LiSA「LACE UP」インタビュー|15年分の思いをまとめて編み上げた7thアルバム (3/3)

水野良樹の力を借りて素直な思いを伝えるバラードを

──アルバム中盤の「あばよ」と後半の「HELLO WORLD」は、LiSAさんの作品ではすでにおなじみの小南泰葉さんの作曲です。小南さんの提供曲は、LiSAさんのルーツの中でもアヴリル味のする要素を担っているような。

そうですね。「あばよ」は実はずいぶん前に書いていただいていた楽曲で。「LACE UP」はなんというか、全部味が濃いんですよ。だから、ちょっとつまんで食べられる豆みたいな曲が欲しくて。ステーキやハンバーガーばかり並んでいるとちょっと胃もたれするから和食が欲しい、みたいな。それで前にもらっていた「あばよ」を入れたいとお話ししたんですけど、レコーディングしているうちに楽しくなっちゃって(笑)、けっこうこってりしたタイプの和食になっちゃいました。

──音数は少なくシンプルなロックに聞こえるものの、意外と展開が多くて。

そうそう。「HELLO WORLD」は前作の「LANDER」(2022年11月発売の6thアルバム)を出したあと……コロナ禍の出口が見えてきた頃に、新しい世界に「こんにちは」と言えることを望んでいたときの楽曲ですね。

──新たな作家との組み合わせという意味では「HOMEだよ」も驚きでした。まさか、いきものがかりとLiSAさんが同じ土俵に立つ日が来るとは。

私も「ここにたどり着ける日が来るとは」と思いました。水野(良樹)さんが作られているいきものがかりの楽曲だと、私は「気まぐれロマンティック」や「笑顔」が好きなんですけど、そういう身近で温かい雰囲気の楽曲は私には書けないから、水野さんの力を借りて、素直に伝えられる曲が欲しいと思って水野さんに相談しました。

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──アルバムにおけるバラードのポジションを水野さんに一任したと。こういったJ-POPの王道的なバラードを、15周年を迎えた今のLiSAさんが歌っているというのがすごくよいなと思いました。

私もそう思います。うん。歳を重ねてきたからこそ、15年やってきたからこそ……私と同じように家から逃げ出したくてライブに来ていたような子たちが、大人になって、就職して、ある子はお父さんやお母さんになって、子供と一緒に私のライブに来たり、「鬼滅の刃」がきっかけで仲の悪かった家族と一緒に来たり。15年かけたからこそ見えるみんなのストーリーもあって、そういうみんなが家族に歌える曲があるといいなと思って作ったのが「HOMEだよ」なんです。

──作詞は水野さんとLiSAさんの共作ですが、この「HOMEだよ」というタイトルはおそらく水野さんですよね。なんとなく、LiSAさんからは出てこないような……。

そうですね(笑)。

──「残酷な夜に輝け」「ブラックボックス」「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」という非常に味の濃い既発曲を挟んで、12曲目の「シャドウ」は、「ハルシネイト」(2024年5月発売のシングル「Shouted Serenade」収録曲)に続くツミキさんの提供曲です。ツミキさんは今Aoooのドラマーとしても大注目ですけど、マルチプレイヤーで作編曲家としてもキレキレで、全方位的に天才肌だなと。

ですよね。ドラマーだからロックバンドらしい音楽が得意な人なのかなと思ってたんですけど、ラップのセクションなんかはすごくダンスミュージックっぽくって。なんでこういうことができるんですか?って聞いたら、実はブラックミュージックもすごく好きだとおっしゃっていて。そっちのルートもあるんだ、本当になんでもできるんだなって驚きました。ちなみにこの曲ではベースをAoooのやまもとひかるさんが弾いてくださってるんですけど、ひかるさんのスラップはなんというか、男らしくない、ゲームの中から出てきた女の子みたいなかわいさがあってすごくいいんですよね。

ライブで出会う衝撃が一番の音楽体験

──LiSAさんは今もアルバムを定期的に、CDというパッケージで作り続けていますよね。先日ナタリーで公開したDREAMS COME TRUE中村正人さんのインタビューが興味深くて、ゲストとして来てもらった映秀。さんは2002年生まれで、本当にアルバムというものがよくわからなかったそうなんですね(参照:DREAMS COME TRUE「THE BLACK ◯ ALBUM」特集)。LiSAさんのアルバムやパッケージに対するこだわりは?

サブスクが浸透したことで、私もそうですけど、見つけやすくはなりましたよね。日本では全然知られていない、地元のライブハウス規模でやっているイギリスのアーティストなんかにも好みの音楽がサブスクを使っているといっぱい見つかる。それは自分の栄養にもなっていますし、同じように私のことを見つけてくれることもありますよね。アニメのことを全然知らない人がLiSAにたどり着くこともあるっていう。そこにはすごく希望を感じます。だけど私も昭和の人間なので(笑)、好きなアーティストのCDは買います。物として欲しいから。

──ドリカムは今回あえてCDのみを先行してリリースし、サブスクは後回しにするという手段を取っているそうです。「アルバム1枚を通して聴く」という体験を優先してもらうためにCDで聴いてもらいたいと。

