音楽ナタリー PowerPush - 銀杏BOYZ写真集「純血」
“ドキドキジャンキー”村井香が銀杏BOYZと駆け抜けた11年
いいときも悪いときもずっとドキドキしていた
──ちなみに写真が苦手なメンバーとかはいるんですか?
たぶんもともと全員写真は苦手だったと思うんです。GOING STEADYの頃にほかのバンドもいる集合写真を撮ったんですけど、GOING STEADYのメンバーだけ隅っこに寄っちゃって全然目線をくれないみたいな。
──もともと写真の前でポーズをとるような人たちではなかった。
GOING STEADYのアー写もそんな感じでしたからね。アー写の撮影でもちょっと目線をくださいって言わなきゃいけないくらいでしたから(笑)。私の場合、あまりにもずっとカメラで撮ってるから、さすがに慣れたんじゃないかと思います(笑)。
──峯田和伸さんはどうでしたか? いろいろと被写体になる機会も多い人だと思いますが。
でもわたしの中では峯田くんもみんなと一緒ですね。銀杏に関しては1人ずつこうだったっていうより、みんなで銀杏。そこはセットだったんですよね。
──確かに銀杏BOYZにはバンドで4人そろったときのフォトジェニックさがありましたよね。男4人でみんなバラバラなんだけど、どこかビシッと決まるというか。
そう、あの言葉にできない感じをなんとか写真で切り取れないかと思ったんですよね。でもなかなかできなくて、いつかできるんじゃないかなっていう気持ちでライブを撮ってきたんです。なんなんでしょうね、アレは。キラキラっていうか……うーん、やっぱり言葉にはできない(笑)。
──逆にメンバー同士のシリアスな場面に居合わせることもあったわけですよね。そういうときはどういう距離感なんですか?
もう骨を拾う気持ちでしたね。そういう場面でもきっとほかに撮る人がいたら自分は撮らなかったと思うんですけど、誰もそういう人がいなかったから……。本当にそれだけですね。いいときも悪いときもずっとドキドキしていたんですよ。それを追っかけていただけで。
この4人の銀杏BOYZで出せるとしたら今しかなかった
──銀杏BOYZは2008年後半ぐらいから長いレコーディングに入り、メンバーが公の場に出てくる機会もぐっと減りました。あの時期っていうのは、近くで見ててどうでした?
正直、アルバムが出るのは来世かな?と思ってました(笑)。
──レコーディング現場でも撮影はしていたんですか?
していました。写真を撮るっていうよりは、「そこにいた」っていう感じですけど。特に目立った動きとか、派手なことは起こらないけど、私はこの期間のことも絶対に残しておかなければと思って。
──最悪アルバムは来世になっても写真は撮っておくぞ、と。
そうです。彼らはずっと音楽をやってたんだよ、こういうふうにやってたんだよ、その時間はウソじゃないっていうことを残したかったので。だってみんな本当にすごいと思いましたもん。アルバム制作にずーっと向き合って、ずーっと作業をしていましたから。これまで自分が出会った人たちの中で、一番すごいと思いました。めげないとかじゃないんですよ。ライブもできないし、アルバムも出ないけど、彼らにとってはずっと音楽だったんです。
──彼らにとっては日常もずっと音楽活動でしたからね。
なので、写真集(「純血」)では、銀杏BOYZというバンドをやっているメンバーっていうよりは、1人ひとりが音楽と向き合ってきた軌跡みたいなものを残したいと思ったんです。こういう時間があったんだっていうことを見せられたらと。
──写真をセレクトするのは大変だったんじゃないですか?
締め切りを区切ってもらえなかったら無理だったと思う。これも入れたい、あれも入れたいっていうのばっかりで。また、1枚ごとに思い出がよみがえってきて、けっこう泣いちゃったりして。
──泣いた? それはどういう感情なんですか。
あ、やっぱり二度はなかったんだ……みたいな。メンバーでもないのに、自分にも本当は何か彼らのためにできることがあったんじゃないかって思ったら苦しくなって。そこまで思わなくていいんだけど、でもやっぱり思ってしまうんです。
──今回このタイミングで写真集にまとめようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?
やはりこの4人の銀杏BOYZで出せるとしたら今しかなかったので。こんな言い方はアレなんですけど、たくさんの人に見てもらおうとか、そういう気持ちはそんなにはなくて、本当は自分でこの十何年分の写真をまとめて、メンバー1人ずつに渡せたら、それでいいと思ったんです。実際今回選んだ写真も、メンバーに見せたいなと思って選んだものが多いかもしれない。
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- 写真集「銀杏BOYZ写真集『純血』」
- 初回限定生産 事前予約締め切り2014年12月10日 / 2015年1月15日発売 / 5400円 / 太田出版
ロックバンド銀杏BOYZの初の写真集が完成。この写真集には写真家・村井香によって撮影された峯田和伸(Vo, G)、安孫子真哉(B)、村井守(Dr)、チン中村(G)の4人の2003年から2014年までの11年間がパッケージされている。
今作にはこれまで公式には発表できなかったものを含む345カットが掲載されているほか、脱退した3人のメンバーの近影や峯田和伸のロングインタビューも収録。4人の銀杏BOYZが残した軌跡を写真とテキストでたどるファン垂涎の1冊となっている。
銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
2003年1月、GOING STEADYを突然解散させた峯田和伸(Vo, G)が、当初ソロ名義で「銀杏BOYZ」を始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年からはDVD「僕たちは世界を変えることができない」や「あいどんわなだい」「光」といったシングル作品をリリースし、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。