BURNOUT SYNDROMES|大きく広げた10本の羽

BURNOUT SYNDROMESが2月21日にメジャー2ndフルアルバム「孔雀」をリリースする。彼らにとって1年4カ月ぶりのアルバムとなる本作は、前作「檸檬」を超える、ユニークな全10曲入り。音楽ナタリーではメンバー3人にインタビューを行い、大きな一歩を踏み出すイメージで制作したという「孔雀」について話を聞いた。

取材・文 / 石橋果奈

自分のバンドに楽曲を提供すると考えた

──音楽ナタリーでは前作アルバム「檸檬」のリリースタイミング以来、1年4カ月ぶりのインタビューです(参照:BURNOUT SYNDROMES「檸檬」インタビュー|“リスナーの耳”で作り上げたメジャー1stフルアルバム)。この間、BURNOUT SYNDROMESの皆さんは2度にわたってツーマンライブツアーを行いましたね(参照:BURNOUT SYNDROMES、憧れのtacicaと迎えたツアーファイナル / BURNOUT SYNDROMESツーマンツアー最終公演で新アルバムリリース発表)。

石川大裕(B, Cho) ツーマンライブ自体今まであまりしたことがなかったですし、ツーマンツアーを行うのは今回が初めてだったんです。僕らはけっこう一匹狼みたいな感じでバンドをやってると思ってたんですけど(笑)、こんなにも仲間のバンドに助けられてるんだなっていうことを実感しました。あと、応援してくれてる皆さんがいろんな音楽に触れ合う機会になってよかったなと思います。

熊谷和海(G, Vo) ほかのバンドがどうやってお客さんを楽しませてるかを観ることによって、改めて自分たちを客観的に見られるいい機会になりましたね。

──自分たちを客観視して気付いたものが、今作「孔雀」につながっている部分もありますか?

熊谷 そうですね。僕らは基本、ライブは音源の世界観を表現する場だと思ってて、ライブで得たものが曲作りに反映されたことはこれまでなかったんです。でも今回はライブをすることで「もっとこういう曲がバンドにあったほうがいいな」という気持ちが生まれて。「BURNOUT SYNDROMESというバンドに楽曲を提供すると考えたときに、どういう曲が必要なんだろう」って、より客観的に考えることができました。

──自分のバンドに対して「このバンドに楽曲を提供するなら」と考えるところが熊谷さんらしいですよね。以前もインタビューで自身のことを「バンドの中で職人みたいな存在」と言っていましたし。

熊谷 なんとなく、僕はバンドの中で一歩引いた立ち位置にいるほうが性に合ってると思っていて。きっとそのほうがより客観的にライブにダメ出しできるし、独りよがりにならないで曲を作れると思うんです。あと今回のツーマンツアーで、対バン相手のライブを観たときにキーの高さ、声質、母音の響き方ってやっぱり個人で違うので、それぞれのバンドに合ったメロディを作るのが大事なんだなと思いました。ほかのバンドがうちの曲を歌ってもよくないんだろうな、逆にあっちのバンドさんの曲を俺が歌ってもあんまり表現できないんだろうなって。だから今回のアルバムでは「BURNOUT SYNDROMESのボーカル・熊谷和海が歌うならこのメロディだな」っていうことを意識しながら楽曲制作をしました。

スタンスがアーティストというより科学者に近い

──より客観視して制作に臨んだ結果、「孔雀」は前作「檸檬」以上にバラエティに富んだアルバムになりましたね。

熊谷 僕はインディーズの頃から、自分のスタンスがアーティストというより科学者に近いような感じがしていて。実験とレポートを繰り返しやっているようなイメージなんですね。

──新しいことに挑戦するのが“実験”、挑戦して得たノウハウをもって作品作りをするのが“レポート”ということでしょうか?

熊谷 そうです。そのいろいろなチャレンジを経て、「今持ってる力で出せるのはこれだと思います」って提示したのが「檸檬」だったんです。で、「檸檬」を作るうえで僕の中では「これ以上の挑戦はこのアルバムではやめておこう」っていう線引きがあって、けっこう我慢した部分もあったんですよ。でも今回は「檸檬」との違いを出すために、もっと遠慮なく振り切ろうっていう話になりまして。だから「孔雀」はインディーズの頃だったら大コケしてるレベルで大股でグッと一歩踏み出したんです。でも今まで培ってきた技術であったり、メンバーの支えがあって、コケなかった。蓋を開けてみると前作よりいいアルバムができて、自分の中では驚きでした。

──成長するために挑戦する必要があったんですね。

熊谷 前作で引き出しが空っぽになったから、もう1回詰めないとなって。制作中、「僕は自信満々です!」って顔してましたけど、実際は「ダメかもしれないけど、それでもしゃあない」と思いながらやってましたよ(笑)。

──メンバーにそういった意識の共有は?

