ナタリー PowerPush - コブクロ

NIGOと和やかトーク+濃厚インタビュー「ALL SINGLES BEST 2」徹底解剖

コブクロ インタビュー

350万枚。それは2006年にリリースされた「ALL SINGLES BEST」のこれまでの売上枚数である。メジャーデビュー以降、コブクロは全力疾走を続け、ブレイク後はさらにその加速度を増して活動を続けていた。だからこそ昨年から今年にかけての一時休養は、彼らのファンのみならず多くの人々が大きな衝撃を受けるニュースだった。そして11カ月の期間を経て、コブクロがついに戻ってくる。復活の狼煙となるこの「ALL SINGLES BEST 2」には、これでもかというくらいに“いい歌”が詰まっている。この尋常ならざる密度の源はなんなのか。そしてこの休養期間に小渕と黒田が抱いていたコブクロへの、音楽への思いとはなんだったのか。2人が存分に語ったインタビューをお届けする。

全てのシングルがそのときのベスト

──まず、活動休止期間を経ての再開にあたっては、いろんな選択肢があったと思います。例えばシングルをリリースするとか、もうちょっとだけ間を空けてオリジナルアルバムを準備するとか。その中で今回の「ALL SINGLES BEST 2」のリリースに至った経緯を教えてください。

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小渕 あの、実は僕らこのタイミングでもう1個ベスト盤を作っていて。それは「FAN’S MADE BEST」という、限られたファンの方だけが買える、CDショップには並ばない特殊なバージョンなんです。シングル以外の曲だけで投票を100位まで募って、その結果で作ったアルバムなんです。そしたらこれがなかなか面白いチャートになっていて。1位は「ALL SINGLES BEST 2」にも入っている「ココロの羽」なんですけど、それ以外の24曲は、まあ本当にコブクロをよく知ってる人しかわからない、逆に言えば知っている人にはめちゃめちゃ面白いチャートなんですよ。その中にはまだレコーディングしたことがない曲もたくさんあったので、なんとなく活動再開の準備をする中でレコーディングも始めたんですね。で、そうしていくうちにベストの話も上がってきて。初めは「FAN'S MADE BEST」と「ALL SINGLES BEST 2」の2枚を同時に作れるかわからなかったんですけど、作業をやり出したら一気に形になった(笑)。シングルも「蕾」から数えて結構な曲数になっていたので、出すなら今しかないなと思って。

──ファン投票を募って100位までのチャートができるほどレパートリーがあるというのは、それだけ活動が長く支持されてきたという証でもある。ものすごく幸せなことですよね。

黒田 そう思います。どの曲も改めて聴き直すと、そのときそのときの感情がよみがえってくる。あと昔の曲を聴くと、「ここ下手くそやねんけどこの歌はもう二度と歌われへんな」とか、そういうのをいっぱい見つけてね。面白いモンですよ。

──ちなみに現在コブクロはレコーディングしていないストックって何曲ぐらいあるんですか?

小渕 もう1曲か2曲になってきたんですよ。

黒田 いや、あと100曲あります。小渕アホかお前、「幻のデビュー曲が」とか言っとけばええねん。で、毎回そのキャッチコピーを付けよう(笑)。

小渕 ないから(笑)。でも確かにずっと「レコーディングしてない曲がまだ10曲くらいある」とか、かれこれ10何年言い続けていましたが、それが今回でほとんどなくなった。考えてみれば、作った曲のほとんどがレコーディングできるというか、したいと思うだけの思い入れがあるというのは、またそれも幸せだなって思いました。

──先程の黒田さんのお話のように「ALL SINGLES BEST 2」とその前の「ALL SINGLES BEST」を聴き比べると、やはり当時ならではといった初々しさがある。例えば「2」の「蕾」「風見鶏」「蒼く優しく」が持つスケール感の大きさや楽曲自体の包容感は、もうそのままコブクロの成長を雄弁に物語っているように思えました。

小渕 ありがとうございます。例えば「蕾」の1音目は絶対あの音色じゃなきゃダメだったし、「風見鶏」のイントロも、ほかの曲も、全てそう。本当に1曲ずつ、バカみたいな手間ひまと時間をかけて、こだわり続けてきました。だから「1」から「2」まで6年もかかってしまう(笑)。でも、どれか1曲でも手を抜いてたり、なんとなく作ったような曲が入っていたら、こんなに濃密なアルバムにはならなかったと思います。僕たちはそのときの自分たちの自慢の看板が「蕾」です、「蒼く優しく」ですと言えるものだけをシングルにしてきたという自負もあるので。

言いたいことがなければステージに立ってはならない

──収録曲の中で特に思い入れの強い曲を、おふたりそれぞれに挙げていただきたいのですが。

小渕 どの曲も聴けば聴くほどに、歌えば歌うほどに愛着が湧いてくるんだけど、そうだなあ……。僕は「蒼く優しく」かな。僕たちには「桜」(※2005年発売12thシングル。結成のきっかけとなった最初のオリジナルソング)から「蕾」にたどりつくまでに2人で掘り続けたトンネルがあった。そして「蕾」が出来上がって、ヒットもして、日本レコード大賞もいただいた。そのときに、何か直感的に、これ以上先の領域へは踏み込んでいけないという気がしたんです。うまく言えないけど、その先の景色に届いてしまったらおしまいなのかな、という感覚だったのかな……。結局、僕はこのトンネルから一度表へ出ることを選んだ。そしていろいろ悩んで、歌詞ともメロディとも、本当に苦しくなるほど向き合ってみて、もう一度新しいトンネルを掘り始めたときの曲がこの「蒼く優しく」だったんです。

──なるほど。黒田さんはいかがですか?

