ナタリー PowerPush - コブクロ

NIGOと和やかトーク+濃厚インタビュー「ALL SINGLES BEST 2」徹底解剖

コブクロを死ぬまでやり続ける覚悟が固まった

──休止している間に、おふたりでコブクロについて話し合う機会はあったんですか?

小渕 それが全然していないんです。これからどうするかもまだ話し合っていない。でも休んでみて、もうコブクロを死ぬまでやり続けようという、一種の覚悟みたいなものはさらに固まりましたね。これからも全身全霊をかけて、止まっては悩み続けるんだろうけど、それももう宿命なのかなって。ただ「こうあり続ける」みたいなフレーズは決めなくてもいいのかなと。僕には試したいアイデアがいくつかあるし、それは絶対黒田も同じはずだと思うし。

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黒田 僕ね、実はこの半年間、ほとんど歌っていなかったんですよ。2回だけかな。1回は友達の結婚式だったな。歌っていうのは、離れてみることで見えてくることがあるし、半年ぶりにレコーディングで歌ってみて「なるほどな」と気付くこともあって。人は自分のことをなかなか客観視できませんよね。特に必死であればあるほどそうなんです。この半年休んだことでつかめたものはありましたよ。ただ、きっと休止することで得た本当の意味合いというのは、ここから活動を再開して、何カ月後か何年後かにようやくわかってくるのかなって今は思っています。

──そういうものかもしれませんね。

黒田 うん。だって僕らはもう、音楽が好きとか嫌いとかだけじゃあ物事を話せないわけです。好きなのかって訊かれたらそりゃ好きですよ。でもほんなら10代の子みたいに毎日カラオケボックス行くのかって言われたら、そうではない。だから音楽との距離感というよりも、目標であり目指す場所が少しずつ変わってきているのだと思います。ストリートで歌っていた頃やデビュー当時は、もう何がなんでも、目の前で聴いている人をねじ伏せて感動さしたる、とか思っていた。でも、この半年の間に「そういうモンでもないのかな?」と思うようになってきましたね。

コブクロと音楽の新たな距離感

──ベスト盤特有の性格として、歌のパワーがメインとなっている時期、バンド感が強い時期、そして多くの楽器を取り入れたアンサンブルで聴かせる時期というふうに、コブクロのアレンジの変遷もまたよくわかります。今回は3つの新曲も収録されていますが、中でも「焚き火の様な歌」と「ココロの羽」は、アコースティックの温かみをフィーチャーした、ほかの収録曲よりもう一段削ぎ落したアレンジという印象を受けました。これは現在のおふたりのモードを反映しているのですか?

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小渕 まさにそのとおりです。単純な話ですが「音楽ってもっと温かいものであってほしい」と最近になって思えてきまして。これは面白いもので、コブクロとして広いステージでピンスポットを浴びて歌う姿をイメージして書けば、そういう曲が生まれてくるものなんです。でも1回休んだことによって、そのイメージが平たくなったというか。結局は僕と黒田とギターが原点じゃないかと。きっとそれ以上をイメージすると、今はちょっと頭が疲れちゃうなっていう気分だったんですね。昔、ギターだけを持って2人で路上に出て歌っていた頃の、切ないも明るいもない、ただただ「届けたい」という思いだけがあった頃……あの“始まりの感じ”に戻れたような気がしました。だから「焚き火の様な歌」にしても「ココロの羽」にしても、もしも1年前にアレンジしていたら、きっとこうはならなかったよね。

黒田 うん。全く違うものになっていたね。

小渕 「ココロの羽」も「焚き火の様な歌」も、決して派手ではなくていいので、ただただ言葉が届けばいいなという思いで作りました。曲順の最後に入れたもうひとつの新曲「交響曲第5296番」(※インストゥルメンタル)は映画でいうエンドロールのようなイメージで作りました。

「FAN’S MADE LIVE」は“パー狙い”

──9月には大阪で復帰後初のフリーライブとなる「FAN’S MADE LIVE」が予定されています。5万人を動員できるキャパシティということですが、現時点で考えていることはありますか?

