音楽ナタリー PowerPush - 銀杏BOYZ写真集「純血」
“ドキドキジャンキー”村井香が銀杏BOYZと駆け抜けた11年
もしそうならなかったらアルバムは出なかったと思うんです
──答えづらい質問かもしれませんが、峯田さん以外のメンバーの脱退を知ったとき、どんなことを思いました?
すごく両極端の感情がありました。これは私個人の考えなんですけど、もしそうならなかったらアルバムは出なかったと思うんです。なんて言うんだろう……これでようやく終われるっていう気持ち。そして、それと同じくらいずっと続いてほしい、いつまでも終わらないでほしいっていう気持ち、その両方があって、自分でもよくわからなくなってました。
──脱退したメンバー(安孫子真哉、村井守、チン中村)もそれぞれの新しい人生が始まっていて、今回、3人それぞれの近況写真も収録されますね。
さっきの話につながるんですけど、やっぱり彼らはライブをしていないときも音楽だったと思っているので、それと同じように今は全然違うことをしているかもしれないけど、何をやっているのか最後に入れておきたいなと思ったんです。
──写真集が出ることについては、皆さんどんなことを言ってました?
こうやって自分たちのライブ写真とかがお客さんに伝えられるのはうれしい、みたいに言ってくれて、「あっ、世に出ることをうれしいと思ってくれるんだ」って。そのこと自体私もうれしかったです。もう二度と見たくないかもしれないとも思ってはいたので。あと、みんな撮られたくないだろうなっていうのも思ったけど、快く協力してくれて本当にありがたかったです。
──峯田さんとは写真集について何か話しましたか。
そんなには話してないですね。本人には聞いてないですけど、やっぱりまだちょっとキツいと思うんですよ。これが5年後、10年後だとしたら客観的に見られると思うんですけど、まだ1年も経ってない状況なので。ただこうやって出しておかないと、次に出せるタイミングは30年後とかになってしまうと思うので……。
──確かに今を外すと、次はもっと歴史化してからってなりますよね。
でもそういうふうに歴史化する前に出せたほうが、やってきたメンバーにとってもいいんじゃないかと思ったんです。
“ドキドキジャンキー”なだけなんだと思います
──「純血」っていうタイトルはどう決まったんですか?
峯田くんに決めてもらいました。
──もともと自己表現として撮ってたわけじゃないっていう、村井さんらしいエピソードですね。
「写真家として」とか、「多くの人に見てもらいたくて」とか、そういう気持ちで撮ってたわけじゃなくて、バンドに対して「見て見て、ちょっとみんなこんなんだったよ!」ってやりたかっただけですからね(笑)。だから本当は4冊作れたらよかったんですよ。
──メンバー用にそれぞれセレクトして(笑)。そうやって撮られた写真だからこそ見てみたいという気持ちがありますよ、ファンとしては。
本当に撮らせてもらってきただけだと思うんです。その場にいさせてもらったな、とも思うし。撮った写真自体もずっと銀杏BOYZの作品の1つだと思ってきたんですよ。「ネットとかにアップしないの?」とか「ホームページとか作って見せればいいじゃん」とか言われたこともあるんですけど、でもそういう気にはならなかったんですね。ただ今回いろいろな人の力を借りて、こういうふうにカタチにしてもらえたので、初めてなるべくたくさんの人に見てほしいなっていう気持ちにもなりました。小学生並の感想ですけど(笑)。
──今後も銀杏BOYZは撮っていくんですか?
どうなんでしょうね、特に何も考えないでここまで来たので、これから先もまだ何も考えてなくて……。
──元メンバーはみんな新しいことを始めてますが(笑)。
そうですね、どうしよう。本当にでも、銀杏に限らずバンドってメンバーが抜けたり、解散したり、たった1つでも歯車が合わなくなると、あっけないなってずっと思ってて。だからバンドの写真って撮るのが本当にキツいんです。でもそのキツさも含めて、「生きてる」って実感や楽しさに変わったりする瞬間があるんですよね。本当に自分は“ドキドキジャンキー”なだけなんだと思います(笑)。
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- 写真集「銀杏BOYZ写真集『純血』」
- 初回限定生産 事前予約締め切り2014年12月10日 / 2015年1月15日発売 / 5400円 / 太田出版
ロックバンド銀杏BOYZの初の写真集が完成。この写真集には写真家・村井香によって撮影された峯田和伸(Vo, G)、安孫子真哉(B)、村井守(Dr)、チン中村(G)の4人の2003年から2014年までの11年間がパッケージされている。
今作にはこれまで公式には発表できなかったものを含む345カットが掲載されているほか、脱退した3人のメンバーの近影や峯田和伸のロングインタビューも収録。4人の銀杏BOYZが残した軌跡を写真とテキストでたどるファン垂涎の1冊となっている。
銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
2003年1月、GOING STEADYを突然解散させた峯田和伸(Vo, G)が、当初ソロ名義で「銀杏BOYZ」を始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年からはDVD「僕たちは世界を変えることができない」や「あいどんわなだい」「光」といったシングル作品をリリースし、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。