音楽ナタリー Power Push - LACCO TOWER
チャレンジと素直な心情が織り成す“心臓文庫”
「自分って必要なのかな」って思いながらずっと生きてきてる
──7曲目は「世界分之一人」。メッセージ性の強い歌詞が印象的です。
松川 僕は「自分って必要なのかな」って思いながらずっと生きてきてるんですよ。世界という、ある種あいまいなものに否定されているような気持ちになってしまうというかね。でも、ふとしたときにはそういう思いから切り離されてすごく前向きにがんばれたりもする。そういう不安定性さって、案外みんなも同じじゃないかなって思うんですよね。だから、いろんな不安もあるけど「大丈夫だよね、俺。なんとか行けるよね」っていう思いを歌詞にしたかったんです。このタイトルが出てきたときはバッチリだなって思いましたね。
真一 この曲は初めAメロの部分だけがあって。曲にしようと思ったけどなかなかできなかったんでちょっと置いておいたんです。で、今回引っ張り出してきてみたら最後まで作ることができて。そのときに天才だなと思ったわけなんですけど。
重田 この曲は最初の段階から一番変化した曲だよね。ギターやピアノ、歌が入ることでこんな曲になるとは思わなかった。
塩﨑 そうだね。正直俺、この曲の最初の印象はあんまりよくなかったんですよ。でもそれがすごくいい変化を遂げた。
──8曲目は、映画「劇場版 新・ミナミの帝王」の主題歌に決定した「秘密」です。
真一 これはシングルのカップリング用に作り始めた曲だったんで、かなり好き放題やってますね。変な拍子だし。でも、これを作ってるときすごく楽しかったし、このアルバムの方向性を決めるきっかけの1つになってるような気もしますね。わかりやすさを意識するよりも、もっと攻めようっていう意識が芽生えたというか。
細川 この曲すごく好きです。メロディの感じも含め、一番“歌ってる”曲なんじゃないかな。ギタープレイも特に悩まずサラッとできて、それがしっかりハマったと思いますね。
松川 僕もアルバムの中で一番、この曲が“歌った”と思いますね。感情むき出しで。こういう歌の雰囲気はすごく好きです。タイトルに「秘密」とつけたところも含め、言いたくないことを言う、見せたくないところを見せるみたいな感情が歌にも出てるような気がします。
バンドとして少し大人になった
──9曲目は「珈琲」。冷めていく思いをコーヒーに重ね合わせた叙情的な世界観がいいですね。
真一 これはケイスケの曲でかなり前から聴いたことがあったんですけど、今回初めて歌詞付きのものが上がってきたんですよね。聴いた瞬間、これは絶対アルバムに入れようって思いました。それを決めた俺、天才だなって思いました。もちろんケイスケに対しても天才だとは思いましたけど。
松川 コーヒーが大好きなので、いつかこのタイトルの曲を書きたいなと思っていて。今まではあえてエグいことを書こうっていう意識がどこかにあったんですけど、今回はそういうのはまったくなくて。この曲では単純に心象風景と情景をきれいに書きたかった。書きながらミュージックビデオが浮かんでくるような曲になったと思います。
──そしてラストは「相思相逢」。温かなエンディングですね。
真一 この曲は気合いを入れて作りました。たぶん今までで一番メジャー感がある曲ですね。聴いたらすぐ覚えられるような単純なメロディだけど、実は深いみたいなところとか、細かいところまでかなり計算して作っています。1年前くらいに作った曲なんで、今改めて演奏してみるとジャニーズの曲をコピーしてるみたいな感覚になるんですよ。僕はジャニーズの曲がすごく好きでよく聴いたりしてるので、それに近い雰囲気を持った曲になったなって。
細川 けっこう転調とかいろいろやってるけど、あまり難しく感じさせず、いかにナチュラルに聴かせるかがポイントになる曲で。けっこう苦戦はしたけど、いい仕上がりになったと思いますね。
重田 俺、好きっすね、この曲。歌詞もいいですし。
松川 結婚式で披露できる曲がないバンドっていうのがLACCO TOWERの代名詞でしたけど、とうとうできちゃいましたね。意固地になってバンドとしての表現を狭めるのではなく、素直になって間口を広げたいっていう思いが今回はけっこうあったんですよ。そういう意味でも、今回のアルバムを通してバンドとして少し大人になったんじゃないかな。
収録曲
- 罪之罰
- 未来前夜
- 薄紅
- 蜂蜜
- 楽団奇譚
- 蛍
- 世界分之一人
- 秘密
- 珈琲
- 相思相逢
独奏演奏会
- 2016年7月18日(月・祝)
- 東京都 LIQUIDROOM
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年の結成以来、都内と群馬を拠点に活動するロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014、2015、2016年に地元・群馬県の群馬音楽センターにて開催した。インディーズレーベルからアルバム4枚を発表し、2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビュー。「薄紅」でフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、同曲を収めたアルバム「心臓文庫」を2016年6月にリリースする。