石川 ないですね。僕らには、彼の中で完成した曲が上がってくるだけなんで(笑)。

廣瀬拓哉(Dr, Cho) いつも通り、僕らには何も共有はないですけど、熊谷はバンドを組んだときから実験を繰り返してますからね。

石川 挑戦的な男だし絶対に面白いことをしてきますから。僕らは彼を信頼してるんで、何があっても大丈夫です。

BURNOUT SYNDROMES

威嚇であり求愛を表現した「孔雀」

──熊谷さんのさまざまな挑戦が詰まったアルバムを制作するにあたって、石川さんと廣瀬さんが努力したことはありますか?

石川 武器を増やさないとダメだなと思いまして、僕はスラップなどのベースの奏法を学んだりラップを練習したり、少しでも熊谷のプラスになれるように、今までの自分を越えていけるようにスキルを磨きました。

廣瀬 僕は、たぶん熊谷ならバラエティに富んだものを作ってくるだろうと思っていたので、「檸檬」を作ったあとからいろんな曲でドラムのチューニングや音作り、タッチを研究し続けていました。例えば叩くときにスネアの上にコインを乗せてみたり、スティックの持つ面積を変えてみたり、そういうすごく細かいところを突き詰めていって。でもそれが意外と大切で、アンサンブルになったときに雰囲気がガラッと変わるんですよね。今作だと「斜陽」ではスネアに紙を乗せてます。

──そのお二人の挑戦や努力がいい感じで作用したなという実感もありますか?

熊谷 そうですね。僕が無茶したことで、メンバーもレベルを上げざるを得なかったと言うか。そういう意味では、メンバーが応えてくれるかどうかも賭けでしたし、それも実験だったと思います。今作の制作ではメンバーがそれぞれ今までやったことのないことに挑戦したし、曲ごとにミックスエンジニアの方を変えることもやったし、どこでコケてもおかしくないってぐらいいろいろ試してます。そんな状況で1枚のアルバムにまとめられたのは、チームに力が付いたからなんじゃないかなって。

──熊谷さんが大きく一歩を踏み出すことによって、チーム力も向上したんですね。本作に「孔雀」というタイトルを付けた理由は?

熊谷 この作品に収録されている全10曲は、1曲1曲がホントにバラバラな方向を向いていると思うんですよ。5°くらい違うというレベルではなくて、30°とか40°とかのレベルでバラバラで。その10本が放射線状に伸びていくのを想像したときに、目一杯羽を広げた孔雀のようなイメージが浮かんだんです。孔雀が羽を広げるときって、威嚇か求愛ですよね。今作は僕にとって「変わりたくない。同じことをやっていよう」っていう考え方への威嚇であり、僕らの挑戦に対して「いいね」って言ってくれる人への求愛なんです。

BURNOUT SYNDROMES「孔雀」
2018年2月21日発売 / EPICレコードジャパン
BURNOUT SYNDROMES「孔雀」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3500円 / ESCL-4997~8

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BURNOUT SYNDROMES「孔雀」通常盤

通常盤 [CD]
3000円 / ESCL-4999

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CD収録曲
  1. ヨロコビノウタ
  2. 花一匁
  3. 若草山スターマイン
  4. 吾輩は猫である
  5. Melodic Surfers
  6. ハイスコアガール
  7. 君をアンインストールできたなら
  8. POKER-FACE
  9. 斜陽
  10. Dragonfly
初回限定盤付属DVD収録内容
  • ミュージックビデオ+メンバーによるMV解説オーディオコメンタリー(副音声)
    • 「花一匁」MV+オーディオコメンタリー(副音声)
    • 「ハイスコアガール」+オーディオコメンタリー(副音声)
  • ライブ映像 (2016.11.25 @SHIBUYA CLUB QUATTRO)
    • 「FLY HIGH!!」
    • 「ヒカリアレ」
  • 「燃えつきRADIOスペシャル ~「孔雀」の取説~」(アルバム「孔雀」収録曲解説映像)

全国ワンマンツアー2018「孔雀~いざ真剣勝負~」

  • 2018年3月3日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2018年3月17日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2018年3月21日(水・祝)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2018年3月23日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2018年3月25日(日)福岡県 DRUM SON
BURNOUT SYNDROMES
(バーンアウトシンドロームズ)
2005年に結成された熊谷和海(G, Vo)、石川大裕(B, Cho)、廣瀬拓哉(Dr, Cho)による関西在住の3人組ロックバンド。“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーを掲げて活動しており、熊谷による日本語の美しさを大切にした文学的なリリックで支持を集める。2010年に開催された音楽コンテスト「閃光ライオット」では準グランプリを獲得。2012年に無料CD「リフレインはもう鳴らない」を全国各地のCDショップやライブハウスなどで1万枚配布する。2014年にはタワーレコード限定シングル「LOSTTIME」、初の全国流通アルバム「世界一美しい世界一美しい世界」をリリースし、2015年5月にいしわたり淳治プロデュースのもと2ndアルバム「文學少女」を発表。2016年3月にはテレビアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2クールのオープニングテーマを表題曲としたシングル「FLY HIGH!!」でEPICレコードジャパンからメジャーデビューを果たした。2018年2月、テレビアニメ「『銀魂』銀ノ魂篇」のエンディングテーマを収録したシングル「花一匁」をリリース。10月にはメジャー2ndフルアルバム「孔雀」を発表する。