音楽ナタリー PowerPush - ハンバート ハンバート× 細野晴臣
年賀状が縁で生まれた“カッコいいフォーク”
ホースボイスと馬の年賀状
細野 結成が1998年。どうやって出会ったの?
佐藤 大学生のときに友達を介して会いました。
細野 佐野さんは最初から歌ってたわけ?
佐野 私は歌ってなかったです。
佐藤 俺は一緒に行ったことはないんですけど、どうもカラオケがうまいらしいという評判で。僕は高校のときにフォークをやっていたこともあり、その反動でそのときはもっと派手な音楽をやりたかったんです。ホーン隊がいて女性コーラスが3人ぐらいいる大所帯のカッコいいバンドで自分は歌いたいなと思っていて。それで彼女を誘ったんです。
佐野 私は何もやってなかったし、面白そうだから、「やるやる!」って。
佐藤 リハスタに入って一緒にやってみたら、この人のほうが歌がうまいと判明して。友達みんなが「お前じゃなくて遊穂が歌えよ」って言い出して、あっという間に俺の作った曲を彼女が歌う方向になってしまって。
細野 なるほど、そういうのはいい出会いだね。それがなきゃ1人でやっていたわけだもんね。でも佐藤くんの声も独特ですよね。
佐藤 ありがとうございます。
細野 突然声が出てくると、「おっ!?」と思うからね。ホースボイスっていうんだよね。
佐藤 馬声っていうことですか?(笑)
細野 カントリーシンガーの中にそういうふうに呼ばれている人がいるんだよ。
佐藤 うれしいなあ。僕は午年なんですけどね。
細野 うわあ、送った年賀状も馬だったもんね。こりゃなんかあるね(笑)。
佐藤 細野さんも不思議な声ですよね。
細野 僕は何声なんだろう。
佐藤 ビブラートというのとちょっと違う、常に何かがかかってるような。
細野 フランジャーみたいな?(笑)
佐藤 そう、フランジャーみたいな。例えて言うなら、扇風機の前でしゃべったあの感じ。ちょっとエフェクトの成分が入ってますよね。
細野 わかるわかる。
佐野 いっぱいナレーションをやってらっしゃるじゃないですか。すぐ細野さんだってわかるし、なんかこう、いいよね?
佐藤 いいよね。うらやましいです。
細野 自分の声のことはみんなわかんないよね。
今度一緒にカントリーをやりましょう
細野 僕の中でハンバート ハンバートってカントリーのイメージがある。
佐藤 そう言ってもらえるとうれしいです。“FOLK”ってそもそも、カントリーもオールドタイムもブルーグラスも全部含めた総称だと思うんですけど、カタカナで“フォーク”って書くと色が付いてしまうじゃないですか。しかも正直あまりよくないイメージというか、一般的にあまりいいものとして捉えられてない気がするんですよ。
細野 日本では特に“四畳半”に収まっちゃったりしてね。
佐藤 そう、四畳半ってイメージが付いちゃったりだとか、“フォークギター”っていうのもなんか安易な気がして。ダンスもフォークが付くと、「あのキャンプでやるやつでしょ?」みたいな感じになって。なんか適当な感じがするというか、なんとなく下っていうニュアンスが付いちゃっている言葉だなあと思いまして、今まで人からフォークって呼ばれたくないと思ってたんです。こんなにフォークデュオ的な感じでやっているにも関わらず。
細野 ハハハ(笑)。
佐藤 そう思いながら15年間ずっとあらがってきたんですが、細野さんにいただいた年賀状にあった「FOLK SONGに励もう」という言葉を受け取って、俺らはエッ!?と思って。「やっぱそっか、フォークだよな、俺たち。じゃあカッコいいフォークやればいいじゃん」って感じで開き直れたんですよね。
細野 なるほど。でもそれはいいことだね。あらがう時期ってあるんだよね。僕もね、YMOってのをやっていて、解散したにもかかわらず、よく3人でまたやってたりしていて、そのときにみんなで「YMOって名前を使うのやめようよ」とかあらがってたわけ。でも最近どうでもいいなと思って(笑)。
佐藤 (笑)。どうでもいいってことですよね、やっぱり。なかなかそう思えなかったんだけど、年賀状の一言があったから吹っ切れたんです。しかもこの「励もう」っていうのがうれしくて。これってつまり「一緒に励もう」ってことですよね?
細野 そういうことだよ。僕もやるってことだよ。
佐藤 細野さんもフォークソングなんだな、と思ったらうれしくなりました。
細野 誰かに言われたもん、フォークシンガーだって。ま、自分ではカントリー系だと思っているけどね。
佐藤 俺もそう思っているんですけど。
細野 あ、やっぱり?(笑)。じゃあ今度そういうのをやりましょう。いつでもやる準備はしてるから。
佐藤 はい、フィドルが必要なときがあったら。
細野 絶対にやりたい。
佐藤 ぜひお願いします!
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- ハンバート ハンバート ニューアルバム「FOLK」2016年6月8日発売 / SPACE SHOWER MUSIC
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / DDCB-94011
- 通常盤 [CD] 2484円 / DDCB-14043
CD収録曲(カッコ内はオリジナルアーティスト)
- 横顔しか知らない
- N.O.(電気グルーヴ)
- 長いこと待っていたんだ
- プカプカ(西岡恭蔵)
- 夜明け
- 生活の柄(高田渡)
- 国語
- 待ちあわせ
- 結婚しようよ(吉田拓郎)
- おなじ話
- さよなら人類(たま)
- ちいさな冒険者
初回限定盤 DVD収録内容
2015年9月19日 東京・日比谷野外大音楽堂ライブ「二人でいくんだ、どこまでも」
- いついつまでも
- バビロン
- コックと作家
- さようなら君の街
- ロマンスの神様
- おかえりなさい
- まぶしい人
- ぼくのお日さま
- おなじ話
- アルプス一万尺
- ホンマツテントウ虫
- アセロラ体操のうた
- おいらの船
InterFM「Daisy Holiday!」
細野晴臣がDJを務める、古きよき音楽から最新の音楽までを紹介するラジオプログラム。
毎週日曜 25:00~25:30 オンエア
ハンバート ハンバート
1998年に結成の佐藤良成(G, Violin, Vo)と佐野遊穂(Vo, Harmonica)による男女デュオ。2001年にアルバム「for hundreds of children」でCDデビュー。2005年のシングル「おなじ話」が各地のFM局でパワープレイに起用されたのをきっかけに、活動を全国に広げ年間 100本近いライブを行う。海外の伝統音楽ミュージシャンたちとも多数共演。テレビや映画、CMなどへの楽曲提供も多く、2010年からオンエアされた「ニチレイアセロラ」のCMソング「アセロラ体操のうた」が話題になった。2016年6月には、デビュー15周年記念作品として弾き語りアルバム「FOLK」を発表した。フォーク、カントリー、アイリッシュ、日本の童謡などの音楽をルーツとした懐かしく切ない楽曲と、繊細なツインボーカルで支持を集めている。
細野晴臣(ホソノハルオミ)
1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成し、松田聖子や山下久美子らへの楽曲提供を手掛けプロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO「散開」後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2016年には、沖田修一監督映画「モヒカン故郷に帰る」の主題歌として新曲「MOHICAN」を書き下した。