今回のコラムでは「Coming Next Artists」でパーソナリティを担当してくれている菅野結以と須賀健太にインタビューを行った。日常的に音楽を楽しんでいるという2人に、音楽との出会い、楽しみ方、「Coming Next Artists」のインタビューを通して感じたことなどを語ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介
音楽で人生が変わった瞬間
──お二人には「Coming Next Artists」の特集内でアーティストへのインタビューをお願いしていますが、今回はいつもと異なるコラムでの展開ということで、菅野さんと須賀さんがどのように音楽に出会い、音楽をどう楽しんでいるかを伺えればと思います。
須賀健太 中学生のときに仕事から帰る車の中でRADWIMPSの「いいんですか?」が流れたんですよ。運転していたお父さんと「この人たちの音楽、すごくいいね」って話をしたのを覚えています。それからRADWIMPSの曲を聴くようになりました。その後、当時好きだった女の子がRADWIMPSのファンだってことを知って。周りの人があんまりRADWIMPSのことを知らない頃だったから、僕はちょっとした優越感に浸ってたんですよね(笑)。その後、高校時代の同級生がシンガーソングライターみたいな活動をしていて、彼の影響で邦楽ロックが大好きになりました。
菅野結以 私には、音楽で人生が変わった瞬間っていうのが明確にあって。小学校6年生のときに姉に連れられて行ったライブのSEでMy Bloody Valentineの「Only Shallow」が流れたんです。その瞬間自分の中に雷が落ちた感じがして、ライブの最中も「SEで流れた曲はなんだったんだろう」って気になっちゃって。当時は今みたいにYouTubeとかで気軽に音楽が聴ける環境でもなかったから、自分で音楽誌を読み漁り、試聴をしまくったりして。そうしてようやく見つけたMy Bloody Valentineのアルバム「Loveless」を買ってから人生が狂った感じです(笑)。同級生たちと話が全然合わなくなって、友達の少ない学生時代を過ごすことになるという。
須賀 小学生のときに、もうMy Bloody Valentineが好きだったんですか?
菅野 はい。ものすごい轟音を聴いていると胎内回帰を覚えて、安らぎを感じるんですよね。周りにそういう音楽が好きな人が全然いなかったから1人でいろんなライブに通うようになって、その結果シューゲイザーってジャンルが好きなんだってことに気付いたんです。10年くらいはホントに1人で音楽と向き合ってきたかな。今はこうして音楽に携わる仕事ができているから、孤独でも音楽を好きでい続けてよかったなって思っています。
──学生時代はどうやって音楽を楽しんでいましたか?
須賀 僕は地元に公園が多かったこともあって、夜散歩をしながら音楽を聴くのが日常になってました。それとラジオで新しい音楽をチェックしたり、タワレコで試聴したり、YouTubeで曲を探したり。あと友達と既存の曲をもとにミュージックビデオを作って遊んだこともあります(笑)。映像の編集ができるアプリを使って、携帯1つでMVが作れるので、僕と友達の解釈で勝手に映像を作ってました。
──クリエイティブな遊びですね。
須賀 普段撮られ慣れているから、映像を撮ることに対しても抵抗がなかったからもしれませんね。わりと音楽を聴いていると景色が浮かんでくるタイプなので、それを映像にしたくなるんですよ。
──菅野さんは学生時代にどうやって音楽を楽しんでいましたか?
菅野 学校が終わったら少しでも早く帰って音楽を聴きたい、みたいな学生でした。例えばお風呂に入るときもドアをちょっとだけ空けておいてスピーカーを置いて。家にいる時間は寝るまでずっと音楽を聴いていました。私の学生時代は今のようにスマホやPCでYouTubeを観る習慣もなかったから、よくレンタルCDを借りていました。あと深夜のラジオ番組で知らない音楽に出会うのも楽しみでしたね。
冬、バス、Sigur Rós
──現在はどういうふうに音楽を聴いてますか?
須賀 僕は仕事と音楽は切り離せなくなっちゃいましたね。役者として役を作るとき、台本を読んだときに空気感が似ているアーティストさんを自分の中で探して、勝手に曲を当てはめるんです。それで狂ったようにその曲を聴き続けて、自分の中に役を定着させるようにしています。舞台に出演するときも主題歌を心の中で勝手に決めて、自分を高めるときもありますし、撮影とかで演じるシーンによって朝に聴く曲を決めることもあるし。
菅野 すごい。役にテーマソングみたいなものを付けてるんだ。
須賀 完全に音楽も役作りの一部になっていると思います。
──菅野さんは仕事の中でどう音楽を楽しんでますか?
菅野 まず起きたらApple Musicとか、時間に余裕のある時はレコードで音楽を流します。移動中に新作をチェックして、メイク中にも流してますし。Apple MusicとSpotifyはほぼ毎日のように使っていますね。
──サブスクリプションサービスを複数使っているんですね。
菅野 Apple Musicにない曲がSpotifyにあったり、その逆もありますからね。聴きたい曲がある場合は両方使って検索します。
──ちなみに音楽を聴く鉄板のシチュエーションってありますか?
菅野 私はバスに乗って音楽を聴くのが大好きです。単純に移動手段の中でバスが好きで、仕事の帰り道は少し遠回りだとしてもバスに乗って音楽を聴きながら帰ったりするんです。中でも冬のバスでSigur Rósを聴くのは最高ですね。
須賀 冬、バス、Sigur Rós。覚えました!
菅野 世界が全部白くなっていく感じと言うか、音楽があるだけで冬が大好きになるんですよね。あとは旅先で何を聴くかを選ぶのがすごく好き。
須賀 すごくわかります。
菅野 ロンドンに1人で行ったとき、ベタですけどThe Velvet Undergroundの「Sunday Morning」を日曜日の朝に聴いてたんですけど、その音楽と窓を開けて観たロンドンの街の景色が一緒に記憶に刻まれているんですよね。旅先では朝起きてからどういう音楽をかけるのか、選曲するのがすごく楽しいです。
──須賀さんが無性に音楽を聴きたくなるシチュエーションってありますか?
須賀 雨が降った次の日の夕暮れ、ですね。雨が降った次の日ってすごくサッパリした感じがするし、少し涼しいんです。そういうときにココロオークションの曲を聴くのが大好きです。僕は勝手に“夕方バンド”だと思ってます(笑)。あと舞台の本番がある日の朝はONE OK ROCKを聴いて朝からブチ上げるようにしています。
菅野 すごい。朝からワンオク聴くんだ!
須賀 起きてから3、4時間経てば本番になりますから、逆算してテンションを上げるために朝から聴きますね。「残響リファレンス」ってアルバムの1曲目から2曲目の流れが大好きで、本番前もよく聴いてます。
菅野 セリフを読み直す、とかじゃないんですね。
須賀 本番直前とかは台本を読み直すことはないです。もうどう上げていくかしか考えてない。その手段がワンオクなんです。
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音楽があるのとないので気分が変わる
2018年11月16日更新