モーモールルギャバン|インド体験を経て生まれた初のセルフプロデュース作

モーモールルギャバンが新作ミニアルバム「IMPERIAL BLUE」をリリースした。前作「ヤンキーとKISS」以来1年4カ月ぶりの新作音源となる今作は、彼らにとって初のセルフプロデュース作品となっている。

音楽ナタリーでは新作ミニアルバムの完成を記念して、メンバーへのインタビューを実施。昨年に所属事務所を離れてからこれまでの出来事などを振り返りつつ、新作の制作エピソードについて話を聞いた。

取材・文 / 松永尚久

若い子に揉まれないとどんどんおっさんになる

──前作「ヤンキーとKISS」のリリースから1年。最近ではつしまみれの主催ツアー「外タレまみれツアー2018」でアメリカ、ヨーロッパ、韓国のバンドと対バンをするなど、幅広いバンドとライブをしている印象が強いですね。

モーモールルギャバン

T-マルガリータ(B) 確かに対バンは多いですよね。

ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo) 若いバンドたちに揉まれていかないと、どんどんおっさんになってしまうんでね(笑)。昨年に所属事務所を離れたことをきっかけに、バンドをフラットな状態を保っておきたくなったというか。利益とか、そういうことを度外視して面白いと思ったことは積極的にやらせてもらおうという気持ちになりましたね。

ユッカ(Key, Vo) それで若い子たちのエネルギーをいっぱい吸収してやろうと思って競演するんですけど、皆さん驚くほどの演奏力の高さで、反省させられる毎日です(笑)。先日の「外タレまみれツアー2018」では、国によってテイストが全然異なる音に改めて刺激を受けたし、1年を振り返っても勉強になることが多い時間を過ごしたなと思います。

マルガリータ うん。この1年はライブ続きで、正直しんどい部分もあったけど、今改めて思うと充実した時間を過ごせていたなと。

──事務所から離れたことで、心境の変化は?

ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)

ゲイリー これからは真正面ですべての刃、つまり責任を自分たちで受けようという覚悟ができた感じです。誰にも頼ることができないので、地方のライブでのホテルの手配とかも、すべて自分たちでしなくてはいけない。以前にもそういう時期はあったんですけど、改めてやってみると宿泊代の高さに驚いて、今では大阪や仙台くらいまでだったら日帰りにしようとか。人間って現金な生き物なんだなと、改めて思いました(笑)。

──音楽活動以外のことにも目を向けなくてはいけないのは、大変そうですね。

ゲイリー でも音楽って生活から生まれてくるものだと思うから。きっと楽曲制作だけに専念していたら、今は大丈夫かもしれないけど、いずれは世間の感覚とずれたものしかできない気がするし、そういう意味でも逆にいい環境なのかなとは思います。

今の3人でどこまでできるのか?

──昨年の独立もあって今回のミニアルバム「IMPERIAL BLUE」はセルフプロデュースで制作されたわけですよね。

ゲイリー はい。全部の判断、決定を自分たちでしなくてはならなかったので、ひさびさに3人で膝を突き合わせて完成させたアルバムという感じです。

ユッカ これまでにさまざまな方々からいただいた知識や経験をフル活用して、今の3人でどこまでできるのか?を追求した内容になっています。私たちの持っている引き出しをすべてさらけ出した感じ。

T-マルガリータ(B)

マルガリータ セルフプロデュース作品は今回が初めてですけど、それこそ結成当初は3人だけで作っていたので、ちょっと懐かしい感じもしました。ただ制作自体は大変でした。ここ最近の作品は、デモの段階で弾くべきコードがあったので、それになぞらえて演奏すればいい感じだったんです。でも今回はゼロから考えていかなくてはいけなかったので。自分の演奏だけで精一杯で(笑)。

──全5曲を収録していますが、これは決め打ちで制作したんですか? それともいくつか候補があった中からセレクトした5曲なのでしょうか?

