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これまで「Coming Next Artists」のコラムでは各分野で活躍する音楽好きの著名人へのインタビューや、音楽制作の裏側に迫る特集などを展開してきた。連載コラムの最終回では、違法配信による音楽の不正利用の撲滅を目的に提唱された“ハッピーミュージックサイクル(音楽創造のサイクル)”に関する記事を掲載する。ハッピーミュージックサイクルは、音楽に対価が支払われることによって音楽の創造が絶えることなく続いていくための聴き手、作り手、売り手の関係性を表したものだ。

本稿では2016年に行われたライブイベント「Coming Next 2016」の出演者であり、メジャーシーンで音楽活動を行っている天月-あまつき-にインタビューを実施。動画共有サイトでの動画投稿をきっかけにアーティストとしての活動を本格化させた彼は、この“サイクル”をどう考えているのか。自身の活動を振り返りながら、音楽創造の現在や未来について語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦

ハッピーミュージックサイクル

リスナー

音楽を購入し、楽しむ

CDを購入したり、配信サイトでダウンロードしたりして音楽を楽しむ人たち。楽曲購入に費やされたお金は、レコード会社、作曲家、歌手などに分配され、新たな音楽作りに生かされる。

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作詞家 / 作曲家

音楽を創造する

膨大な知識を武器に、依頼にあわせて歌詞を書いたり作曲を行ったりする専門家。アーティスト自身が作詞や作曲を手がける場合も多い。

歌手 / 演奏家

パフォーマンスを行う

歌を歌い、楽器を演奏して音楽表現を行う人たち。CDや配信サービスを通して自身の楽曲を届けるほか、ライブを実施してリスナーに直接楽曲を披露する。

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ハッピーミュージックサイクル

CDショップ / 音楽配信会社など

紹介し、販売する

制作者とリスナーをつなぐ媒介者。POPやレコメンド機能など、さまざまな方法でリスナーへの音楽の紹介を行う。近年はアナログブームの再燃により、レコードショップも再び脚光を浴びている。

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レコード会社など

商品を流通し、宣伝する

作詞家や作曲家、アーティストによって生み出された音楽をより多くのリスナーに届けるための実務を担う。作品のプロモーションはもちろん、アーティストのブランディングも行う。

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趣味として始めたからこそ、今でも続けられてる

2010年にニコニコ動画の “歌ってみた”と呼ばれる動画カテゴリで二次創作の作品を投稿し始めた天月-あまつき-。そもそも彼が動画投稿をすることになったきっかけについて聞いてみると「かなりふわふわしていた」と話しながらも、当時を振り返ってくれた。

天月-あまつき-

僕自身、ユーザーとして動画を観るのが大好きで。「なんか楽しそうなことをやっている人たちがいるから僕も参加したい!」って気持ちが強くなって動画を投稿しました。それに歌うこと、動画を投稿することは僕にとって趣味なんです。趣味として始めたからこそ、今でも続けられてるんだと思います。

もともとは趣味で自身が歌唱する楽曲を発表し始めた彼にアーティストとしての活動が本格化したタイミングについて聞いてみると、2012年1月にリリースした初のアルバム「Melodic note.」を挙げた。

アルバムって1曲で完結するものではないから、どういう曲を集めるか、どういうパッケージにするかなどを初めて考えながら作った作品が「Melodic note.」ですね。1枚作ってみて「次はこうしてみよう」とか、「こんな歌も歌ってみたい」とか、いろんなインスピレーションが湧くようになって。アルバムを作るってことが自分の中で1つの節目みたいになっている感覚はあります。

CDに対する考え方が変わってきている

動画共有サイトに作品を投稿することに重きを置いていた活動初期の天月-あまつき-は、アルバムを制作することをきっかけに流通を担うレーベルやCDショップなどとの関わりが生まれ、徐々に“ハッピーミュージックサイクル”と深く関わっていくことになる。天月-あまつき-にこのサイクルの印象を聞いてみると「正直に言ってしまいます」と断りを入れて、こう答えてくれた。

インターネットが普及して、動画によるミュージックビデオの公開やサブスクなどの配信が充実していく中で「CDじゃないと聴かない」って人が減っていると思うんです。僕自身の活動が最初そうであったように、インターネット上で音楽を発表している人たちの中には、すでにCDという形で音源をリリースすることに固執しない人たちも出てきています。僕らのゴールは“CDを売ること”ではなくて“音楽を届ける”ことだから、フォーマットは関係ないんです。

しかしながら「音楽を届ける」というゴールに対するアプローチの中で、天月-あまつき-は動画投稿とCDリリース、どちらにも力を入れているアーティストだ。天月-あまつき-がネット上での活動に終始せずレーベルと共に作品を制作し、“サイクル”の中で活動している。その理由はなんなのか?

CDっていう“モノ”に対する考え方が変わってきていると思っていて。僕だけじゃなくて多くのアーティストさんがそうしているように、CDをただ単に音楽を聴くソフトとして認識しているわけじゃなくて、それ自体を1つの作品だと捉えるようにしているんです。要はパッケージが凝っていたり、歌詞カードにどういうイラストを使って、どうやって音楽と一緒に楽しんでもらえるかを考えたり。ある意味グッズに近い感覚なのかな。そういうこだわりを形にする技術やノウハウを持っているのが、このサイクルで言う「レコード会社」ですよね。

天月-あまつき-「それはきっと恋でした。」ラブレター盤パッケージ内容

6月に発売された最新アルバム「それはきっと恋でした。」でも、天月-あまつき-のこだわりは見て取れる。“ラブレター盤”と題した販売形態では、CDのケースが従来のプラケースではなくて封筒のような仕様になっている。

音楽を届けるための“飛び道具”を提案してくれるのもレーベルですね。例えば僕の場合だと「DiVE!!」という楽曲をアニメのテーマソングとして流してもらえたのは、レーベルのおかげだと思っています。アニメを観て僕のことを知ってくれた人もたくさんいるわけですから、“音楽を届ける”という僕の命題を一緒に叶えてくれている存在だとも思っています。