LACCO TOWER|17年目のロックバンドが

LACCO TOWERがニューアルバム「若葉ノ頃」を8月22日にリリースした。

昨年8月リリースの前作「遥」でバンドが秘めていた圧倒的なメジャー感を覚醒させた彼らは、そこでの手応えを大きな糧として本作を完成させた。変化を強く意識することなく自然体のクリエイティビティで作り上げたという楽曲群からは、さらなる進化を遂げた新たなLACCO TOWERの姿を感じることができる。その状況を“成長期”と称し、渾身のアルバムに「若葉ノ頃」と名付けた彼らの思いは、ここから先の遥かなる未来に向けられていることだろう。

結成16年を経たキャリアを持つバンドが生み出した、みずみずしい蒼さを感じさせる本作。その制作についてメンバー5人に話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 山川哲矢

メンバー全員のベクトルが同じ方向を向いていた

──新作「若葉ノ頃」の制作はいつ頃からスタートしたんですか?

真一ジェット(Key) 本格的な制作が始まったのは去年の末くらいからで、まずはタイアップが決まっている曲から作っていきました。タイアップを意識した曲を立て続けに作ってたから、最初はちょっと懸念もあったんですよ。アルバム全体としてもそういう曲ばかりになっちゃうんじゃないかなって。でも結果的には全然そんなことはなくて、バリエーションに富んだ曲がどんどんできた。今回もまた自分のことを天才だと思いましたね。

塩﨑啓示(B) 出た!

細川大介(G) そこに向けてしゃべってるよね。いつ「天才」と言おうかっていう(笑)。

──あははは(笑)。本作は、バンドとしてのメジャー感を打ち出した前作「遥」から地続きになっている印象がすごく強いですよね。

松川ケイスケ(Vo)

松川ケイスケ(Vo) まさにそうですね。今回は曲を作っていた時期がけっこうバラバラだったので、アルバムの全体像を見据えてというよりは、1曲ごとに集中して作業していたところがあったんですよ。で、最終的に曲が出そろった段階で見えたものを「若葉ノ頃」というタイトルや、アートワークなんかでギュッとまとめた感じで。

細川 「遥」は新しいLACCO TOWERが向かうべき場所を示してくれたアルバムだったので、今回の制作にあたっては「どんなアルバムを作ろうか」みたいなことをいちいち話し合う必要がなかったんですよね。みんなのベクトルが必然的に同じ方向を向いていたから。

塩﨑 10曲目に入っている「花束」は、実は前作のアルバム「遥」のときにレコーディングを終えていて。ある意味、僕らが新たに進んでいく道を示してくれるようなスケール感のある曲がすでにあったのも大きかったと思うんですよね。それによって前作をより深く更新するアルバムを作り上げることができたんじゃないかなって。

……開墾?

──過去にはアルバムのリードとなる強い曲が生まれるのをひたすら待っていた時期もありましたけど、今回はそういう状況にはならなかったわけですよね。

松川 ああ、確かにそうですね。ほかのメンバーはわからないけど、僕は今回、まったくそういうことは考えなかった。「若葉」という曲に関しても、リード曲だからとかアルバムの1曲目だからとか、そういうことをまったく考えないで詞を書きましたし。リードうんぬんじゃなく、すべての曲それぞれに気持ちがフォーカスしてたんだと思います。

細川 「花束」に加えて、「雨後晴」が制作の初期にできていたのも大きかったと思う。こんだけいい曲がすでに2つもあるんだから、あとはもうどんな曲が来ても大丈夫。好きにやってもいいアルバムになるだろうなっていう安心感があった。だからリード曲を待つみたいな感覚は一切なかったですね。

──ソングライティングを手掛ける真一さんも変に気負うことなく、ナチュラルにクリエイティビティを発揮されたんじゃないですか?

真一 そうですね。今思うと、「遥」のときは案外、無理してメジャー感を出そうとしていた気がするんですよ。でも今回はそれが自然と出てきたかなって。曲を生み出す苦労はもちろんありますけど、今はそこに無理やり感はないんですよね。

細川大介(G)

細川 演奏に関してもそういうところはあって。以前はフレーズ1つにしてもとにかく追い込んで作っていたんですよ。「前にやったプレイはもうやらない」とか「LACCO TOWERのギタリストとしてはこう弾かなきゃいけないだろう」とか考えながら、本当はシンプルでいいところでもあえて難しくしていて。でも「遥」を経た今は、曲を生かすことをより考えて、のびのび演奏できているんですよね。ナチュラルに自分自身を出せていると言うか。いい意味でエゴがなくなっているところもあるのかもしれないです。

真一 「遥」の制作では、LACCO TOWERの土地にあった大きな岩をどかして、しっかり開墾できましたからね。……開墾?

松川 屯田兵か、お前は!

真一 要は大きな岩をどかして土地を耕せたということです。で、今回はそこに種を植えて、もう芽が出ているってことですね。

──それがアルバムタイトルの意味するところなわけですよね。「前作は新たなLACCO TOWERの旅立ち」であり、「今作は成長期」だと松川さんはコメントされていましたが。

真一 そういうことです、はい。

塩﨑 真一は例えが下手なんだよ!(笑)

LACCO TOWER「若葉ノ頃」
2018年8月22日発売 / TRIAD
LACCO TOWER「若葉ノ頃」

[CD]
3240円 / COCP-40471

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 若葉
  2. 蜜柑
  3. 雨後晴(Album Mix)
  4. 薄荷飴
  5. 最果
  6. 狂喜乱舞
  7. 愛情
  8. 切手
  9. 非英雄
  10. 花束

公演情報

LACCO TOWER 「若葉ノ頃」発売記念ホールツアー2018「五人囃子の新時代」
  • 2018年9月8日(土) 群馬県 高崎市文化会館
  • 2018年9月16日(日) 愛知県 芸術創造センター
  • 2018年9月17日(月・祝) 大阪府 サンケイホールブリーゼ
  • 2018年9月24日(月・振休) 東京都 昭和女子大学人見記念講堂
LACCO TOWER「若葉ノ頃」発売記念ライブハウスツアー2018「五人囃子の新時代」
  • 2018年10月7日(日) 広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
  • 2018年10月20日(土) 群馬県 高崎clubFLEEZ
  • 2018年11月11日(日) 岩手県 the five morioka
  • 2018年12月1日(土) 静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2018年12月8日(土) 東京都 下北沢SHELTER
LACCO TOWER(ラッコタワー)
LACCO TOWER
2002年の結成以来、都内と群馬を拠点に活動するロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014年から4年連続で地元・群馬県の群馬音楽センターにて開催している。インディーズレーベルからアルバム4枚を発表し、2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビュー。「薄紅」でフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、同曲を収めたアルバム「心臓文庫」を2016年6月にリリースした。2017年3月にミニアルバム「薔薇色ノ怪人」を発表。2017年7月に亀田誠治プロデュースの新曲「遥」で再び「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、8月に同曲を収録したアルバム「遥」をリリースした。2018年8月に群馬のサッカークラブ・ザスパクサツ群馬の2018年公式応援ソング「雨後晴」やTBS系テレビ「CDTV」8月度エンディングテーマなどタイアップ曲を多数収録したアルバム「若葉ノ頃」を発売。