音楽の楽しみ方を変えることはない

2010年に歌手活動をスタートさせ、2014年7月にアルバム「Hello, World!」をリリースしてメジャーデビューを果たした天月-あまつき-。メジャーデビューをした当時のことを振り返ってもらった。

天月-あまつき-

メジャーデビューが決まったとき、最初は「重いなあ」って思っちゃったんです(笑)。趣味として始めた歌や動画投稿がいつの間にか規模が大きくなっていって、ありがたいことにメジャーデビューのお話までいただいてしまったわけですから。メジャーデビューが決まったとき、1つ自分で決めたことがあるんです。それは僕が定期的に行っている動画投稿は絶対に止めないようにしようってこと。もちろんメジャーデビューをすることで、今まで以上にシングルやアルバムを発表できることになるんですけど、だからと言って僕にとっての“やりたいこと”である動画投稿を止める理由にはならないし、僕や僕の歌を好きだって言ってくれる皆さんとの音楽の楽しみ方を変えることはないんじゃないかなって、思ったんです。

現在でも天月-あまつき-は毎月2本以上のペースで動画を投稿している。CDのリリースだけでなくライブもコンスタントに開催するようになった彼が、動画にこだわり続ける理由を明かしてくれた。

僕は映像まで含めて音楽の表現だと考えていて、それこそ最新アルバムに収録されている「きっと愛って」という曲はミュージックビデオのイメージが先にあって、そのイメージを伝えることで友人に作曲をしてもらいました。もちろんすべての曲に映像を付けられるわけではないですし、曲を聴きながらイメージを膨らませるのも正しい音楽の楽しみ方だと思うんですけど、僕は可能であれば映像と一緒に音楽を楽しんでもらいたいですね。

「きっと愛って」の作曲は、天月-あまつき-とプライベートでも交流がある佐香智久が手がけた。天月-あまつき-の最新アルバム「それはきっと恋でした。」は、この曲のほかにも彼と交友関係にあるアーティストたちによる提供曲が多数収録されている。楽曲制作に限らず、天月-あまつき-の動画作品には、動画共有サイトでの活動を主としたプロデューサーやイラストレーターが携わることが多い。

僕自身がもともと1人のユーザーに過ぎなかったように、今の時代は誰でも表現者になれる可能性があると思うんです。“歌い手”と呼ばれるボーカリストだけではなくて、曲を書く“ボカロP”のような方々、動画を作る“動画師”という方々にもちゃんとスポットが当たるようになった。幸いなことに僕の周りには、同じように動画共有サイトでの活動を発端にアーティストになった仲間がいる。僕は彼らと一緒に作品を作る機会に恵まれているんですけど、コラボとか共作がもっと気軽に行われていてもいいんじゃないかなと思っています。

動画投稿というインディペンデントな活動が根っこにある天月-あまつき-にとって、昨今の音楽業界の現状はどう見えているのか。

いろんな意味で視聴者と表現者の距離が縮まっていると考えています。さっき話した視聴者がいつでも表現者になれるということと、より直接的に表現者を応援できるようになりつつあるということ。クラウドファンディングのように直接お金を集めて作品を作る方もいますし、例えばSNSでバズったマンガが人気を得て、商品化されるようなことも珍しくなくなってきたとも思っていて。アーティストのような表現者はどうやって作品を届けるか、そのアプローチを工夫しなければならないと思っているし、レーベルは会社の力を使ってそのアーティストをどう売り出していくかを今まで以上に真剣に考えていかなければいけない。“ハッピーミュージックサイクル”を形作るそれぞれが自分たちの在り方にちゃんと向き合う必要があるんじゃないかと思っています。

ライブじゃないと伝えられないことがある

昨年は自身のツアー開催のほか「COUNTDOWN JAPAN 17/18」といった大型イベントにも出演した天月-あまつき-。「活動当初は人前に立って歌うつもりなんてなかった」と話していた彼は、いつしかライブ開催について自分なりの意義を見出していく。

天月-あまつき-

動画を投稿してそれが「何十万再生されました」って言われたとき、数字としてはもちろんすごいんですけど、実感があまり得られないんですよね。例えばみんながどういう顔して楽しんでいるのかとか、気に入ってもらえたかどうかとかは、動画の再生回数からはわからないんです。でもライブをするとその場に何千人も集まってくれて、僕の音楽がちゃんと届いているんだって実感を得られるんです。それにアルバムをリリースしただけじゃ語り尽くせない思いは、ライブじゃないと伝えられないと思っています。

また天月-あまつき-は今年8月には東京・日本武道館でのライブを開催する。自身のライブの動員が好調であることだけでなく、音楽業界の中でもライブ事業が好調なことに触れ、最後に彼はこう話してくれた。

動画で音楽をいつでも楽しめるようになったのに、ちゃんとライブに足を運んでくれることって僕はすごいことだと思うんです。時間とお金をかけても、音楽を体験として楽しみたいって思ってくれる方々が多いってことですよね。