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黒田 僕は「あの太陽が、この世界を照らし続けるように。」かな。活動休止直前に出した、現時点で最新のシングルです。このときは、自分の課題も悪いとこもわかっていて、そこに自分を追い込んでいましたね。今小渕が話した「蒼く優しく」も同じなんですけど、僕らの気持ちが振り子みたいに左右に揺れているときって、自分らでもわかってはいるんですよ。振り子が安定しているときの良さもそれはそれで当然あるけど、振り子が危うく揺れている瞬間の良さもまた、観る人聴く人を感動さす。そこを突き詰めていった時期のシングルがこの曲でしたね。僕はいつもそうなんですが、その先に何かがあるとわかっていたら、手前では止まれへんのです。鉛筆を削り出したらピンピンになるまで削りたい。例え「折れるんちゃうのか?」と思っても、思われても、削らずにおれへんのです。

──つまり1曲1曲の制作にせよライブのパフォーマンスにせよ、コブクロというアーティストは壁や振り子の揺れに気が付いてしまったとき、決して見て見ぬフリをしてやり過ごすことができない2人でできているということがよくわかりますね。

小渕 あの、昔よく小学校の朝礼なんかで校長先生が全校生徒の前で話すときに、「なるほど」と思える話と「ん?」って思う話の落差がすごいときってありませんでした? 僕、そういうときに「言いたいことがないなら人前に立たなきゃいいのに」と思っちゃう子供だったんです。で、これって音楽も同じだと思うんです。話すことがなければ「今日は校長のお話はありません」でいいじゃないかって。

ベストアルバム「ALL SINGLES BEST 2」/ 2012年9月5日発売 Warner Music Japan

収録曲
DISC 1
  1. 蕾(つぼみ) ※フジテレビ系月曜夜9時連続ドラマ「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」主題歌
  2. 風見鶏 ※Benesse 進研ゼミ高校講座 CMソング
  3. 蒼く優しく ※日本テレビ系土曜ドラマ「ドリーム☆アゲイン」主題歌
  4. 時の足音 ※日本テレビ系火曜ドラマ よる10時「オー!マイ・ガール!!」主題歌
  5. 赤い糸 ※NISSAY CMソング
  6. ベテルギウス ※日産CUBE CMソング
  7. 虹 ※JAL×コブクロ コラボレーションソング / 全国民放53局「MEET THE MUSIC」フィーチャリングソング
  8. Summer rain ※TV東京系アニメ「クロスゲーム」オープニングテーマ
  9. STAY ※TBS系ドラマ 日曜劇場「官僚たちの夏」主題歌
  10. WINDING ROAD(絢香×コブクロ) ※日産CUBE CMソング
  11. あなたと(絢香×コブクロ) ※日産CUBE CMソング
DISC 2
  1. 流星 ※フジテレビ系月曜9時連続ドラマ「流れ星」主題歌
  2. Blue Bird ※「バクマン。」オープニングテーマ
  3. 君への主題歌 ※2010「冬の東京タワー」CMイメージソング / フジテレビ「めざましテレビ」第2回ロープジャンプ小学生No.1決定戦テーマソング
  4. あの太陽が、この世界を照らし続けるように。 ※映画「岳-ガク-」主題歌
  5. シルエット ※H.I.S. TV-CMソング
  6. 蜜蜂 ※NTT西日本・企業広告 TV-CM
  7. 焚き火の様な歌 / New recording
  8. ココロの羽 / New recording
  9. 太陽のメロディー(今井美樹×小渕健太郎with布袋寅泰+黒田俊介)
  10. 交響曲第5296番 / New recording
コブクロ(こぶくろ)

コブクロ

1998年、路上ライブをしていた小渕健太郎と黒田俊介が出会い結成。2000年3月に梅田バナナホールで初ワンマンライブを敢行し、2001年シングル「YELL~エール~」でメジャーデビュー。2005年に発売したシングル「ここにしか咲かない花」「桜」がロングヒットを記録する。2006年5月には初の日本武道館公演を大成功に収め、続いてリリースしたシングルコレクションアルバム「ALL SINGLES BEST」は300万枚を超える大ヒットに。その後も数々のヒット曲やコラボ作を発表し、活動の幅をさらに拡大させるが、2011年8月に小渕が発声時頸部ジストニアを患っていること、黒田も持病の腰痛や喉の疲労が悪化したことから、療養期間に入る。そして2012年4月に活動再開を発表。9月にベストアルバム第2弾「ALL SINGLES BEST 2」のリリースと、大阪でのフリーライブ「FAN'S MADE LIVE」の開催を控えている。