ゲイリー 候補は10曲くらいあって、その中から自分たちでちゃんと形にできそうなものを選んだ感じです。だから一番いい曲たちを入れたってことではなく。

ユッカ 「このタイミングだからこそ発表したい」と思った楽曲ももちろん入っています。私としては、今の状況でベストな選曲ができたのかなと思っています。

ゲイリー こう言ってますけどね、この人(ユッカ)は「自分で曲を作る!」とか言っておきながら、結局何も持って来なかったですからね! 全曲ゲイリー・ビッチェの作詞作曲になってしまったんですから。

ユッカ 作詞作曲をしたい願望は毎度強いんですけど、締め切りまでに間に合わなくて……(笑)。

ゲイリー この人はね、ただやりたいことが頭の中に渦巻いているだけで、具体的なものをまったく持っていないんですよ!

──そうなんですか?

ユッカ(Key, Vo)

ユッカ でも今回は制作の序盤からゲイリーの持ってきた楽曲が素晴らしいものばかりだったので、それをきっちり形にしたいという思いが強かったんですよ。だから、今回はそこに集中しようと。

ゲイリー でもこういうことって今回だけに限ったことじゃないよね。「作る作る詐欺」の典型なんですよ! ナタリーさんのインタビューにこのくだりを載せてもらうことで、彼女には「次こそは自分の曲を入れるぞ」と奮起してもらいたい(笑)。

ユッカ そんなに追い詰めないで……でもがんばります(笑)。

インドで気が付いた音楽の力

──「IMPERIAL BLUE」を作るにあたって、何かコンセプトはあったんですか?

ゲイリー あんまりテーマとかコンセプトを考えても仕方ないので、直感に従って制作を進めた部分が大きいです。収録曲の「7秒」なんて、途中で歌詞を調整する段階で迷走していたのですが、結局最初に書いたものに戻したりだとか。「これでいいのかな?」という思いを残しながら、進行していった感じがあります。

──つまり初期衝動を大切にしたと。

ゲイリー うん。確かにそういう部分はありますね。

ユッカ 中2感と言うか、多感な年齢の頃に一番好きで聴いていた音楽を、ここでさらけ出していこうとした部分はあるのかも。

ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)

ゲイリー 自分が小学生の頃に聴いていたB'zとか、これでもかってくらいカッコ付け過ぎなくらいカッコいい音楽があふれていた。そういうものを自分たちでも作っていいのかなって。

──「IMPERIAL BLUE」ってタイトルも、モーモールルギャバンらしからぬと言うか、1990年代っぽいと言うか。ヒーローっぽいカッコよさがありますよね。

ゲイリー 中高生とかが、「カッコいい」って食い付いてくれるのかなって。狙いました(笑)。

──どういうきっかけで、このタイトルに?

ゲイリー 今年の春に初めてインドへライブをしに行ったんですよ(参照:モーモールルギャバンが出演するインドのフェス、日本からの出演者募集中)。本当は余裕のあるスケジュールで飛行機のフライトを予約してもらっていたんですけど、トラブルで深夜に到着して、翌日の早い時間にはライブをしなくてはいけない事態になったんです。それでも僕はどうしても寝る前にお酒が飲みたくて、主催者の方に無理言ってお願いしたところ、「IMPERIAL BLUE」という名前のウイスキーを用意してくれたんです。それを飲んだ翌日にライブをやったら、言葉もわからないのに現地の女の子が全力で踊ってる姿を目の当たりにして、「音楽ってすげー力があるんだな」と改めて感じることができたんです。なぜだかそのとき、日本でやさぐれて毎日酒に溺れていた生活を改めなくては、と思うようになった。そんなきっかけを与えてくれたのが、「IMPERIAL BLUE」だったなあと思って、新作のタイトルにしました。

マルガリータ インドでの体験は衝撃的でしたね。言葉が伝わらなくても、音楽で心は通じるということを実感させてくれました。人生観を変えられたと言っても過言ではないかも。今ではすっかり元通りになってしまいましたが(笑)。

──アルバムの冒頭を飾るタイトル曲は、雲ひとつない青空を思わせる爽快感のある仕上がりでしたね。

ゲイリー まあ、ただの酔っ払いが見た景色をつづった歌なんですけどね(笑)。

モーモールルギャバン「IMPERIAL BLUE」
2018年9月26日発売 / Bellwood Records
モーモールルギャバン「IMPERIAL BLUE」

