LiSA|大注目の中でリリースされるソロデビュー10周年記念作 自分自身を壊して作り上げた11年目のLiSA

アヴちゃんの力を借りて“LiSA”を壊す

──J-POPド王道のバラードが来たかと思えば、アヴちゃん(女王蜂)とタッグを組んだ「GL」はJ-POPとしてもLiSAさんのディスコグラフィとしても異色で。この曲はなんというか……最高ですね。取材用のメモにも「最高!!」としか書いてないです。

ありがとうございます(笑)。本当に最高なんですよ。

──サウンドの質感的にはK-POPに接近している感じもあり、いろんな新しい要素が3分に凝縮されていて。LiSAさんの新たな可能性がすごく感じられるというか、この曲を発端にこの方向でまた10年分くらい新たな道を開拓できるんじゃないかという。

アヴちゃんは強い使命を持ってアーティスト活動をされている方で、これは私がアヴちゃんに曲を書いてほしいと思った理由でもあるんですけど……アヴちゃんは、自分が言いたいけど言えない、今のLiSAの仮面をかぶってだと言えないけど確実に自分の中にある感覚を、歌で表現している人なんです。そのアヴちゃんの言葉を自分自身として歌いたい、アヴちゃんを介して言いたいと思った。「いやいやいや、アヴちゃんが言ってるからね」って(笑)、アヴちゃんの力を借りて、自分自身の気持ちを歌って発散したかったというか。1曲目の「RUNAWAY」でやったことにも近いんですけど、自分自身を壊したかった。みんなが気持ちを委ねている“LiSA”というもの……「こうであるべきLiSA」がこの10年で私自身やみんなの中にできあがっていたと思うんですけど、それって、どれも私だし、どれも私ではないんです。

──LiSAというのはLiSAさんご自身ではあるんだけど、もはや個人の頭や体の中に存在するものだけを指す存在ではなくなっているということですね。

はい。アヴちゃんには「私、怒ってるんですよ」って伝えました(笑)。「怒ってるんですよ。でもうまく怒れないから、代わりに怒ってください」って。アヴちゃんにすごく信頼を委ねているので何も言うことはなく、ただ「怒ってるんです」とだけ伝えました。

──その結果できあがったのは、アヴちゃんによるLiSAの“当て書き”ですよね。

そうですね。本当にそう思います。アヴちゃんの誠実さがすごく出ている曲で、特に歌詞にはLiSAという名前や「ねり練り」「ばいち」って言葉が入っていたり……。

──LiSAさんがよく使う“LiSA語”的なフレーズがしっかり盛り込まれてますね。

「天使にラヴ・ソングを…」は私が好きな映画なんです。ちゃんとこう、「LiSAをやります」「愛される努力をします」という基盤を持ったうえで「でも私は私らしく生きていくわ」という意思を込めてくれていて。私自身では臆病で言い切れなかったことも、アヴちゃんが筋を通して言ってくれた。

──その「筋を通して」が重要ですよね。LiSAさんのことを深く理解して書いたんだなと感じます。この曲が届いたとき、LiSAさんはさぞかしうれしかったろうなと。

うれしかったです。ホントに「最高!!」って思いました(笑)。

LiSA

すべてを委ねても変わらないという自信が今はある

──MAH(SiM)さん作編曲の「ViVA LA MiDALA」はLiSAさんの得意路線の進化系、という印象でした。荒々しく突っ走るような勢いがありながら、じっくり聴くと細かく作り込まれていて。

そうですね。MAHさんには以前、ノンタイアップの両A面シングル「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」(2014年9月発売)で「L.Miranic」を書いてもらって。この作品は私にとって2枚目のノンタイアップシングルということもあって、自分の好きなもの、自分自身が持ち合わせているロックの最高峰を打ち出したいと思ってMAHさんにお願いしたんです。そのことは自分にとって10年を振り返る中でも大きくて。その後ライブで「L.Miranic」をMAHさんと一緒に歌ったとき、この曲が完成した感じがしたんです。「自分がやりたかった最高峰のヘヴィロックサウンドはこれだな」と思ったので、この10周年の節目で、「L.Miranic」でたどり着いた路線の最高潮をもう一度MAHさんと組んで見せたかったんです。

──なるほど、「ViVA LA MiDALA」は「L.Miranic」で開拓した道筋の今を表現した曲なんですね。

ただ、デビュー3年目の「L.Miranic」と今では私自身のヘヴィロックの解釈も変わってきましたし、当時はまだ「誰かの色に染まったら染められ切ってしまう」という不安があって、完全に委ねることはできなかったんです。でも今の私なら、すべてを委ねても私自身は変わらないという自信がある。

──その違いは大きいですよね。経験がものを言う自信というか。この曲に限らずですが、全体的に自信に裏打ちされた余裕のようなものをすごく感じるんですね。切羽詰まる必要のない感じ。

そうかもしれない。今回はMAHさんに完全に飲み込んでもらうような気持ちで挑みました。MAHさんのコーラスが入って「この曲が完成したな」と思いましたね。

LiSA

「ちゃんとLiSAでいなさいよ」という
北川悠仁からのメッセージ

──と思えば「ノンノン」ではまた未開拓の新機軸が顔を覗かせます。作曲はゆず北川さん、編曲は野間康介(agehasprings)さんという布陣で、ここまでポップに振り切った曲はなかったですよね。

さっきのB'zさんもですけど、ゆずさんもみんなが求めるゆずをやり続けているからこそ、ずっと第一線を走っているんだと思うんですよ。ゆずのライブに行くと、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、会場にいる全員が踊ってるんですね。ゆずのお二人はそれを全部「受け止めてやるよ!」という感覚で“みんなのゆず”をやり続けている。デュオとしてだけの魅力ではなく、エンタテインメントとしての音楽性をすごく広げた大先輩。私もその魅力にハマってしまったし、「これもやっていいんだ」という可能性を広げてくれた2人でもあったので、いつか曲をお願いしたいなと思っていたんです。そしたら北川さんが「書きたい」と言ってくれて。

──なるほど。作詞はLiSAさんと北川さんの合同クレジットとなっていますが、なぜ共作になったんですか?

北川さんから「LiSAちゃんのファンが楽しんでくれるために10周年をお祝いする曲だから、LiSAちゃんの言葉も気持ちも入っていたほうがいい」と提案してくださったんです。やっぱり北川さんは目の前にいるお客さんのことがすごく見えていて。そのスタンスを見て「だから私はゆずが好きなんだな」と思いました。今回参加してくれたアーティストの皆さんがすごいのは、今の私をちゃんと見て、それぞれ私に託してくれているんですよね。「今のLiSAならこれをやったほうがいい」「今のLiSAにはこれが必要だ」という思いを先輩たちが託してくれているというか。

──「託してくれている」ってすごくいいですね。

ゆずのライブに行くと、元気になって帰ってくるんですよ。この曲では私が北川さんの力を借りたことで、私のライブに来た人が元気になっちゃうような楽しさとキュートさがありますし、それを北川さんが私に託してくれたというのは、「ちゃんとLiSAでいなさいよ」という北川さんのメッセージなのかなって(笑)。ある意味「紅蓮華」と「炎」だけじゃないんだよ、という衣装を着せてくれたような感じもあって。この作品で先輩たちからいろんなバトンを受け取った気がします。