すでに数千人規模のライブを何度も成功させている天月-あまつき-に限らず、動画投稿サイトでの活動をきっかけにプロのミュージシャンとしてブレイクした人物は多数存在している。これは、インターネットの発達によって自由に表現できる場が生まれ、SNSの活用などにより、手軽に創作活動を行うことができる時代ならではの現象と言える。才能豊かなアーティストが今後も排出され、音楽を創造し続けるサイクルが守られるためにも、音楽への対価がしっかりと払われるべきだろう。

天月-あまつき-「それはきっと恋でした。」
2018年6月27日発売 / KING RECORDS
天月-あまつき-「それはきっと恋でした。」ラブレター盤

ラブレター盤 [CD+DVD]
2900円 / KICS-93731

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天月-あまつき-「それはきっと恋でした。」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2900円 / KICS-93732

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天月-あまつき-「それはきっと恋でした。」通常盤

通常盤 [CD]
2200円 / KICS-3731

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CD収録曲
  1. アストロスト[作詞・作曲・編曲:宮田‘レフティ’リョウ]
  2. きみだけは。[作詞:夏代孝明、天月-あまつき- / 作曲:夏代孝明 / 編曲:渡辺拓也]
  3. きっと愛って[作詞:佐香智久、天月-あまつき- / 作曲:佐香智久 / 編曲:佐々木裕]
  4. 月曜日の憂鬱[作詞・作曲・編曲:HoneyWorks]
  5. DiVE!![作詞:宮田‘レフティ’リョウ、天月-あまつき- / 作曲:宮田‘レフティ’リョウ / 編曲:中山真斗]
  6. Mr.Fake[作詞:渡辺翔、天月-あまつき- / 作曲:渡辺翔 / 編曲:中山真斗]
  7. マリオネットラヴァーズ[作詞・作曲・編曲:halyosy]
  8. かいしんのいちげき![作詞・作曲:天月-あまつき- / 編曲:久寝くうすけ、kain]
  9. ヒロイックシンドローム[作詞・作曲:まふまふ / ラップ作詞:nqrse / 編曲:堀江晶太]
  10. 僕のことなら忘れてくれていいよ[作詞・作曲:Saku、天月-あまつき- / 編曲:Saku]
  11. ガラクタモンスター[作詞・作曲:Eve / 編曲:Numa]
  12. Sing! Swim! Swing![作詞・作曲:halyosy / 編曲:佐々木裕]
  13. Flight Light ~星くずと Boeing~[作詞・作曲・編曲:みきとP]
  14. ツナゲル[作詞・作曲:ハヤシケイ / 編曲:棚橋UNA信仁]
  15. イデア [作詞:宮田‘レフティ’リョウ、天月-あまつき- / 作曲・編曲:宮田‘レフティ’リョウ]
  16. 君が僕の心に魔法をかけた[作詞・作曲:天月-あまつき- / 編曲:渡辺拓也]

Bonus track

  1. Voice letter
ラブレター盤付属DVD収録内容
  • 「君が僕の心に魔法をかけた」Music Video
  • 「君が僕の心に魔法をかけた」Making of Music Video
  • お楽しみ映像「天月-あまつき-の男子力向上委員会」
  • 「ツナゲル」Music Video
  • 「DiVE!!」Music Video
  • 「Mr.Fake」Music Video
  • 「アストロスト」Music Video
  • 「きみだけは。」Music Video
  • 「マリオネットラヴァーズ」Music Video
  • 「イデア」Music Video
初回限定盤付属DVD収録内容
  • 「やりたい放題ホールツアー Winter 2017~2018」厳選ライブ映像(2018/1/8 神戸国際会館)
    • 「DiVE!!」
    • 「StarMan!!!」
    • 「ベリーメリークリスマス」
    • 「プレゼント」
  • 「やりたい放題ホールツアー Winter 2017~2018」ツアードキュメンタリー
ライブ情報
天月-あまつき-「Loveletter from Moon」
  • 2018年8月23日(木)東京都 日本武道館
天月-あまつき-(アマツキ)
ネットを中心に活動する男性ボーカリスト。2010年初頭より、ニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリーにボーカロイドナンバーをカバーした楽曲の投稿を開始する。力強くもどこか少年らしさを感じさせるハイトーンのボーカルを武器に、ライブを精力的に実施。舞台への出演や声優を担当するなど活動の場を広げながら、ネットへの歌唱動画の投稿も引き続き行っており、投稿動画の総再生回数は3億7千万回(2018年7月時点)を超えている。2012年6月リリースの1stアルバム「Melodic note.」はオリコン週間インディーズアルバムチャートで1位を獲得。2014年7月にKING RECORDSからアルバム「Hello, World!」を発表し、メジャーデビューを果たした。2016年7月にはメジャー2ndアルバム「箱庭ドラマチック」をリリース。2017年には「ちゃんげろソニック2017」「COUNTDOWN JAPAN 17/18」といったフェスにも出演するなど、さらにその知名度を高めている。2018年6月にメジャー3rdアルバム「それはきっと恋でした。」をリリース。同年8月には初の東京・日本武道館単独公演「Loveletter from Moon」を開催する。

2018年11月16日更新