小渕 全てこれからです。「こうなるだろう」とか「こうなるはずだ」という気持ちも全くなくて。今は何も想像つかない。ただ、その“どうなるかわからない面白さ”を楽しんでやろうとは思っていて。一度リセットをして、2人でゼロからまた気持ちを寄せ合って、よし始めようってことだけは互いに確認しています。ここからまたいろいろな産みの苦しみを経験することになるんでしょうけど(笑)ともかく肩の力を抜いて、イメージを強く持ち過ぎずにいこうという心構えではあります。

黒田 僕はこれまでツアーのときって、ある1曲の、ある一瞬のためだけに3カ月間生活するようなモチベーションだったんです。例えば、全部でセットリストに20曲あったとしても、その1曲の、このワンフレーズに全てを賭けている僕がいる。それはアスリートみたいな緊張感で、ボクサーが半年に1回しか試合せえへんのと同じですよね。だからこそ得られる気持ち良さもあるんですが、それってやっぱ普通の神経やないんですよね。もっと24時間聴ける、歌える歌があってもいいのかなって。今の気分はそんな感じなんで、もっと音楽に対して僕らのほうからやんわりと距離を詰めるというか、いつもすぐそばにあるような歌を歌いたいと思いますね。

小渕 どんなライブになるのか僕らもまだわかりませんが、楽しみにしてほしいです。

黒田 まあパーで上がろうかと。バーディを狙おうとするとボギーで終わるんやから、パー狙いでええねんて(笑)。

小渕 あのさ、ナタリー読者にゴルフの例え話って、絶対響かない気がするんだけど……(笑)。

──あはは(笑)。では、改めて「おかえりなさい」ということで。

小渕黒田 はい「ただいま」ということで(笑)。

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ベストアルバム「ALL SINGLES BEST 2」/ 2012年9月5日発売 Warner Music Japan

収録曲
DISC 1
  1. 蕾(つぼみ) ※フジテレビ系月曜夜9時連続ドラマ「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」主題歌
  2. 風見鶏 ※Benesse 進研ゼミ高校講座 CMソング
  3. 蒼く優しく ※日本テレビ系土曜ドラマ「ドリーム☆アゲイン」主題歌
  4. 時の足音 ※日本テレビ系火曜ドラマ よる10時「オー!マイ・ガール!!」主題歌
  5. 赤い糸 ※NISSAY CMソング
  6. ベテルギウス ※日産CUBE CMソング
  7. 虹 ※JAL×コブクロ コラボレーションソング / 全国民放53局「MEET THE MUSIC」フィーチャリングソング
  8. Summer rain ※TV東京系アニメ「クロスゲーム」オープニングテーマ
  9. STAY ※TBS系ドラマ 日曜劇場「官僚たちの夏」主題歌
  10. WINDING ROAD(絢香×コブクロ) ※日産CUBE CMソング
  11. あなたと(絢香×コブクロ) ※日産CUBE CMソング
DISC 2
  1. 流星 ※フジテレビ系月曜9時連続ドラマ「流れ星」主題歌
  2. Blue Bird ※「バクマン。」オープニングテーマ
  3. 君への主題歌 ※2010「冬の東京タワー」CMイメージソング / フジテレビ「めざましテレビ」第2回ロープジャンプ小学生No.1決定戦テーマソング
  4. あの太陽が、この世界を照らし続けるように。 ※映画「岳-ガク-」主題歌
  5. シルエット ※H.I.S. TV-CMソング
  6. 蜜蜂 ※NTT西日本・企業広告 TV-CM
  7. 焚き火の様な歌 / New recording
  8. ココロの羽 / New recording
  9. 太陽のメロディー(今井美樹×小渕健太郎with布袋寅泰+黒田俊介)
  10. 交響曲第5296番 / New recording
コブクロ(こぶくろ)

コブクロ

1998年、路上ライブをしていた小渕健太郎と黒田俊介が出会い結成。2000年3月に梅田バナナホールで初ワンマンライブを敢行し、2001年シングル「YELL~エール~」でメジャーデビュー。2005年に発売したシングル「ここにしか咲かない花」「桜」がロングヒットを記録する。2006年5月には初の日本武道館公演を大成功に収め、続いてリリースしたシングルコレクションアルバム「ALL SINGLES BEST」は300万枚を超える大ヒットに。その後も数々のヒット曲やコラボ作を発表し、活動の幅をさらに拡大させるが、2011年8月に小渕が発声時頸部ジストニアを患っていること、黒田も持病の腰痛や喉の疲労が悪化したことから、療養期間に入る。そして2012年4月に活動再開を発表。9月にベストアルバム第2弾「ALL SINGLES BEST 2」のリリースと、大阪でのフリーライブ「FAN'S MADE LIVE」の開催を控えている。