田淵先輩もソロカバーアルバムをCDのみにしてましたよね(参照:田淵智也ソロアルバムでピロウズ、クリープハイプ、ヒトリエ、赤い公園、DIALOGUE+、ユニゾンほか11組カバー)。サブスクで知った音楽は、歌詞カードを読みながら聴いていた曲ほど歌えない。歌詞を読みながら「私もこの人みたいに歌いたい」と思っていたようなことが今はできないから、そこは考えないとですね。でも私は何より、自分が新しい音楽を知る体験として一番衝撃を受けたのがライブだったんですよ。すぐにCDが売れなくても、ライブで出会った曲が衝撃的で、思い出とともにその人の中に残る曲になってくれることが私は一番うれしいかも。いずれアルバムにたどり着いたときに、そこにある物語を楽しんでもらえたら。興味を持ったうえで楽しんでもらえるのが、アルバムについては一番うれしいかもしれません。

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たぶん気が付いたら18周年くらいになっている

──「LACE UP」を携えての15周年ツアーが4月の武道館を皮切りにスタートしますが……この「LiVE is Smile Always~15~(iCHiNiTSUiTE GO)」というタイトルをパッと見たときは「何が書いてあるんだ?」と思いましたけど、「位置についてゴー」ですね。

はい(笑)。まあ15周年のスタートダッシュなんで。

──アルバムを締めくくる「Patch Walk」で「歩き続けて また会いましょう」と歌っている通り、15周年については「ここまでたどり着きました」というよりは「ここから行きますよ」という気持ちが大きい?

そうですね。14周年を駆け抜けて、スタートの準備ができました。ツアーは15周年のスタートダッシュとして……アルバムのツアーではありますけど、まずはやっぱりみんなと15年分のお祝いをちゃんとしたい。いいライブにしようと思っています。「PATCH WALK」の続きじゃないですけど、出会ってくれたみんなが、出会ったタイミングのことを思い出せるようなライブにしたい。

──現状は国内ツアーと6月からのアジアツアー、さらにヨーロッパツアーが決まっています。まだ発表できないことも含めていろんなことを企んでいるんだと思いますが。

今年1年で、これまでやってないこともたくさんやりながら、15年の間に浮かんじゃった名案を叶えていたら……たぶん気が付いたら18周年くらいになっていると思います(笑)。

──相当な計画がすでにあると。

はい。走り出したらみんなも気付けば3年くらい経っていると思うので、ちゃんとついてきてください(笑)。

──これからの表現につながっていきそうな新しい刺激は、最近何かありましたか?

なんだろうな……心拍数ですかね。

──心拍数?

2026年は何かを始めるのにいい年だと言われていて。それは私がではなく、地球のみんなが。で、私も何か新しいことを始めたいなと考えていたときに、例えば山登りとかバイクに乗るとか、そんなことも考えたんだけど、ケガをしたらいろんな計画が崩れちゃう。風邪をひいてもよくないし、何かを始めて体に影響があったら本末転倒だなと。そんな中で、気を付けながらパワーアップしていかなくちゃいけないのは体力だから、それを楽しくできないかと思ってたどり着いたのがヒートトレーニング。ヒート、つまり心拍数をいつものライブの後半くらいまで上げて、それをどれだけキープできるか、という。

──へえー。そういうストイックに記録を追求するようなことはもともと好きなんですか?

いえ。私はめちゃくちゃせっかちな性格だから、LiSAに関係ないことに時間を使えないんですよ。ヒートトレーニングは直接的にLiSAをよくしてくれるものだから。

──LiSA業に関わらないものはわりと切り捨ててしまう?

そうですね。LiSA業にプラスにならないことはあまりやらないかもしれないです。

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公演情報

LiSA 国内ツアー「LiVE is Smile Always~15~(iCHiNiTSUiTE GO)」

  • 2026年4月17日(金)東京都 日本武道館
  • 2026年4月18日(土)東京都 日本武道館
  • 2026年4月28日(火)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2026年4月29日(水・祝)兵庫県 ワールド記念ホール
  • 2026年5月19日(火)愛知県 日本ガイシホール
  • 2026年5月20日(水)愛知県 日本ガイシホール

LiSA アジアツアー「LiVE is Smile Always~15~」

  • 2026年6月7日(日)クアラルンプール MEGA STAR ARENA
  • 2026年6月19日(金)台北 Taipei Arena
  • 2026年6月20日(土)台北 Taipei Arena
  • 2026年7月18日(土)香港 AsiaWorld-Arena
  • 2026年8月1日(土)ソウル Olympic Hall
  • 2026年8月2日(日)ソウル Olympic Hall

LiSAヨーロッパ&UKツアー「LiVE is Smile Always~15~」

  • 2026年9月15日(火)ミラノ Unipol Forum, Milan
  • 2026年9月17日(木)デュッセルドルフ Mitsubishi Electric Halle
  • 2026年9月20日(土)パリ Zénith Paris – La Villette
  • 2026年9月22日(火・祝)ロンドン Troxy

プロフィール

LiSA(リサ)

6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。2014年1月に初の東京・日本武道館ワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。2019年4月にシングルとしてリリースしたテレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」が大ヒットを記録し、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2020年には映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」で「第62回日本レコード大賞」大賞を受賞した。デビュー15周年を迎える2026年4月に通算7枚目のフルアルバム「LACE UP」をリリース。同月より15周年ツアー「LiVE is Smile Always~15~(iCHiNiTSUiTE GO)」を行い、6月よりアジアツアー「ASiA TOUR 2026 LiVE is Smile Always~15~」で台北、香港、ソウルなどを回る。