モーモールルギャバン|常に今が最高の3人が送る自信作

モーモールルギャバンがフルアルバム「ヤンキーとKISS」をリリースした。今作はメンバーそれぞれが演奏力や個性を追求しつつ、過去作よりもシンプルなサウンドで説得力のある内容に仕上がっている。ライブ活動再開以降、2015年のアルバム「シャンゼリゼ」、2016年のミニアルバム「PIRATES of Dr. PANTY」を経て、3人が自信を持って完成させた新作について話を聞いた。

取材・文 / 松永尚久 撮影 / 後藤倫人

カラオケ通いで歌の説得力が増した

──モーモールルギャバンの活動がスタートして今年で12年経過しましたが、バンド内の環境に変化はありますか?

モーモールルギャバン

ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo) 楽曲制作の手法は全然変わりませんね。周囲のスタッフは変化しましたけど。でも、見た目はずいぶん変わりましたね。メイクをして、乳首を金色に塗ってステージに立つとか……さすがに「やりすぎだろ!」って。そこは以前に戻します(笑)。

──前作フルアルバム「シャンゼリゼ」からほぼ2年、そしてミニアルバム「PIRATES of Dr. PANTY」の発表から約1年ぶりのフルアルバム「ヤンキーとKISS」が完成しましたが、この期間はバンドにとってどんな時間だったのでしょう?

ゲイリー 「シャンゼリゼ」の頃からそうだったんですけど、暇さえあればボイストレーニングと言うか、カラオケに行っていましたね。だから今では歌がウマすぎになっちゃって説得力が増しました(笑)。

ユコ=カティ(Key, Vo) 私もこれまでメインじゃないから、と後回しにしてきたボーカルの練習をするようにしました。今までは力技みたいな感じでなんとか歌ってきたところがあったんですけど、それだけでは声がもたない。だから力技は「ここぞ」というときのために温存して、しっかりとした発声をマスターしないといけないとようやく思いまして(笑)。

T-マルガリータ(B) ベースに関しては、スタイルが変化してきました。以前だったら指だけで弾いていたものを、最近はピックを使う場面も増えましたし、音を歪ませてみたりとか。バンドのサウンド自体は徐々にシンプルになっているので、曲に合うフレーズや音を探しながら演奏するようになってきましたね。

素材のよさが出る塩味に近い音

──以前に比べると、本作は格段にシンプルなサウンドになっている気がしました。

ユコ 確かに前作「PIRATES of Dr. PANTY」より、音数を減らしていこうという流れになりました。音を闇雲に加えていくやり方よりも、あるべき場所にあるべきものだけを配置していく方法が、音楽として正しいと思うので。その作業を手探りしながら進行させていった感じです。

ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)

ゲイリー 音がシンプルになったのは、たぶん僕のドラムがうまくなり過ぎたのが原因なんですよ! 8ビートをただ叩くだけでも、自然とカッコよく聞こえるようになっちゃった(笑)。例えば料理だと塩だけで味付けされたもののほうが、素材のよさが伝わって結局のところ一番おいしいみたいなことってあるじゃないですか。音楽に関してもそう。ドラムを華麗に叩ける人間がいるのだから、ゴチャゴチャといろんなものを混ぜるのは、失礼じゃないかと。

──なるほど(笑)。

ゲイリー シンプルな音でも説得力のある一流のバンドにようやくなれたんだと思いますよ。あとはライブの動員だけが一流になってくれたら……。

ユコ まあ確かに(笑)。そろそろ第2の大きな波が訪れてくれないと。

ゲイリー お笑い芸人さんの世界では「2度ブレイクして一人前」と言われるらしいんですけど、音楽業界も同じじゃないかなって。メジャーに進出した2011~12年頃が1回目の波だとしたら、そろそろ2回目が来てくれないと我々、経済的にしんどいかなぁ……と。バイトの求人広告とかをチェックしないといけなくなる。そろそろ30代も中盤に差しかかるので、求人も限定されたものになってしまうし(笑)。

──切羽詰まった感があるんですね(笑)。

ユコ 私は「売れたい!」という発想はあまりないんですけどね(笑)。

ゲイリー この人はインディーズ時代とか売れない時期は実家暮らしだったので、バイトしながらバンドを続けることの苦労を知らないんですよ。僕やマル(マルガリータ)は、年間100本くらいライブをこなしながらバイトをして生活費を稼ぐという暮らしを20代の頃ずっとしていたから、もうそんな状況には戻りたくはないんですよ!

ユコ でも「売れたい!」と考えて音楽を作るのって、なんだか温かみがない気がする。売れる音楽っていうのは、世の中の人々が求めて「好き」と言ってくれるものだと思うんです。それを作るためには、まず作り手が楽しい気分じゃないと生まれないのかなって。売れることをストイックに追求しすぎてしまうと、音が堅苦しくなってしまいそうだし。

モーモールルギャバン
「ヤンキーとKISS」
2017年5月31日発売 / KING RECORDS
モーモールルギャバン「ヤンキーとKISS」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3456円 / KICS-93492

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モーモールルギャバン「ヤンキーとKISS」通常盤

通常盤 [CD]
3024円 / KICS-3492

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CD収録曲
  1. AKABANEの屍
  2. ガラスの三十代
  3. 亜熱帯心中
  4. GIKKURI
  5. ミナロマンス
  6. ロックミュージック
  7. 異邦人
  8. 贖罪
  9. 夢ならば覚めてくれ
  10. OTOMI
  11. 彷徨う馬鹿者の全て
初回限定盤DVD収録内容
  • 「さらば人類」「Dr.PANTY」「ガラスの三十代」 Music Video
  • 特典映像「ガラスの三十代」Music Video Making

ツアー情報

モーモールルギャバン NEWアルバム「ヤンキーとKISS」発売ツアー
「KISSだけじゃ済まないリリースパーティー2017」
  • 2017年7月14日(金)愛知県 池下CLUB UPSET
    出演者
    モーモールルギャバン / KING BROTHERS
  • 2017年7月16日(日)東京都 WWW X
    出演者
    モーモールルギャバン / 打首獄門同好会
  • 2017年7月23日(日)京都府 磔磔(※ワンマンライブ)
    出演者
    モーモールルギャバン
モーモールルギャバン
モーモールルギャバン
ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)、ユコ=カティ(Key, Vo)、T-マルガリータ(B)からなる3ピースバンド。2005年4月に5人編成で活動を開始し、紆余曲折を経て現在の体制となる。関西地区を中心に活動を展開し、インパクトたっぷりのサウンドと破壊力抜群のライブパフォーマンスでリスナーを獲得。2014年5月より制作に集中するためライブ活動を休止するが、2015年3月からのツアー「蘇る無茶と野獣ツアー2015」でライブ活動を再開させた。2015年6月にレーベル移籍後第1弾作品にして3年3カ月ぶりとなるフルアルバム「シャンゼリゼ」を、2016年6月にミニアルバム「PIRATES of Dr. PANTY」を発売。2017年3月にクラウドファンディングでミュージックビデオ制作プロジェクトを展開し、支援金をもとに新曲「ガラスの三十代」のMVを制作した。5月に新作フルアルバム「ヤンキーとKISS」を発表し、7月にはライブツアー「KISSだけじゃ済まないリリースパーティー2017」を行う。