BURNOUT SYNDROMES|大きく広げた10本の羽

人類が生まれた瞬間の喜びを覚えていれば、もっと優しい世界になる

──今作「孔雀」は「檸檬」に続き、クラシックに乗せて歌う楽曲で幕が開けます。1曲目「ヨロコビノウタ」では、タイトル通りベートーヴェン「交響曲第9番」の第4楽章である「歓喜の歌」を引用していますね。

熊谷 クラシックを使って1曲書くっていうのが大好きなので、今回もやりたいなと。

──モデスト・ムソルグスキーのピアノ組曲「展覧会の絵」の「プロムナード」に乗せて歌う「檸檬」では「アルバムを聴いた人が“ビッグバン”を起こせるきっかけになるように」という思いを込めたと言っていましたが、今回の「ヨロコビノウタ」には生命誕生が描かれていますね。どちらも“始まり”というテーマが共通しています。

熊谷 僕は現代において、クラシックの壮大なサウンドに耐え得るのは、人生の話になってくるのかなと思っていて。ビッグバンであったり生命誕生の瞬間っていうのが、僕の中でのクラシックのイメージなんです。僕はそのイメージをなぞって書いただけで、メロディとサウンドが歌詞のテーマを運んできてくれたんだと思います。

──「こんな夢を見た 全ての人類が 産まれた日のことを 思い出す夢」という歌詞がとても印象的です。これはどういう発想から?

熊谷 このアルバムの7曲目「君をアンインストールできたなら」の歌詞で、人間が機械になっちゃうストーリーを描いてるんですけど、例えば人間が機械だったとしたら、記憶領域の部分で“過去を忘れる”ということはないと思うんです。その設定に乗っかって考えると、生まれた日のことを思い出せなくなっているだけで、赤ん坊の頃の最初に見た景色っていうのは誰しもの脳みそに必ずあるんじゃないかなと思ったんです。

──なるほど。

熊谷 生まれた瞬間の喜びを忘れていなければ、人間が荒んでいくことはなんじゃないかと思って。だから仮に人類全員がその記憶をハッキリ覚えていたとしたら、もっと優しい世界になるんじゃないかなっていう思いを「ヨロコビノウタ」ではつづりました。

──ゴスペル隊とオーケストラが参加しているアンサンブルも豪華ですね。

廣瀬 デモの段階から打ち込みでストリングスが入っていたんですけど、熊谷はなんでまったくやったことのない楽器にどんどんチャレンジしていけるんだろうって、改めて思いましたね。僕としては歌詞にある「爆誕」を、ドラムのダイナミクスで作れればいいなと思ってこだわりました。

熊谷 「爆誕」っていう造語は「ルギア爆誕」(1999年公開の映画「劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕」)で広まったと思うんですけど、プロデューサーのいしわたり淳治さんからは「爆誕って何?」って聞かれてしまって。僕の中ではかなりメジャーなワードだと思ってたんですが……(笑)。

BURNOUT SYNDROMES

いしわたり教授との実験

──いしわたりさんとの制作はBURNOUT SYNDROMESにとって、もはや欠かせないものになっていますよね。

熊谷 かなりいい関係になってますね。今回も歌詞を見ていただいていますが、僕のレベルもいしわたりさんが要求するある程度のラインに達するようになってきて。最近はもっと踏み込んだ話をするようになったんです。

──踏み込んだ話?

熊谷 「若草山スターマイン」に「大例祭」って単語が出てくるんですけど、本来は「例大祭」が言葉として正しいんですね。でも「大例祭」のほうが響きがいいと思ったし、言葉の持つイメージがリスナーに伝わりやすいということでこっちに決めて。本来ない言葉を平気で使ってるっていう。

──それは面白いですね。

熊谷 歌詞以外にも、例えば「若草山スターマイン」には祭りふうのビートが入っていますけど、制作中にいしわたりさんが「この祭囃子どう?」って送ってきてくれた音源が、あまり金物の音も乗ってないし、関西出身の僕からしたらわけのわからないもので。「こんなの祭囃子じゃないです!」って伝えたんですけど、それは東北のお祭りのものだったそうなんです。

──へえ。

熊谷 今の話はホントに一例で、全編通してこういう細かい話を2人でずっとしてて。いしわたりさんも俺も「生まれ育った環境によって受け取り方も変わってくるよね」っていうことに、制作を通して改めて気付いたんです。

──まさにいしわたりさんとの実験という感じがしますね。

熊谷 そうなんですよ。僕にとっていしわたりさんは教授なんです。昔は「ここの歌詞、どういう意味なの?」っていしわたりさんが聞いてきて、僕が「こういう意味です」と答えることが多かったんですけど、その段階はもう過ぎていて。今は2人でいろんな実験を何度も繰り返してると言うか、言葉の研究をしてる感じなんですよ。面白いです。

BURNOUT SYNDROMES「孔雀」
2018年2月21日発売 / EPICレコードジャパン
BURNOUT SYNDROMES「孔雀」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3500円 / ESCL-4997~8

Amazon.co.jp

BURNOUT SYNDROMES「孔雀」通常盤

通常盤 [CD]
3000円 / ESCL-4999

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. ヨロコビノウタ
  2. 花一匁
  3. 若草山スターマイン
  4. 吾輩は猫である
  5. Melodic Surfers
  6. ハイスコアガール
  7. 君をアンインストールできたなら
  8. POKER-FACE
  9. 斜陽
  10. Dragonfly
初回限定盤付属DVD収録内容
  • ミュージックビデオ+メンバーによるMV解説オーディオコメンタリー(副音声)
    • 「花一匁」MV+オーディオコメンタリー(副音声)
    • 「ハイスコアガール」+オーディオコメンタリー(副音声)
  • ライブ映像 (2016.11.25 @SHIBUYA CLUB QUATTRO)
    • 「FLY HIGH!!」
    • 「ヒカリアレ」
  • 「燃えつきRADIOスペシャル ~「孔雀」の取説~」(アルバム「孔雀」収録曲解説映像)

全国ワンマンツアー2018「孔雀~いざ真剣勝負~」

  • 2018年3月3日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2018年3月17日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2018年3月21日(水・祝)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2018年3月23日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2018年3月25日(日)福岡県 DRUM SON
BURNOUT SYNDROMES
(バーンアウトシンドロームズ)
2005年に結成された熊谷和海(G, Vo)、石川大裕(B, Cho)、廣瀬拓哉(Dr, Cho)による関西在住の3人組ロックバンド。“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーを掲げて活動しており、熊谷による日本語の美しさを大切にした文学的なリリックで支持を集める。2010年に開催された音楽コンテスト「閃光ライオット」では準グランプリを獲得。2012年に無料CD「リフレインはもう鳴らない」を全国各地のCDショップやライブハウスなどで1万枚配布する。2014年にはタワーレコード限定シングル「LOSTTIME」、初の全国流通アルバム「世界一美しい世界一美しい世界」をリリースし、2015年5月にいしわたり淳治プロデュースのもと2ndアルバム「文學少女」を発表。2016年3月にはテレビアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2クールのオープニングテーマを表題曲としたシングル「FLY HIGH!!」でEPICレコードジャパンからメジャーデビューを果たした。2018年2月、テレビアニメ「『銀魂』銀ノ魂篇」のエンディングテーマを収録したシングル「花一匁」をリリース。10月にはメジャー2ndフルアルバム「孔雀」を発表する。