユコ 迷走していた時代もかなりあって。メンバーが3人になるまではバンド内で落ちつかなくて。
ゲイリー 2006年まではけっこう順調だったんですけどね。内部の葛藤はあったんですけど、ライブの動員はガーッと伸びて。
──そのときはまだ5人だったんですよね?
ゲイリー はい。僕がギター&ボーカルで、ユコがキーボードで、マルガリータがベース。あとドラムと、もうひとりギターがいて。まずドラムとギターが就職で抜けたんです。で、ドラムを探さないと、って思ったんですけど、見つからなくて。結局自分がドラム&ボーカルになって。
──でも、当時のゲイリーさんには自分のやりたいことをやろうと思ったときに、ドラムを叩きながら歌うという発想はなかったんですね?
ゲイリー そうなんですよ。ドラムを叩くという意識はなかったです。
──でも、なんの因果かまたドラムを叩くことになった。
ユコ 完全に成り行きだったけどね(笑)。
ゲイリー ドラマーがいなかったという、それだけの理由だったんですけど。
──でも、今はもっと能動的にドラム&ボーカルをやっているでしょう?
ゲイリー そうですね。今はどこまでいけるかっていう気持ちがあります。
──話を戻しますが、当時のドラムとギターが抜けて、その後どうなっていったんでしょうか。
ゲイリー ギターはホワイトってやつが入って。そのときに動員が伸びて。でも「なんか違うな」と内心思っていたんですよ。
ユコ やりたい音楽とはね。
──でも周りの反応は良かった?
ゲイリー そうなんです。
ユコ でも、結局バンドに対する考え方の違いからホワイトも抜け、そのあと次のギターも入ったんですけど、また抜けて。結局この3人が残ったんです。
──そこで、最後まで残ったこの3人でいこうってなったんですか?
ゲイリー 結局ギターが入るとキーボードと殺し合う部分がすごくあって。僕としてはちゃんとユコのキーボードは前に出ないとダメだなって思ってたし。ホワイトの次に入ったギターともそのへんのコミュニケーションがうまくいかなかったから、だったらしばらくギターを入れずにやってみようと。
CD収録曲
- UWABURN
- BeVeci Calopueno
- Hello!! Mr.Coke-High
- ATTENTION!
- 変な人
- ワタシハワタシ
- Smells like SURUME!!
- 821
- パンティくわえたドラ猫の唄
- Kitchen
- 愛と平和の使者
- rendez-vous
- 美沙子に捧げるラブソング(※初回限定盤のみ収録)
初回限定盤特典内容
初回限定盤には特典として「モーモールルギャバン直筆の絵やコメントが入っているかもしれないオリジナルフォトカード」封入。
モーモールルギャバン
ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)、ユコ・カティ(Key, Vo)、T-マルガリータ(B)からなる3ピースバンド。2005年4月に5人編成で活動を開始し、紆余曲折を経て現在の体制となる。関西地区を中心に活動を展開し、インパクトたっぷりのサウンドと破壊力抜群のライブパフォーマンスでリスナーを獲得。2009年3月にFM802主催の「MUSIC CHALLENGE 2008」でグランプリを獲得し、同年11月に初の全国流通作品となるアルバム「野口、久津川で爆死」をリリースする。2010年1月には第2回CDショップ大賞関西ブロックを受賞。同年6月にミニアルバム「クロなら結構です」をビクターエンタテインメント内のレーベル、Getting Betterからリリースした。