[CD]
1800円 / BZCS-1169

Amazon.co.jp

収録曲
  1. IMPERIAL BLUE
  2. 7秒
  3. AI ha MABOROSHI
  4. 海へ
  5. やんなっちゃった BODY
ツアー情報
モーモールルギャバンTOUR 2018「Yeahhhh!! ムチャしやがって」
  • 2018年10月12日(金)東京都 LIQUIDROOM<出演者> モーモールルギャバン
  • 2018年10月14日(日)愛知県 CLUB UPSET<出演者> モーモールルギャバン / Su凸ko D凹koi
  • 2018年10月20日(土)大阪府 LIVE HOUSE Pangea<出演者> モーモールルギャバン / ビレッジマンズストア
  • 2018年10月21日(日)福岡県 Queblick<出演者> モーモールルギャバン / 挫・人間
  • 2018年10月27日(土)北海道 Spiritual Lounge<出演者> モーモールルギャバン / クリトリックリス / HANABOBI(オープニングアクト)
  • 2018年10月28日(日)北海道 CASINO DRIVE<出演者> モーモールルギャバン / OVerHeAT(オープニングアクト)
  • 2018年11月2日(金)宮城県 仙台MACANA<出演者> モーモールルギャバン / MASS OF THE FERMENTING DREGS
  • 2018年11月3日(土・祝)岩手県 盛岡Club Change<出演者> モーモールルギャバン / and more(オープニングアクト)
  • 2018年11月10日(土)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room<出演者> モーモールルギャバン / セックスマシーン / ふちなし(オープニングアクト)
  • 2018年11月11日(日)奈良県 奈良NEVER LAND
    ユッカ凱旋記念ワンマン
    <出演者> モーモールルギャバン
  • 2018年11月17日(土)福岡県 LIVE HOUSE MARCUS<出演者> モーモールルギャバン / 首振りDolls
  • 2018年11月18日(日)香川県 高松MONSTER<出演者> モーモールルギャバン / and more(オープニングアクト)
  • 2018年11月23日(金・祝)鹿児島県 SR HALL<出演者> モーモールルギャバン / 姫と家来。(オープニングアクト)
  • 2018年11月25日(日)熊本県 熊本Be.9 V2<出演者> モーモールルギャバン / Klagenicole(オープニングアクト)
  • 2018年12月1日(土)京都府 磔磔<出演者> モーモールルギャバン / SAKANAMON
  • 2018年12月2日(日)石川県 vanvanV4<出演者> モーモールルギャバン / and more(オープニングアクト)
  • 2018年12月8日(土)群馬県 高崎clubFLEEZ
    矢島丸山凱旋FINAL SPECIAL 2MAN
    <出演者> モーモールルギャバン / and more
モーモールルギャバン
ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)、ユッカ(Key, Vo)、T-マルガリータ(B)からなる3ピースバンド。2005年4月に5人編成で活動を開始し、紆余曲折を経て現在の体制となる。関西地区を中心に活動を展開し、インパクトたっぷりのサウンドと破壊力抜群のライブパフォーマンスでリスナーを獲得。2014年5月より制作に集中するためライブ活動を休止するが、2015年3月からのツアー「蘇る無茶と野獣ツアー2015」でライブ活動を再開させた。2015年6月にレーベル移籍後第1弾作品にして3年3カ月ぶりとなるフルアルバム「シャンゼリゼ」を、2016年6月にミニアルバム「PIRATES of Dr. PANTY」を発売。2017年3月にクラウドファンディングでミュージックビデオ制作プロジェクトを展開し、支援金をもとに新曲「ガラスの三十代」のMVを制作した。5月に新作フルアルバム「ヤンキーとKISS」を発表。2018年9月に新作ミニアルバム「IMPERIAL BLUE」をリリースし、10月より全国17カ所を回るツアー「Yeahhhh!! ムチャしやがって」を開催する。