音楽ナタリー Power Push - LACCO TOWER
チャレンジと素直な心情が織り成す“心臓文庫”
今の僕らは未来の前にいる
──ここからは1曲ずつお話を聞いていければと。まず1曲目は「罪之罰」。
真一 もともとはインストとして作ってた曲なんです。変拍子でテンポチェンジをするっていう。でも途中で歌を入れようと思いついて。3拍子からテンポを戻して歌に入るっていう構成を思いついたときに……自分は天才かと思いました。
塩﨑 自分で言うのかよ(笑)。
真一 ただ、そこで脳みそを使い切っちゃったんで、その後ほかの曲がなかなかできなくて大変でした(笑)。
細川 この曲は展開のクオリティが高すぎるんで、ある意味どんなフレーズを弾いてもカッコよくなっちゃうんですよ。だからその展開に負けないものを考えるのにかなり苦労しましたね。そうしないとバンドである意味がなくなっちゃうから。
松川 歌詞に関してはアルバムの序章っぽい感じ。受け取ったマイナスをどうプラスにしていくかみたいなことを書きました。僕が歌詞を書く上で転機になったのがドストエフスキーの「罪と罰」なので、このタイトルはずっと使いたいなと思っていたものですね。
──2曲目はリード曲「未来前夜」。前作のリード曲「非幸福論」と同様に、今回もかなりの難産だったそうですね。
真一 そうなんですよ。今までの流れで言うと「罪之罰」や「蜂蜜」がリードになっていたと思うんですけど、「薄紅」をシングルで出したからにはその流れでは絶対にダメだと思ったんです。LACCO TOWERらしい激しい曲はもう出そろっていたんだけど、俺の中では確実に何かが足りないなっていう思いがあって。で、粘りに粘ってレコーディングの前日にできたのがこの曲だったんですよ。ほんとによく出てきたなって思いましたね。
塩﨑 っていうことは……?
真一 天才だなと思いました(笑)。
塩﨑 誘導してるっていうね(笑)。まあでも、この曲ができて重田とリズムを録り終えた段階で、これは確実にリードになるだろうなっていう確信はありましたね。コード感やテンポがすごく心地いい曲で、肩の力を入れずに録ることができたので。
松川 レコーディングの前日に曲ができるというギリギリの進行だったけど、僕はその状況がすごく楽しかったんですよ。どこかワクワクしたというか。ここからまた新しい世界に行くんだなって再確認した。以前僕らは“未来の後の夜を目指そう”という思いを込めて「未来後夜」っていう曲を出したことがあるんですけど、今の僕らはその未来の前にいるんだなと思えたんですよね。なので「未来前夜」というタイトルにして。一生夢見てやるとか、一生青春してやるとかどこかで思ってたことがそのまま出た歌詞なので、ちょっと恥ずかしいですんですけど思い切って書きました。
──3曲目は「ドラゴンボール超」のエンディングテーマとして話題を呼んだ「薄紅」です。
細川 この曲はライブで育った感が強いかな。できた当初は単純に自分たちのレパートリーの中の1曲っていうイメージだったけど、この曲で僕らを知ってくれた人も多いので、自分らにとっての代表曲の1つになったんだなっていう意識がどんどん高まってきて。アルバムの中の1曲として聴いても、いい曲だなと改めて思いますね。
本当に真一のことを天才だと思った
──4曲目は構成の妙が光る「蜂蜜」です。
真一 いわゆる“ザLACCO TOWER”的な曲として作り始めた曲なんですけど、いまいちパンチがない仕上がりになっちゃって。なので、個人的な趣味として別で作っていた3拍子の曲をくっ付けてみたんです。それが見事に1曲としてつながった瞬間ですよね、自分を天才だと思ったのは。
松川 今のところほぼフルで天才だと思ってるね。
真一 これは構成もわりと好きで。3拍子から激しい展開になって、間奏ではメジャーになるんですよ。その流れが出たときは天才だと思いましたね。
松川 まさかの1曲で2回思っちゃうっていうね(笑)。でも、俺はそのメジャーになる部分を聴いて不倫の歌にしようって決めたんですよ。こういうサウンドなら正攻法の歌詞じゃ面白くないなと思ったから。
──5曲目は「楽団奇譚」。これはライブでかなり盛り上がりそう。
重田 そうなんですけど、演奏が案外難しいんすよ。
細川 最初にリハやったときもみんな「ん?」って感じでしたからね。細かいところまでフレーズをいろいろ詰めてるから、どこで何やったかわかんなくなるっていう(笑)。
松川 最初に真一からデモもらった段階で、「なんだこりゃ?」って思いました。「どんな歌詞書きゃいいんだ?」っていう。まあでも、こんな挑戦状を投げてくるんだったら、俺もすごい歌詞を書いてやろうと。ここまでバンドのことを書いたのは初めてですね。
真一 もともとはクールな曲にしようと思ってたんだけど、いつの間にかハッピーな曲になりましたね。ここではしょぼいピアノの音にちょっと三味線の音を混ぜてます。ちょっと和っぽい雰囲気のフレーズがあったりもするので。すごいハマったと思いますね。天才かと思いましたね。
──6曲目は一転、ミディアムテンポの「蛍」。この緩急にグッときますね。
真一 この曲ができたとき天才かと思いましたね。
一同 はえーよ!
松川 でも俺、この曲聴いたとき本当に真一のこと天才だと思いました(笑)。彼のよさがギュッと詰まっているような気がして。だから歌詞もがんばって書きました。
重田 この曲はテンポを決めるのにもかなり悩んだんですよね。2上げると速すぎる、1下げるとサビがよく聴こえないとか。ここに落ち着くまでにいろいろ試してみて。あと、エンディングはギターソロが入っててフェードアウトするんですけど、そこのドラムはフリーでって言われて。延々同じことやるんで、ネタがなくて大変でした。
次のページ ≫ 「自分って必要なのかな」って思いながらずっと生きてきてる
収録曲
- 罪之罰
- 未来前夜
- 薄紅
- 蜂蜜
- 楽団奇譚
- 蛍
- 世界分之一人
- 秘密
- 珈琲
- 相思相逢
独奏演奏会
- 2016年7月18日(月・祝)
- 東京都 LIQUIDROOM
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年の結成以来、都内と群馬を拠点に活動するロックバンド。自ら“狂想演奏家”を名乗り、結成当初より楽曲タイトルはすべて「日本語ひとつの言葉」にこだわり続けている。ロック、パンク、ポップス、歌謡曲など特定のジャンルにカテゴライズされない、ソウルフルかつエモーショナルなサウンドが魅力。その叙情的な世界観とは裏腹に、攻撃的なライブパフォーマンスも人気を集めている。現在のメンバーは松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(B)、重田雅俊(Dr)、真一ジェット(Key)、細川大介(G)の5名。2013年にメンバーで「株式会社アイロックス」を設立し、自身主催のフェス「I ROCKS」を2014、2015、2016年に地元・群馬県の群馬音楽センターにて開催した。インディーズレーベルからアルバム4枚を発表し、2015年6月にフルアルバム「非幸福論」で日本コロムビア内レーベル・TRIADよりメジャーデビュー。「薄紅」でフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマを担当し、同曲を収めたアルバム「心臓文庫」を2016年6月にリリースする。