音楽ナタリー Power Push - LACCO TOWER
チャレンジと素直な心情が織り成す“心臓文庫”
LACCO TOWERがニューアルバム「心臓文庫」を6月8日にリリースする。
昨年6月のメジャー第1弾アルバム「非幸福論」の発売以降、TVアニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当するなど音楽シーンにおける存在感を拡大してきた彼ら。その状況を加速させるべく、本作ではさまざまなチャレンジを盛り込みながら音楽的な自由度をさらに増し、バンドとしての大きな進化を遂げることに成功した。
音楽ナタリーでは今回もメンバー全員へのインタビューを実施。アルバム制作に向けられた各自の思いに加え、収録される全10曲についての解説をしてもらった。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 西槇太一
意外といいこと歌ってんな、俺
──ニューアルバム収録曲をリリース前に披露するライブ「未来演奏会」を5月に大阪、名古屋、福岡の3カ所で開催していましたが、いかがでした?
細川大介(G) お客さんが新曲をまったく聴いていない状態でライブをするというのはすごく新鮮でしたね。演奏する僕らも緊張していたし、お客さんもしっかり曲を聴いてくれているからけっこう棒立ちな感じで(笑)。その雰囲気が面白かったです。
塩﨑啓示(B) 今回はかなり追い込んで練習をしたけど、初披露となるとやっぱり緊張はするよね。
真一ジェット(Key) 今回のアルバムは、レコーディング前に5人全員で合わせた曲がほとんどなかったんですよ。進行がかなりギリギリだったから。なので、全員で合わせること自体が新鮮だったし、「あ、この曲すげえカッケえな」って改めて思いながらライブをしてた感じもありましたね。
松川ケイスケ(Vo) うん。実際ライブで歌詞を口に出してみると「意外といいこと歌ってんな、俺」みたいなことも感じられて(笑)。初聴きのお客さんに対して、「ちゃんと伝わっただろうな」って実感できたところもあったし、逆に「ここはもっといい音で聴かせてあげたいな」って思ったりしたところなんかもあって。いろんな感情が生まれましたね。
重田雅俊(Dr) 演奏すればするほどどんどんよくなっていくから、「未来演奏会」を経たことで、7月のレコ発ワンマン(「独奏演奏会」)のときにはかなりいい状態になってるんじゃないかなと思います。
カラダをペロッと開いて中にあるものを置いた
──ではアルバムのことを伺いましょう。本作には進化したLACCO TOWERの音が詰まっているという印象がありました。
真一 今回はチャレンジしようっていうコンセプトがあったんですよ。それで全部の曲で何かしらチャレンジしているっていう。なあなあで作る曲はイヤだったから、それぞれの曲をかなり詰めましたね。だからこそすべての曲が今までと比べて鋭くなってるはずです。
──各パートがそれぞれの曲の中でかなりいろんなことをしていますよね。
細川 当然メジャー1発目として出した「非幸福論」を超えなきゃいけないわけで。だからフレーズに関しても、「もっと何かあるはずだ」っていう気持ちで何十個、何百個とこだわって考えました。
塩﨑 ベースにしても、ただバンドを支えるっていうのではなく、何かしら自分の色を出したくなっちゃうんですよ。「俺、こんなにやっちゃっていいのかな」みたいな思いもありつつ、それに対してこいつ(細川)がどんなギターを入れてくるかっていうのもすごく楽しくて。
重田 ドラムは今回、あえて外部のテックの人に参加してもらったんですよ、実験的に。音色やフレーズをいろいろ決めていく中で、俺の感性とその人の感性が混ざり合って音的には今までと違った面白いものになったなって思います。
──鍵盤に関してはいかがですか?
真一 今回はデモの段階からピアノがメインになってる曲がけっこう多くて。これほど全曲でピアノを使ったアルバムは初めてかな。それが今のモードだったのかもしれないですね。「俺が今回求めてたのはやっぱりピアノの音だったんだな」って、「未来演奏会」をやってみて改めて感じましたし。
──サウンド同様、そこに乗せられる松川さんの言葉たちも鋭さを増した印象もありました。
松川 そうですね。「サウンドや曲調がこうだからこんな歌詞にしよう」みたいなことはあまり思わなかったんですけど、今回はかなりいろんなことを正直に書いたと思います。今の自分の素直な心情をLACCO TOWERのフィルターを通して出そうっていうのは意識してました。カラダをペロッと開いて中にあるものを置いたというか。それくらい生の気持ちを伝えたかったんで。
──なるほど。「心臓文庫」というタイトルはそういう意味なわけですね。
松川 そう。ストーリーは10曲全部違うんですけど、全曲、僕が“今”感じている思いが込められていて。つまり全曲が僕の「心臓」のようなものです。
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収録曲
- 罪之罰
- 未来前夜
- 薄紅
- 蜂蜜
- 楽団奇譚
- 蛍
- 世界分之一人
- 秘密
- 珈琲
- 相思相逢
独奏演奏会
- 2016年7月18日(月・祝)
- 東京都 LIQUIDROOM
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年の結成以来、都内と群馬を拠点に活動するロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014、2015、2016年に地元・群馬県の群馬音楽センターにて開催した。インディーズレーベルからアルバム4枚を発表し、2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビュー。「薄紅」でフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、同曲を収めたアルバム「心臓文庫」を2016年6月にリリースする。